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井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

パールマンは不滅です⑥

2017-12-01 18:23:00 | ヴァイオリン
大学生時代「パールマン、小品良いよね」と友人に言ったことがある。
するとニヤッとして、
「小品は、とか、小品が、とかではなくてね」と言われたことをよく覚えている。

その頃は、不思議なことにバッハは重厚長大なもので、流麗な美音のバッハは評論家に不評。なので、小品以外を表立って賞賛できない時代だった。
今聞くと、かなり力強い強靭な演奏なのだが。

で、リサイタルのアンコールは、ジョプリンの「ラグタイム・ダンス」
ピアニストのサンダースが、ドン、ドンと足踏みをする楽しい曲で、パールマン編曲。

それから数年間はそのラグタイム・ダンスに夢中で、いわゆる耳コピーでよく弾いたものだ。

かくしてパールマンは不滅なのである。

パールマンは不滅です⑤

2017-11-29 07:50:00 | ヴァイオリン

大昔のSPレコード時代、ヴァイオリンと言えば小品が主流だった。
その後、LPレコードが普及するにつれ、協奏曲やソナタが多く聞かれるようになり、相対的に、小品を弾くことがあまり重きを置かれない時期が少しだけあった。

そこにパールマンが登場。パールマンは、素晴らしい協奏曲の演奏と同時に、楽しい小品の世界を再認識させてくれたのだ。

ハイフェッツ、オイストラフ、スターン、ミルシタイン、全て素晴らしく小品を演奏する。ただ、共通して一種の「厳しさ」を感じる。それはそれで「必要なこと」という風に皆さん認識していたように思う。

ところがパールマンからは、その「厳しさ」をほとんど感じさせない。楽観性に溢れているとでも言えようか。とにかく楽しそうという、独特な魅力が発散されていた。
なので、パールマンの小品演奏の評価は、ことのほか高かったと思う。


パールマンは不滅です④

2017-11-27 21:30:00 | ヴァイオリン
1978年の熊本リサイタル、バッハの後は得意の小品、クライスラーが3曲「前奏曲とアレグロ」「ウィーン綺想曲」「中国の太鼓」だった。

今年のパールマンもフィオッコのアレグロ(ヴァイオリンを練習する人は誰でもやるが、弾かない人は全く知らない曲)を弾いて話題になっていた。

そこまではないにしても、前奏曲とアレグロはあまり演奏会ではやらないかもしれない。
しかし、そこがパールマン、聞かせてしまうのだなぁ。

この聴き手をグイグイ引っぱっていく力は並はずれている。

ところで「得意の小品」と書いてしまったが、これだけだと協奏曲やソナタは不得意なのか、と読めてしまう。
もちろん断じてそのようなことはない。

パールマンは不滅です③

2017-11-25 19:03:00 | ヴァイオリン
リサイタルの方を良く覚えているのには訳があって、実はこっそり録音していたのである。モノラルのカセットテープレコーダー、録音レベルが自動調整だから、大きい音は小さく、小さい音は大きく入る代物だ。

それでもその後何度も聴き返した。

バッハの無伴奏パルティータ第1番。こちらもちょうどその中のサラバンドとブーレを練習していたところだった。

パールマンは終始美音で流麗にバッハを弾く。楽々と弾いているように見える。楽しそうに。でもレコーディングのように無傷で。

これをヴァイオリン弾きの標準ととらえると、そう思ったヴァイオリン弾き(=私)は打ちのめされる。

今だったら「それはパールマンだから」と言えるだろう。
しかし、その頃身近な人間は一様にパールマンを賛美していて、ヴァイオリン弾きかくあるべし、とその人たちが無言で言っているように私は感じてしまった。

ニコニコしながら完璧に弾く、とてもこんなこと、私にはできない。

ヴァイオリニストになるための熱心さが今一つ足りなかったのは、パールマンのせいも少しはある。

その意味でもパールマンは不滅だ。

パールマンは不滅です②

2017-11-23 16:29:34 | ヴァイオリン
協奏曲2曲を聴いた日には福岡市に泊まって、翌日朝はヴァイオリンのレッスンだった。
前日のコンサートはああだったこうだったの話を交えてのレッスンは、なかなか有意義に終わったのだが…。

パールマンと同時に台風も訪れてくれたのである。
その頃、台風でもバスは止まらなかったので、先生のお宅への往復は何とかできたのだが、国鉄は運行を止めてしまっていた!

その日の夜は熊本でリサイタルだった。そちらのチケットも買っていたというのに!

携帯電話の無い時代、どうやって連絡をとったのか思い出せないのだが、とにかく親に相談すると、バスで行けという指示だった。
当時ある程度は高速道路が開通しており、しかも例によってバスは台風程度なら走っていたのである。

とは言え、リサイタル開始の時間には全く間に合わない。
いや、パールマンも台風だから間に合わないかも、という淡い期待をして、開演1時間後くらいに会場、熊本市民会館に着いたのだが…

熊本市は雨も完全に止み、リサイタルは定刻に始まっていた。ちょうど休憩時間に滑り込んだ形だ。

半分聴けなかった。悔しい、残念無念!

前半はシュトラウスのソナタと何かだった。
でも、負け惜しみを言えば、シュトラウスのソナタは好きではない。
それ以上に述べれば、前半聴けなかった分、後半はかなりの集中力で聴いたように思う。
その証拠に、協奏曲の印象より、リサイタルの方がずっと良く覚えているから。