教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

トランプの統治する世界(4)

2016-11-14 23:34:10 | 経済/経済/社会
トランプの統治する世界(3)
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/e/51ea265d5dbee5e2e304132d719177d6

・・・つづき

ここまでの記事のなかで関係ある参考文献を記しておく。




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784569578958

PHP文庫
大英帝国衰亡史
中西 輝政【著】

オススメ。
ドイツ第三帝国や大日本帝国はやたらと決戦主義だったが、イギリスは孫子に近いもっと巧妙な方法で戦っていた。
さんざんブリカスのお家芸と書いたあれ、すべてこの本で理解できる。




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784023313514

地政学の逆襲―「影のCIA」が予測する覇権の世界地図
カプラン,ロバート・D.【著】〈Kaplan,Robert D.〉/櫻井 祐子【訳】/奥山 真司【解説】
価格 \3,024(本体\2,800)
朝日新聞出版(2014/12発売)

非常に非常にオススメ。
これ買うだけでもいいだろうというほど。
他に地政学本は数あれど、この本だけにある「私が行ってみたときは〇〇だった。だから△△」という記述はブキミなほどリアルさを伴った説得力がある。




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784150504168

ハヤカワ文庫
続・100年予測
フリードマン,ジョージ【著】〈Friedman,George〉/櫻井 祐子【訳】
価格 \885(本体\820)
早川書房(2014/09発売)

非常にオススメ。
先の「地政学の逆襲」と同じくガチなヤツで、中身は若干劣るような気がするものの、値段が安い点は評価したい。




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794968265

犀の教室 Liberal Arts Lab
現代の地政学
佐藤 優【著】
価格 \1,620(本体\1,500)
晶文社(2016/07発売)

オススメ。
座学の講義で話したものを文章におこしたものの模様。
内容が散発的な感はあるが、すごく読みやすく、他のガチな本を読むための予備知識ともなるし、最初に買うとしたらこれがオススメである。




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784562041824

マッキンダーの地政学―デモクラシーの理想と現実
マッキンダー,ハルフォード・ジョン【著】〈Mackinder,Halford John〉/曽村 保信【訳】
価格 \3,456(本体\3,200)
原書房(2008/09発売)

地政学の開祖マッキンダーの著作。
もはや古典ではあるが、少なくともこれを一読しておかないと地政学をひととおりナメたとは言えない。
まず最初にこれを読むべきとまでは言いがたいので、オススメとまでは言わない。
単に地政学がどうのというだけでなく、ヒトラー台頭前のドイツとロシアの状況がどうだったというような話も理解できる。
副タイトルにある「デモクラシーの理想と現実」の地政学に直接関係ない部分が3割くらい入っていて、読んでてうっとうしいと感じなくもないけどさ。




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784062920278

講談社学術文庫
マハン海上権力論集
マハン,アルフレッド・セイヤー【著】〈Mahan,Alfred Thayer〉/麻田 貞雄【編・訳】
価格 \1,015(本体\940)
講談社(2010/12発売)

地政学の開祖マッキンダーに先んじて書かれた、制海権について初めてマトモ議論された著作。
第一次世界大戦前のイギリスとアメリカの関係が主であるが、そっくりそのまま今の日本と中国の関係に当てはまり、読んでいて大変参考になる。
ただ、地政学的な未来予測に関しては、そのことごとくを外しており、読んでいて何だかなーと思うところもしばしば。




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784490209129

イスラーム基礎講座
渥美 堅持【著】
価格 \2,376(本体\2,200)
東京堂出版(2015/07発売)

ややオススメ。
たいがいのイスラム関連本は、全く脈絡もなく初めてみる固有名詞がわんさか出てきて、しかも単に事実の羅列だけで背景がほとんどわからず、しまいにはオーバーフローして読むのをやめるというケースが多々あるのだが、この本はマトモに読めるという点で買ってもよい。




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784799319758

最新世界情勢地図 (増補改訂版)
ボニファス,パスカル〈Boniface,Pascal〉/ヴェドリーヌ,ユベール【著】〈V´edrine,Hubert〉/佐藤 絵里【訳】
価格 \1,944(本体\1,800)
ディスカヴァー・トゥエンティワン(2016/09発売)

