見ないフリ

一時的な対応策にしかならない現実逃避をずっとするブログ

ナンシー関 ハンコ展

2014-12-06 | 本と漫画と映画とテレビ
やらせをしてまでも作りあげたい(デッチあげたい)
「おもしろい」を思い描く能力の有る無しは、
道徳心の有無より大事だ。

―ナンシー関 『テレビ消灯時間』より


先月、渋谷パルコで開催されていた
ナンシー関の展覧会に行ってきました。



ハンコの原版だけじゃなく、
ハンコのつくり方やら丁稚アニメやら
傑作コラム集やら、いろいろと本当に大充実&大満足の展覧会で。

数々のハンコは、
LINEのスタンプにして売り出せばいいのに。
(すでに売ってるのかも?)

何年か前にも開催されていたけれど、
今回のほうがより面白かった。


なかでも、ウェディングドレスや高級ブランド品に
ナンシー関のハンコを押印したコンセプチュアル・アート?がかなり見ものだった。

「グッチ(GUCCI)の靴に清水健太郎のハンコを押したら、
それはもはやグッチの靴じゃなくて、清水健太郎の靴と呼ぶのでは?
そんな思いから数々のコンセプチュアル・アート作りにも取り組む~云々」

というような内容の解説文が添えてあり、
まさかの、デュシャンの『泉』がここに!という感動と
こういうアートな活動もしていたのね~という驚き。



グッチの靴改め、清水健太郎の靴。笑
どっちが魅力的かは人それぞれなのです。

今回の展覧会に行って、
この人は版画家、芸術家だったんだな~と気づく。
何をいまさら。


だって、ナンシー関のことよく知らなくて・・・

祖父が定期購読していた『週刊朝日』に、
「小耳にはさもう」というコラムが連載されていたなぁ。という記憶のみ。
消しゴム版画家ということすら認識してなくて、イラストも描く面白コラムニストだと思ってた。「~だ」「~である」という断定の文体と自画像から、かなり長い間、男性だと思ってた。



2002年頃、突然の訃報にびっくりして、
しばらくしてから、テレビでマツコ・デラックスを観て、またびっくり。
ナンシー関の親戚か?つってひとりザワザワ。


そして、改めて著作を読んでみると、
その面白さを再確認するとともに、人類は偉大な人を失ったんだわ・・・。
という事の重大さに気付く。

(いまさら過ぎる・・・)


扱っている素材が、
当時のテレビ番組や時事ニュースといったナマモノなので
今読むと、確かに新鮮味には欠けるけれど、

オウム事件の横山弁護士だとか、オーストラリア失踪花嫁だとか、
沢田亜矢子と松野さんだとか、嘘つき解散の宮澤首相だとか、、、

懐かしい話題がいっぱい。
しかも、文章がすんごい面白い。
独特な視線。かつ、的確。


ヤワラちゃんの政界進出を予言したり、

長野オリンピックの閉会式を観て、“欽ちゃんは死にました。”と発言したり、
(殺したのは演出の浅利慶太)

テレビに出てきた子供のキラキラネームに対して、
“「出産」は絶対正義だからねぇ。その前にあっては「センス」とか
「ニュアンス」というあいまいなものは無力なんだろうと思う。”
つって、想像を超えるネーミングに驚いたり、

皇太子さまの結婚報道に盛り上がるワイドショー番組に、
“おめでたければ何でもあり、めでたいんだからしょうがねえだろうというオラオラ状態。「全国民のよろこび」という錦の御旗のもとに、大きくカン違いした「報道の義務」を遂行せんと、洗足(せんぞく)の商店街しらみつぶしで雅子さんの足のサイズまで調べあげる。”とモラル無視の喧伝に冷めた視線を送ってみたり、

“いい人だからどうだというのだ。
テレビに映った時につまらなければ、それは「つまらない」である。
何故、見せている以外のところまで推し測って同情してやらなければいけないのだ。”
つって「顔面至上主義」を提唱したり、

“メディアミックスには気をつけろ、ということを、
私たちはここ数年ほどでしっかり教育された。それは主にフジテレビによる。
テレビ、ラジオ、出版、そして新聞まで動員していろいろ私たちをダマしてきた。
『夢工場』かあ?” つってステマを警戒したり。

“「テレビは誰かの視点による」というのは怖いことではあるが、
その視点がすぐれていれば楽しいことでもあるのだ。”
つってお気に入りのテレビ番組の編集をホメたり。


それはもう、「テレビ」に対しての視線がすごい。
テレビの出演者、制作者、視聴者、みんなに厳しい。
「芸」や「仕事」に厳しい。
テレビ愛ゆえの冷徹さという感じ?

こんなにテレビの事を考えてくれる人は、もう二度と現れないと思う。


誰もがうっすら思っているけれど、
うまく頭で整理できない事案を、的確な言葉で
代弁してくれる存在だった、というか。

対談集『語りあかそう』の本人談によると、
「その人自身がいい悪いよりも、この人はこんないやなところがあるのに、
世間の人はどうして気がつかないの?っていうところのほうにムッとするんですよ。」ということらしいのだけど。


もし、ナンシー関が生きていたら、
2014年、今の空気をなんと書いてくれるのか。

テレビの衰退っぷりや、政治のオラオラ感に何を思うんだろう?
人前で歌わない歌手たちに何を思うんだろう?
辻仁成と中山美穂の離婚には何を思うんだろう?
アメトークのプロレス芸人に何を思うんだろう?
ビートたけしの現状や、松本人志の筋肉&銀髪に何を思うんだろう?
崇めてないで、早く引導渡すヤツ出てこい、とか言うのだろうか?

個人的には、綾野剛の節操なく映画に出まくる感じをなんとか言ってほしい。
(あ、テレビ関係なくなってる)

あと、散々ネタにしてた森繁久彌より
先に死んでしまったことをどう思っているのかも気になる。


うー
生き返ってー



この方は、あいかわらず。