見ないフリ

一時的な対応策にしかならない現実逃避をずっとするブログ

キング・アーサー

2017-07-29 | 本と漫画と映画とテレビ
敵をつくるより仲間をつくれ

―映画『キング・アーサー』より


思春期に、映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』と『スナッチ』に
頭をガーン! と殴られて以来、ずっと、ガイ・リッチ―のことを盲信しているわけで。



『キング・アーサー』
監督:ガイ・リッチー
撮影:ジョン・マシソン
出演:チャーリー・ハナム、ジュード・ロウ、アストリッド・ベルジュ=フリスベ

2017年公開の、アーサー王伝説をモチーフとしたアクション映画。


やっぱ、いいものはいい。



うん、ガイ・リッチ―はいい。

『キング・アーサー』のアメリカでの評判や興行収入は壊滅的で、
日本でも公開からまだ1カ月半しか経ってないのに、上映館がみるみる減っていて、
7月下旬の東京都内で唯一上映していた丸ノ内ピカデリーは、日曜日だっていうのにガラッガラだったけれど。

ついでに、
中身がなくて、CGはゲームっぽくて、カット割りの激しさから目がチカチカして、
もとの伝説や史実を改変しまくってて、衣装が時代と全く合ってなくて、
アクションシーンが『シャーロック・ホームズ』と変わり映えしてなくても。

いいものはいい。


考えてもみてよ。

ガイ・リッチ―は、マドンナという名の魔女によって
9割方の精力&気力を吸い取られてしまったはずなのに(知らんけどな)、
ずっと変化し続けている。

これってすごいことじゃない?
本来なら、生きていることすら奇跡なのに! (なんじゃそりゃ)

マドンナさんが、『ワンダーラスト』というステキな映画を産みだせたのも、
ひとえに、彼のおかげだと思うわけ。

きっと、友達も多くて、
絶対いいヤツなんだと思うんです。


事実、『キング・アーサー』はいいことづくし。

早いカット割り&モンタージュいっぱいの映像は、相変わらず、いや、年々洗練されてミラクルかっこいいし。
(エドガー・ライト曰く、早いカット割りはマーティン・スコセッシの影響らしいが)

音楽も、『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『パシフィック・リム』級にキレキレだし。
(『The Devil & the Huntsman』という曲がちょっとチビるくらい良いよ。音響のよい映画館で観るべき)

登場人物たちのしゃべる英語のアクセントは、なんとも耳に心地よいし。
(英語理解不能なので、それがなまりなのか気のせいなのかは不明)

象に馬に鷲にヘビにタコ……。動物いっぱいの世界観もいいし。
(2015年の『マッドマックス 怒りのデスロード』に通じる空気感)

そしてなにより、
美男美女がいっぱい。

映画『シャーロック・ホームズ』で、ジュード・ロウ(ワトソン)の婚約者を演じていた
上品な女優さん、ケリー・ライリーが出てきて見惚れる。ふぁ~いつもお美しい。好きです。
(と思ってたら、ぜんぜん違う女優さんだった…あの美女だれ?)

珍しく悪役を演じるジュード・ロウが、
お城の洞窟に住むタコ風のマツコ・デラックス風の妖怪? 怪物? から
「相変わらず、イケメンだこと」
的な言葉をかけられていて、私も大きくうなずく。



主人公のアーサーはもちろん、
父親ユーサーもギャング友達も穴ぐら貴族も
みんなとってもグッドルッキングで、ホント目に優しい映画。

おまけに、すんごい端役(と思われる)
聖剣・エクスカリバーの守衛まで渋いイケメン。

「こんなチョイ役にまで、イケメンか~。
さすが英国、ベッカム似の人間がゴロゴロしてんだなぁ」

と感心しつつ、
画面のハンサムをまじまじと眺める。

すると、このハンサムが、
ベッカム似っていうかむしろ本人っぽいことに気づく。

「顔に傷があるから違うか…?
でも、このちょっと甲高い声……
も、もしかして、デイビット・ベッカムさん…??」

この衝撃を誰かと共有したくて辺りを見渡すも、そこはガラガラの映画館。
キョロキョロしてもひとり。


ちなみに、
肝心の「アーサー王伝説」についての知識は皆無なので、
念のため、事前にディズニーの『王様の剣』(1963年公開)を鑑賞。



しかし、あまり意味がなかったかも?