オススメできない。
世界中を無理やり網羅的に記そうとして自分が詳しくないところまで著したらこうなるのだろうというようなあかん出来栄え。
日本のところを読んでみればどんだけ分析がヘッポコなのかがよくわかるだろう。
我輩だったらこんなん自分の名を冠して現地で出版するなんてせんわwww




https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784166610648

文春新書
21世紀地政学入門
船橋 洋一【著】
価格 \864(本体\800)
文藝春秋(2016/02発売)

オススメできない、らしい。
先の「現代の地政学」のなかで極めてひどい代表例として紹介されている。
実際ひどいかどうかは読んでいないので不明だが、初心者はスルー推奨。



以上

トランプの統治する世界(3)

2016-11-14 00:32:50 | 経済/経済/社会

トランプの統治する世界(2)
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/e/f0e7e462d86d9117beb23dee5236686c

・・・つづき

前回と前々回はトランプ登場前夜の情勢についてだった。
では、いよいよトランプが統治する世界はどうなるかだが・・・。



まあ、あくまでもトランプがマトモな人物だったらという仮定での話になるが。

トランプはビジネスライクにアメリカの損得で判断するようになると思われる。

そうではなかったという意味でいうと、これまでのアメリカは
「アメリカの正義や主張は人類普遍のものであるべきで、アメリカはそれを人類全体で共有するために努力を惜しむべきではない!」
という、たいへん押しつけがましい点があったが、そうではなくなるという意味だ。

たとえばイスラエルでいうと、アメリカから見たイスラエルはイスラム世界のど真ん中に存在する自由主義陣営の要塞であり、これが陥落するとイスラム世界に自由主義は二度と返ってこないから死守すべき、というのが今までだった。
単にイスラエルはユダヤのロビー活動だけでアメリカから寵愛を受けているのではない。

で、それがどうなるかというと、イスラム世界にアメリカ式の自由主義を布教活動するベネフィットに、イスラエル支援のコストが勝っているとトランプが判断すると、アメリカはイスラエルへの支援を激減させる。

ホントかいなと思うかもしれないが、これと同じことはエジプトでも起きた。
エジプトがロシアの保護国になるのを妨害するというネフィットに、アメリカからエジプト独裁政権への金銭的援助というコストが上回っていた時代だけ、アメリカはエジプトへ湯水のごとく援助した。
今はもうない。

これは極東でも同じである。
南シナ海、東シナ海が中国の内海になるという損失が、日本や韓国に米軍を駐留させるというコストより小さければ、米軍は撤退する。



さらにその先はどうなるか?

アメリカの世界統治はブリカスのお家芸に回帰する。

つまり、
> イギリスは、対立する2国があるとき、なるべく自分は矢面に立たず、弱いほうに加担し、膠着状態にすることで、漁夫の利を得る。
と先に書いたあれだ。

たとえば何が起こるかというと、ISISの引っ越しを裏でコッソリ手伝うとか。



現時点ですでにISISは
「あなたいつ引っ越しなさるんですか?」
というほど壊滅間近になっている。
ということで引っ越しの可能性が高い。

ではどこへ引っ越すのか?

わたしの見立てでは可能性があるのは以下4か所。
・北アフリカ
・コーカサス
・パキスタン
・新疆ウイグル自治区

北アフリカはEUの裏庭である。
アメリカにとってEUの力をそぐことが最重要と考えるなら、そこへの引っ越しを支援するが、現在のEUの体たらくから見るに、たぶん3つのうちで最も可能性が低い。

コーカサスはロシアの裏庭である。
コーカサスっていってもピンとこない人が多いと思われるのでちょいとだけ紹介しよう。
コーカサスはチェチェンがあるロシア南部および旧ソ連地域で、民族の火薬庫と言われるバルカン半島なみに民族がやたら複雑に入り組んでいてカンタンに民族紛争が始まるところであり、それに加えてイスラムもいて都合がいい。
アメリカにとってロシアの力をそぐことが最重要と考えるなら、そこへの引っ越しを支援する。
ただトランプはロシアに好感を持っているフシがあるため、これをやりはじめたら右手でプーチンと握手しながら左手で殴り合うというエクストリームな外交戦を我々は見ることになるだろう。
ただし、コーカサスへの引っ越しは、地政学的にこれから増長してくるに違いないと言われているイランをけん制することになるし、その意図でアメリカでなくサウジが引っ越し支援する可能性はある。

