ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

ヴェルディ『ドン・カルロ』(シラー原作の歴史劇)その3、エボリ公女の懺悔と気高いフィナーレ

2015年03月11日 | オペラ

★ この「ドン・カルロ」は主要人物として、フィリッポ二世、大審問官、皇子ドン・カルロ、その親友で同志のロドリーゴ、
元ドン・カルロの許嫁だったが政略結婚でフィリッポ二世の後妻となったフランスのヴァロア家の出身であるエリザベッタ、
そして、スペイン宮廷の第一の美女であり、政略にたけた公女エボリ、この六人であるが、フィナーレの前に<エボリ公女>の位置を説明します。

エボリ公女はシラーの原作でもくわしく描かれていて、もちろん実在の人物。
スペイン宮廷で並ぶものなき才色兼備の貴婦人、しかしその才知は権力ある男性を手玉に取り政治的にも有力な存在。
また「公女」という身分だが、自由に政界を行き来するなどスパイとして働くところもあり、宮廷によくある「庶子」ではないかと思われる。もちろんエリザベッタのような政略結婚には利用できる存在ではない。
皇子ドン・カルロに恋をしていたが、皇子には無視され、しかも皇子がいまだに思っているのは「継母」になったエリザベッタであることを知り、激しい嫉妬で復讐に燃えるが、エリザベッタの高潔さにうたれ、皇子ドン・カルロの窮地を救う。
史実ではスパイとして処刑されている。

マリア・カラスが歌うエボリ公女<むごい運命よ>・・・エリザベッタを無実の罪に陥れようとした贖罪を歌う。
カラスは神の前に立つ罪人のように敬虔、かつ激しく、カルロ救出を誓うところなど見事な表現、コンサートだが真に迫る。
Callas O don fatale (Eboli) Don Carlo 1962



★ いよいよ、フィナーレである。ロドリーゴの死を悲しむドン・カルロにエリザベッタは「母」として毅然と「フランドルの民を救え!」と励ます。「息子よ」と呼び掛けるエリザベッタにカルロは「母上」と。エリザベッタを歌うソプラノ、ダニエラ・デッシのなんと気高く美しいこと。

そこへフィリッポ二世や大審問官が来て、皇子カルロを捕えようとする。フィリッポは思わず皇妃をかばう。
ところが修道院の中から先帝である偉大な「カルロ五世」の声がしてドン・カルロ逮捕を妨げる。
「あの声は先帝陛下・・・」と大審問官は怯える。フィリッポ二世も「ああ、父上」とつぶやき、幕となる。
Luciano Pavarotti. Daniela Dess�・. DON CARLO. VERDI. Finale. Ma lass�・ ci vedremo.

・・・2分30秒から皇妃エリザベッタはカルロに「行ってフランドルの民を救いなさい!」と。

★ エリザベッタはフランスのヴァロア家の姫、あの恐ろしいカトリーヌ・ド・メディシス(フランス王でヴァロア家のアンリ二世の王妃)の「聖バルテルミーの虐殺」新教徒大量殺戮の光景が浮かぶのかも。これはシラーもヴェルディも書いていないが、エリザベッタはカトリーヌ・ド・メディシスの娘のひとりでは?と私は考えている。
カトリック教徒であるエリザベッタやポーザ候ロドリーゴ、皇子ドン・カルロは「第二の虐殺」をスペインが行ってはならないと・・・。フランドルは新教徒が迫害されていたところである。フィリッポ二世の苦悩はそこにある。ローマカトリックによってスペインが安泰であることも・・・そしてローマカトリックは諸刃の剣。


シラーの原作を読んでも、最後の不思議な「先帝カルロ五世」が出現するのはヴェルディのオペラのフィナーレと同じである。
大審問官も「カルロ五世の声」と怯える「先帝」とは、スペインとドイツ地方を併合したハプスブルグ最大の皇帝であった。
(スペイン皇帝はハプスブルグの流れをくむ)

ポーザ候ロドリーゴはシラーやヴェルディが最も描きたい人物であったが、カップッチッリの名唱が今も忘れられない。
ムーティ指揮の「ドン・カルロ」にはコーニがロドリーゴを歌っているが、カップッチッリ亡きあとは考えられる最高の歌手であろうが、なにぶん若い。


・・・イタリアの愛国者でもある名指揮者リッカルド・ムーティ。
その著書もある。『イタリアの心、ヴェルディを語る』(ムーティ著)から・・・

ヴェルディは人生を共にすることのできる音楽家である。彼はあまりにもありのままに私たち人間の情熱や苦悩、長所や欠点を表すことができる作曲家であるため、その作品の中に私たちは自分自身を見つけ出すことになる。
これが彼の普遍たるひとつの所以である。・・・リッカルド・ムーティ



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