そもそも、ディズニー版は
主人公が岩から聖剣を抜くまでの物語なのね。

一方、ガイ・リッチ―版は、主人公が聖剣を引き抜いた後、
その元にヤカラたち(いわゆる円卓の騎士)が集まってくるまでも描かれている。

だから、
あんまり参考にならないっていう。

いや、それ以上に、
「桃太郎」の物語を知らなくても、
ペプシのCMは楽しめるじゃない?

『キング・アーサー』もそんな感じ。



あのCM、むしろ
正しい知識を持っている方が、文句をつけたくなるでしょ。
「犬、サル、キジは馬に乗れない」とか、
「なんで師匠が宮本武蔵やねん」とか、
「鬼がジュード・ロウなわけあるかい!」とかさ?

そういう意味では、
『キング・アーサー』鑑賞において
「アーサー王伝説」の知識の有無はそんなに重要ではないかもしれない…?


ただ、ディズニー版を観たおかげで、
ガイ・リッチ―版では名前とシルエットしか出てこない
大魔術師マーリンの姿が明確に想像できてちょっと優越感。ふふふ。



特におすすめはしないけれど、
続編があるなら、きっとまた観に行くことでしょう。

(恋は盲目。アバタもエクボ)

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件

2017-07-21 | 本と漫画と映画とテレビ
人間って不思議なもんですね。
今あったことをすぐ忘れるくせに、ショウジ(息子)が元気だった時分のことははっきり覚えてるなんて

―映画『麦秋』より


『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』という
名作かつ幻の(※)台湾映画が4Kレストア・デジタルリマスター版で
絶賛上映中だよという噂はずいぶん前から聞いていたけれど、
上映時間3時間56分、特別料金2200円という事実にずっと尻込みしていました。
(※権利関係が複雑化してDVD化されていなかった)

だけれど。

この間、
映画『ブエノスアイレス』(1997年、監督:ウォン・カーウァイ)のDVDを借りて
切ない切ない言って観てたら、チャン・チェン(張震)という俳優さんが出ていて。
あれ? この人『百年恋歌』(2005年、監督:ホウ・シャオシェン)に出てたイケメンじゃない? と気づき、調べてみたら、『クーリンチェ少年殺人事件』がチャン・チェンのデビュー作だった。

「こ、こ、これは観ておかないといけない!!」
つって、己の中の面食いお化けが俄然騒ぎだし、
気づけばそこは渋谷のアップリンク。2列目。



『クーリンチェ少年殺人事件』(1991年、台湾)
監督:エドワード・ヤン
撮影:チャン・ホイコン
録音:ドゥー・ドゥージ
出演:チャン・チェン、リサ・ヤン、ワン・チーザン

1961年に台湾で起きた中学生男子による
同級生女子殺傷事件をモチーフにした青春映画。


かわいかった~。
15歳のチャン・チェン、かわいかった~。
何あのえくぼ。照れ笑い。罪深い。

休憩なしの3時間56分は、なかなか疲れるけれど、
主人公役のチャン・チェンが画面に登場するたびに、頬が緩む。かわいいから。
あと、リトル・プレスリーが出てきても笑顔になる。かわいいから。(違う意味で)

さらに、チャン・チェンの父親役の俳優さんも男前で、
台湾人ってばイケメン揃い~❤ とニヤニヤしていたら、
チャン・チェンの実の父親なんだとか。
あと、兄役の俳優さんもリアルお兄ちゃん。台湾の三國家。眼福。謝々。


映画の雰囲気は小津安二郎。

「たとえば、小津が青春ギャング映画を撮ったら」

(はい、ここでBGMにサイモン&ガーファンクルの『冬の散歩道』が流れる)
なんつって。

いや、小津映画とかぜんぜん分からないけれど、
カメラの動きとか、日本家屋に大家族の感じがそれっぽい。
『珈琲時光』(2004年、監督:ホウ・シャオシェン)よりは小津っぽい。

1960年代の台湾になぜ日本家屋? なんていう疑問への答えは
映画の中でもちょこちょこ触れられるし、
知っていて当然の知識なのかもしれないけれど、
せっかくなので、ざっくりと台湾の近代史をおさらいします。