パキスタンは、インドとの国境は何の脈絡もない変なところで無理やりブツ切りになっており、アフガニスタンとの国境は山岳地帯でパキスタン軍の管理の及ばない半無政府地帯になっており、貧困国だし、元より地政学的に大変不安定な地域である。
アフガニスタンにはまだ米軍がいるので引っ越し不可だが、パキスタンには可能だ。
ただしアメリカが支援する動機が最も低いので、ISISはここに引っ越したいなら自腹でやれと言われるだろう。

新疆ウイグル自治区は中国領内である。
そして中国の裏庭である無政府状態の失敗国家キルギスなんかも活動範囲に含まれうる。
もともとこのへんの回族はイスラムである。
アメリカにとって中国の力をそぐことが最重要と考えるなら、そこへの引っ越しを支援する。
日本にとって最も都合がいいのはたぶんこれ。
ただし現在のISISのお住まいのエリアから最も遠い。



佐藤優氏は「現代の地政学」なる本で新疆ウイグルに引っ越しすると中国軍はそっちにかかりっきりになって尖閣はほっとかれるだろうと書いている。
前回とりあげた「100年予測」には、何とは書いていないが、中国はそのうち国内問題で手いっぱいになるだろうと書いてある。

いまはアメリカは
「だれがISISにトヨタのランドクルーザーをこんなに渡したんだ!?」
と言っているが、その時代になれば
「だれがISISにトヨタのランドクルーザーをこんなに渡したんでしょうねぇ。いやー困ったもんですわ。はっはっはー」
なんて言いだすだろう。

ちなみにアメリカのブリカスお家芸化により新疆ウイグルへのISIS引っ越しが成功したとしても、必ずしも日本にとって都合がいいわけではない。
中国と日本が膠着状態になって1歩も動けず他にかまう余力がないというのがブリカスお家芸のめざす世界である。
だから中国の自滅で日本が漁夫の利というほど良いものにはたぶんならないとわたしはふんでいる。



クリミアやウクライナはたぶんほっとかれる。
トランプならひっくり返してもコストに見合わないと考えるだろう。
ただし交渉材料としてチクチクするために完全に見捨てると宣言はしないだろう。



ドイツも裏でコソコソ何かやられる可能性がある。
地政学的にいうと、ドイツがロシアを占領してウラルの向こうまで軍需工場を退避させれば絶対無敵の帝国になるし、ロシアがドイツを占領するとドイツの科学力と外洋へ出る不凍港を手に入れて世界帝国になりうると100年前から言われている。
このへんは「マッキンダーの地政学」を読みハートランド理論を理解するとよろし。
アメリカとしては、今のドイツとロシアの協調関係の強化は、口には出さないにしても腹では気に入らないと思っているはずだ。
この妨害工作を何だかんだやりだす可能性があるとわたしは見ている。



佐藤優氏は「現代の地政学」やら何やらで、これからは紛争が増えると言っている。
それは、わたしの読みに照らし合わせると、アメリカのブリカスお家芸発動による、アメリカの思ったとおりになった世界ということになる。(佐藤優氏はブリカスお家芸化などとは言っていない)

我々はどうすべきというのはなかなか難しい。
投資として見た場合、イラン(注:イランはアラブには含まれない)は買い、ロシアは買いかも、アラブ(特にサウジ)は売り、中国は売りかも、EUは特にコメントなし、日本は売りか買いかようわからん、南米は現時点ですでにほっとかれているので判断に無関係、…といったところ。
まあ何にせよ、今まで以上に紛争リスクについて考えて行動する必要にせまられるであろうことは確かである。



いちおう今回までで全部書ききった。
次回はここまででとりあげた参考文献の紹介をして4部作を終わりにしたい。

つづく・・・

トランプの統治する世界(4)
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/e/e938e170f1368d09c6dda98a93670863