教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

トランプの統治する世界(3)

2016-11-14 00:32:50 | 経済/経済/社会

トランプの統治する世界(2)
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/e/f0e7e462d86d9117beb23dee5236686c

・・・つづき

前回と前々回はトランプ登場前夜の情勢についてだった。
では、いよいよトランプが統治する世界はどうなるかだが・・・。



まあ、あくまでもトランプがマトモな人物だったらという仮定での話になるが。

トランプはビジネスライクにアメリカの損得で判断するようになると思われる。

そうではなかったという意味でいうと、これまでのアメリカは
「アメリカの正義や主張は人類普遍のものであるべきで、アメリカはそれを人類全体で共有するために努力を惜しむべきではない!」
という、たいへん押しつけがましい点があったが、そうではなくなるという意味だ。

たとえばイスラエルでいうと、アメリカから見たイスラエルはイスラム世界のど真ん中に存在する自由主義陣営の要塞であり、これが陥落するとイスラム世界に自由主義は二度と返ってこないから死守すべき、というのが今までだった。
単にイスラエルはユダヤのロビー活動だけでアメリカから寵愛を受けているのではない。

で、それがどうなるかというと、イスラム世界にアメリカ式の自由主義を布教活動するベネフィットに、イスラエル支援のコストが勝っているとトランプが判断すると、アメリカはイスラエルへの支援を激減させる。

ホントかいなと思うかもしれないが、これと同じことはエジプトでも起きた。
エジプトがロシアの保護国になるのを妨害するというネフィットに、アメリカからエジプト独裁政権への金銭的援助というコストが上回っていた時代だけ、アメリカはエジプトへ湯水のごとく援助した。
今はもうない。

これは極東でも同じである。
南シナ海、東シナ海が中国の内海になるという損失が、日本や韓国に米軍を駐留させるというコストより小さければ、米軍は撤退する。



さらにその先はどうなるか?

アメリカの世界統治はブリカスのお家芸に回帰する。

つまり、
> イギリスは、対立する2国があるとき、なるべく自分は矢面に立たず、弱いほうに加担し、膠着状態にすることで、漁夫の利を得る。
と先に書いたあれだ。

たとえば何が起こるかというと、ISISの引っ越しを裏でコッソリ手伝うとか。



現時点ですでにISISは
「あなたいつ引っ越しなさるんですか?」
というほど壊滅間近になっている。
ということで引っ越しの可能性が高い。

ではどこへ引っ越すのか?

わたしの見立てでは可能性があるのは以下4か所。
・北アフリカ
・コーカサス
・パキスタン
・新疆ウイグル自治区

北アフリカはEUの裏庭である。
アメリカにとってEUの力をそぐことが最重要と考えるなら、そこへの引っ越しを支援するが、現在のEUの体たらくから見るに、たぶん3つのうちで最も可能性が低い。

コーカサスはロシアの裏庭である。
コーカサスっていってもピンとこない人が多いと思われるのでちょいとだけ紹介しよう。
コーカサスはチェチェンがあるロシア南部および旧ソ連地域で、民族の火薬庫と言われるバルカン半島なみに民族がやたら複雑に入り組んでいてカンタンに民族紛争が始まるところであり、それに加えてイスラムもいて都合がいい。
アメリカにとってロシアの力をそぐことが最重要と考えるなら、そこへの引っ越しを支援する。
ただトランプはロシアに好感を持っているフシがあるため、これをやりはじめたら右手でプーチンと握手しながら左手で殴り合うというエクストリームな外交戦を我々は見ることになるだろう。
ただし、コーカサスへの引っ越しは、地政学的にこれから増長してくるに違いないと言われているイランをけん制することになるし、その意図でアメリカでなくサウジが引っ越し支援する可能性はある。

パキスタンは、インドとの国境は何の脈絡もない変なところで無理やりブツ切りになっており、アフガニスタンとの国境は山岳地帯でパキスタン軍の管理の及ばない半無政府地帯になっており、貧困国だし、元より地政学的に大変不安定な地域である。
アフガニスタンにはまだ米軍がいるので引っ越し不可だが、パキスタンには可能だ。
ただしアメリカが支援する動機が最も低いので、ISISはここに引っ越したいなら自腹でやれと言われるだろう。

新疆ウイグル自治区は中国領内である。
そして中国の裏庭である無政府状態の失敗国家キルギスなんかも活動範囲に含まれうる。
もともとこのへんの回族はイスラムである。
アメリカにとって中国の力をそぐことが最重要と考えるなら、そこへの引っ越しを支援する。
日本にとって最も都合がいいのはたぶんこれ。
ただし現在のISISのお住まいのエリアから最も遠い。



佐藤優氏は「現代の地政学」なる本で新疆ウイグルに引っ越しすると中国軍はそっちにかかりっきりになって尖閣はほっとかれるだろうと書いている。
前回とりあげた「100年予測」には、何とは書いていないが、中国はそのうち国内問題で手いっぱいになるだろうと書いてある。

いまはアメリカは
「だれがISISにトヨタのランドクルーザーをこんなに渡したんだ!?」
と言っているが、その時代になれば
「だれがISISにトヨタのランドクルーザーをこんなに渡したんでしょうねぇ。いやー困ったもんですわ。はっはっはー」
なんて言いだすだろう。

ちなみにアメリカのブリカスお家芸化により新疆ウイグルへのISIS引っ越しが成功したとしても、必ずしも日本にとって都合がいいわけではない。
中国と日本が膠着状態になって1歩も動けず他にかまう余力がないというのがブリカスお家芸のめざす世界である。
だから中国の自滅で日本が漁夫の利というほど良いものにはたぶんならないとわたしはふんでいる。



クリミアやウクライナはたぶんほっとかれる。
トランプならひっくり返してもコストに見合わないと考えるだろう。
ただし交渉材料としてチクチクするために完全に見捨てると宣言はしないだろう。



ドイツも裏でコソコソ何かやられる可能性がある。
地政学的にいうと、ドイツがロシアを占領してウラルの向こうまで軍需工場を退避させれば絶対無敵の帝国になるし、ロシアがドイツを占領するとドイツの科学力と外洋へ出る不凍港を手に入れて世界帝国になりうると100年前から言われている。
このへんは「マッキンダーの地政学」を読みハートランド理論を理解するとよろし。
アメリカとしては、今のドイツとロシアの協調関係の強化は、口には出さないにしても腹では気に入らないと思っているはずだ。
この妨害工作を何だかんだやりだす可能性があるとわたしは見ている。



佐藤優氏は「現代の地政学」やら何やらで、これからは紛争が増えると言っている。
それは、わたしの読みに照らし合わせると、アメリカのブリカスお家芸発動による、アメリカの思ったとおりになった世界ということになる。(佐藤優氏はブリカスお家芸化などとは言っていない)

我々はどうすべきというのはなかなか難しい。
投資として見た場合、イラン(注:イランはアラブには含まれない)は買い、ロシアは買いかも、アラブ(特にサウジ)は売り、中国は売りかも、EUは特にコメントなし、日本は売りか買いかようわからん、南米は現時点ですでにほっとかれているので判断に無関係、…といったところ。
まあ何にせよ、今まで以上に紛争リスクについて考えて行動する必要にせまられるであろうことは確かである。



いちおう今回までで全部書ききった。
次回はここまででとりあげた参考文献の紹介をして4部作を終わりにしたい。

つづく・・・

トランプの統治する世界(4)
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/e/e938e170f1368d09c6dda98a93670863


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