まず、台湾は東アジアの太平洋に浮かぶ小島(日本の九州くらいの面積)。



17世紀頃から中国大陸の清に統治されていましたが、
日清戦争後の1895年、下関条約によって日本に割譲。

以降1945年までの半世紀の間、台湾は日本に統治されます。
その間、台湾へ移り住んだ日本人が、農業政策や建物の建設、インフラ整備、
日本語教育などいろいろおせっかいを焼いたり、迷惑をかけたりする。

なので、
台湾のご老人には日本語が通じることがあるし、
今でも台湾各地に日本式の木造家屋が残っている。

台北市内の青田街は日本人高級官僚の住宅街だったらしく、
それらの立派な建物を再利用したカフェが人気。
(「青田七六」なんかはよくガイドブックに載っていますな)

そんなわけで、
1941年から始まる太平洋戦争の際も
台湾は日本軍側の立ち位置。一応。

この日本統治時代のいろいろは、
『戯夢人生』(1993年、監督:ホウ・シャオシェン)
『海角七号 君想う、国境の南』(2008年、監督:ウェイ・ダーション)
『セデック・バレ』(2011年、監督:ウェイ・ダーション)
『KANO 1931海の向こうの甲子園』(2014年、監督:マー・ジーシアン)
なんかで味わってください。




んで、1945年。
日本が太平洋戦争に敗れたことで、
台湾は蒋介石率いる中華民国(国民党政府)に接収され、
中国大陸から多くの人々が移り住んできます。

なお、このとき中国大陸から国民党政府とともに
台湾に移り住んだ人々を「外省人(がいしょうじん)」、
日本の植民地時代から台湾に住んでいた人々を
「本省人(ほんしょうじん)」と呼ぶそうな。

お互い話す言語も異なり、
外省人はおもに北京語(出身の省によって異なる)、
本省人は台湾語。だったんだとか。

つい先の戦争では敵対する立場だった外省人と本省人が
いきなり同じ社会で暮らしていくことには何かと問題もあったようで、
1947年には本省人の民衆が蜂起する二・二八事件が起こります。

この辺りのいろいろは
『悲情城市』(1989年、監督:ホウ・シャオシェン)でどうぞ。
(本省人役のトニー・レオンが台湾語を話せなかったため、
聴覚障害者の役になったというのは有名な話)



そして、1949年。
中国大陸で国民党政府が毛沢東率いる共産党軍との内戦に敗れたことにより、
蒋介石は国民党政府を台湾に撤退させ、台北を臨時首都に定めます。

1950年には、大陸の半島で朝鮮戦争が勃発。
韓国側の国連派遣軍として参戦したアメリカは、台湾を「反共産主義の防衛ライン」とするために国民党政府との関係を強化へ。

そこで国民党政府は、台湾に共産主義が入り込まないようにと大奮闘。
結果、戒厳令が布告され、それは長期間続くことに。
戒厳とは、戦時において国民の権利を停止し、行政権や司法権を軍部の指揮下に移行することであり、台湾では1949~1987年までの38年間(!)、集会、結社、言論、報道、学問の自由などが制限されます。

このとき、数多くの政治犯(とみなされた人々)が逮捕、
処刑されたのだとか。(いわゆる「白色テロ」というやつ)


……以上、アンダースタンド?

歴史って難しいね。
プログラムに載っていたエライ先生の解説を
参考にしてみたけれど、ぜんっぜんわからん。。。

とにかくまぁ、映画の舞台である1950年代後半~60年代の台湾は、
トンデモ戒厳令の真っ最中で、子供を導くべき存在の大人たちが大混乱だったということ。

中盤、主人公の父親が警備総司令部に連行されたのは、戒厳令のせい(多分)。
一家は、戦後上海から台湾に移り住んだ外省人(しかも公務員)だから、
大陸の共産サイドの人間と通じているんじゃないか? と疑われた模様(おそらく)。

中国大陸では中華人民共和国(共産党)が成立していたものの、
国連の中国代表権は1971年までは中華民国(国民党政府)。

だから、
戒厳令におびえつつ、国民党政府がそのうち中国大陸で
復権するんじゃないかという淡い期待も抱きつつ、
それでも、やっぱり将来に対する唯ぼんやりした不安。。。

そんな不安定な精神状態の大人たちを傍目に、
映画は、外省人の少年たちの抗争を軸にゆったりと進んでいきます。

少年たちは徒党を組み、仲間のためには命がけでケンカをする日々。
そんな彼らが夢中になる存在は、
アメリカのエルビス・プレスリーやジョン・ウェインの西部劇。それと恋愛。
(この時代は、まだビートルズもデビューしていない)

あと、主人公のお兄ちゃんが得意なビリヤードは
台湾ではメジャーな遊び。らしい。
ビリヤード場は街のあちこちに点在していて、台湾はビリヤード強国。
(そういや、『百年恋歌』でも第1幕の舞台はビリヤード場だった)


この辺の情報を頭の片隅に置いて観ると、
混乱が少なくて済む。(ような気がする)

登場人物が多いので、
ある程度、人間関係を予習しておくのもアリ。
(4時間あるので、最後はイヤでも把握できるが)




どうでもいいけれど、
個人的には、原題の『牯嶺街少年殺人事件』より、
英題の『A Brighter Summer Day』のほうが好み。
(英題は映画の中で流れるプレスリーの曲の一節)

1991年の公開当初は、約3時間の映画だったらしいので、
今回鑑賞した4時間バージョンは主題がボケちゃっているのかもしれないけれど…

少年たちが死体を探しに行く物語でも、
小説の原題『The Body』(死体)より、
映画の題名『スタンド・バイ・ミー』の方がしっくりくるように、

少年が殺人を犯す映画でも
原題の『牯嶺街少年殺人事件』より、
英題の『A Brighter Summer Day』の方が映画に似合う。なんとなく。

てか、タイトルの殺人事件より、
ハニー事件や大雨の日の抗争の方がよっぽど大事件じゃないのか?


ちなみに。

1961年に実際に起きた事件というのは、
建国中学夜間部を退学になっていた少年(16歳)が、
同校在学中の少女(15歳)を殺害したというもの。

1947年上海生まれのエドワード・ヤン監督は、
2歳のときに台湾に移住した外省人で、
1961年に起きた事件の加害者とは同年代かつ、
同じ学校に通っていたんだそう。

映画監督になるくらいの優れた感性を持ったヤン少年が、
事件によって受けた衝撃は、相当なもんだったのだろうと想像されます。

だからこそ、
映画のタイトルにまで取り上げられているんだろうが、
肝心の殺人事件は、「時代のせい」「その時代ならでは」という感じはない。
(60年代の台湾に生きたことはないが…)

少年の不器用な恋心とニンフェットっていうのは、
時代や国に関係なく、どこでもあるように思う。万国共通、普遍的。
ちょっとしたハズミで、大事件に発展することもあるでしょう。
実際、私が高校生の時も似たような事件あったぞ。春休み中だったけど、緊急の全校集会になった記憶。

最近、
金鳥のラジオCMが気に入っているんだけれど、
あれに登場するオオサワ少年だって、一歩間違えたら、
タカヤマさんのことグサリだと思う。


そして、「殺人事件」とかいう物騒なタイトルに反して、
映画の映像はとびきり美しくて、そして良いエピソードがいっぱい。

だから、
1カット1カットにいちいち胸をグサリグサリと刺されます。
(そういう意味では「観客」殺人事件ですな)

なかでも、終盤、
主人公が映画監督に向かって叫ぶ場面。

「彼女が自然? 映画で何を撮ってんだー?」
的なことを主人公が叫んで撮影所を出ていくシーン。
これが切なくってもう重症。瀕死。ぐったり。

あんなに怒っていたのに、
ヒロインの血が付いた服は脱ぎたくないっていう。。。。

「恋に狂うとは言葉の重複。恋とはすでに狂気なのだ」

そんなことを言ってたのは19世紀の詩人、ハインリヒ・ハイネだったっけか。
煙が目にしみますなぁ。

THEセブンシュー

2017-07-20 | 生活
食べ物に対する愛以上に誠実な愛はない

―バーナード・ショー


ビールはローソン。
チキンはファミリーマート。
シュークリームはセブンイレブン。

近所に乱立しているコンビニを
港に立ち寄る海賊のごとく
「ヨーホーヨーホー」つって
自由気ままに活用してきたのに。

いつの間にか。びっくり。

セブンイレブンのシュークリーム100円が
130円に値上がりしている―!!!!

セブンさんは以前、
通常版の100円シュー(確か、とろりんシューとかいう名前)とは別に
ちょっと高級路線?のシュークリームを出していたから、
それかな? いつものヤツあるよね? と思ってしばらく様子をうかがっていたけれど、
どうやら、130円の「THEセブンシュー」がセブンイレブンシュークリームの最安値らしい。

なんだ?
どうした?

お値段UPの分、味が以前よりおいしくなったのかと思いきや、別段変わりなし。
(きっと味は変わってるんだろうけれど、舌バカな私には分からなかった)

「名前」と「値段」だけ変えて、しらこい顔して陳列している。

100円シューの中じゃ、際立っておいしかたのに、
階級(値段)が変わったら、意味がないじゃないか。
だれだ。気分イレブンいい気分とか言ってたヤツ。最悪。

愛が深かったぶん、裏切れた時の傷がデカいよう。

もう行かない。(うそ)

ヒッチコック/トリュフォー

2017-07-01 | 本と漫画と映画とテレビ
警察にはいかない。面倒だし、だらけるから

―アルフレッド・ヒッチコック
『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』より
「主人公たちが事件に巻きこまれたときに、なぜ警察にいかないのか」という疑問に対する答え


『ヒッチコック/トリュフォー』

監督:ケント・ジョーンズ (2015年、米仏合作)
出演:マーティン・スコセッシ、デビッド・フィンチャー、
黒澤清、ウェス・アンダーソン 他

1962年、フランソワ・トリュフォーがアルフレッド・ヒッチコックに行ったインタビューを
編集・収録した書籍『定本 映画術ヒッチコック/トリュフォー』を題材にした映画。
当時のインタビュー音声に加え、
ヒッチコックを敬愛する10人の監督たちのインタビューをまとめたドキュメンタリー作品。




ヒッチコック作品はいくつか観たから、
楽しめるだろうという軽い気持ちで映画館へ。

したら、知識も愛もぜんぜん足りなかった。
みんなヒッチコックについて、よくまぁあれだけ語れることよ。

そもそも、
映画監督のフランソワ・トリュフォーがそんな本を出していることすら知らなかった。
もともとは映画誌で評論を書いていたんだね。(無知の極み)

それでも、なんとか眠らずに鑑賞。

ヒッチコックは口は悪いけれど声がいい。
なんともゆっくりモシャモシャしゃべる感じ。
今にも「ミス・レモン」って言い出しそう。
(それは吹き替えか)


なんていう映画を観たのは今年の2月の話なんですが、
つい先日、図書館で話題の(自分の中で)
『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』を発見。



「これかー!!!」つって
おもわず手に取る。

しかし、
ページ数と文字量の多さにめまいがして流し読み……。



拾い読んで感じたことは、
トリュフォーがヒッチコックのことを好きすぎるということ。
そして、よいインタビュアーであり、よい編集者ということ。

自身も映画を作るからか、質問も感想も的確なうえ、
ほどよく褒めて、ときどき指摘もしちゃう
そんな完璧な太鼓持ち。

ヒッチコックとしても、
相当しゃべりやすかったのではなかろうか。
80時間も語らせるってすごい。

映画で流れていた実際の音声テープでは、
『めまい』のヒロイン役を妊娠で降板したヴェラ・マイルズに対して
「あのバカ女が!」
なんて、なかなかの問題発言をしていたけれど、

本の中では、
「おなかが大きくなり、撮影ができなかった。
これでスターになれるという矢先にね。
彼女のために本当に惜しかったと思うけど…」

つってきれいに整えられている。

当然の配慮とはいえ、こういうことをいくつもクリアしつつ、
長いインタビューのどこを使ってどこを切るかを決定し、
文字に起こして整えて注釈もつけて……

そんな果てしない作業を乗り越えて一冊にまとめたのかと思うと、
ほんと、トリュフォーすごい。尊敬します。

インタビューは1962年なのに、
出版がその4年後なのもうなずける。
そりゃ早死もしちゃうよー。なんて。


トリュフォーのヒッチコック愛を見習って?
ヒッチコック・マトリョーシカ。



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以上、
<鳥→サイコ→北北西に進路をとれ→めまい→裏窓> でした。