レミゼのフラッシュモブを楽しんでいたら、
映画もめちゃくちゃ観たくなったので、さっそく鑑賞。
映画『レ・ミゼラブル』
監督:トム・フーパー
2012年公開のイギリスのミュージカル映画。
原作は、1985年に初演された人気ミュージカル『レ・ミゼラブル』。
小説『レ・ミゼラブル』を映画化した作品はたくさんあるのだけれど、
この作品は、ミュージカル『レ・ミゼラブル』を映画化してるってのがミソ。
19世紀の小説『レ・ミゼラブル』が、
20世紀にミュージカル化され、さらにそれを
21世紀に映画化したものが、このミュージカル映画『レ・ミゼラブル』。
なんだか説明が下手くそで、
ややこしいことになってるけど、
ま、そういうことです。
ミュージカルが原作とはいえ、映画用に変えられている部分も多々ある。
劇中歌が一部カットされてたり、歌の順番が前後したり、
映画用に1曲『Suddenly』という曲が加えられたりもしている様子。
(この『Suddenly』が歌われるあたりの様子、
ジャン・ヴァルジャンがテナルディエ家から幼いコゼットを助け出した後の様子は
ミュージカルではがっつり切られている部分なので、映画で詳しく見られる。
小説はもっと複雑だけれど、うまく編集されている)
あらすじも、
映画独自の部分があったり、ミュージカル通りだったり、小説の筋に戻されてたり、、
ちょこちょこ変更されてるけれど、わかりやすくまとめられてます。(と、思う。)
感想は、とっても面白かったよ。
私、基本ミュージカル映画好きなのね。
とくに、普段はミュージカルとか出てないような俳優さんが歌うのが好き。
高い歌の技術で魅せるんじゃなくて、演技の延長で歌って魅せる感じがすごい好き。
まぁ、この映画に関しては、
ジャン・ヴァルジャンを演じたヒュー・ジャックマンはミュージカル出身だし、
コゼット役のアマンダ・サイフリッドも『マンマ・ミーア!』で歌ってたし、
エポニーヌ役のサマンサ・バークスなんか、舞台のミュージカルでもエポニーヌだし、
ミリエル司教だって、、って、ミュージカル関連の俳優さんがいっぱい出演しているけど・・・
でも、なんつうの、
ミュージカル特有の大げさな動きが、映画だと薄れるでしょ?
舞台ミュージカルは、遠くの席の観客に演技を届けるために声も動きも大きくなるけれど、
映画は、顔のアップや、その表情&しぐさで気持ちが伝えられるから、
普段の動きの中で、表情筋だけで、しれっと歌っちゃう感じがなんとも好きなのよねー。
ジャベール警部を演じたラッセル・クロウはそれほど歌が上手ではないのだけれど、
(周りのミュージカルのプロ俳優たちに比べたらって意味ね!)
そのあんまり上手ではない感じが、
頭でっかち・法の人間・ジャベール警部をよく表してて、なんだかよかった。
ジャベールが実在したら、きっと歌は上手くないと思うのよ。
あと、
テナルディエ夫妻と絡むと誰もがコメディっぽくなる感じとか、
夫妻の営む宿屋がティム・バートンっぽいブラックさなのも好き。
(これはヘレナ・ボナム=カーターの存在がデカい?)
ついでに、
大人コゼットが出てくると、画面がキラキラふわふわしてくる感じも可愛いし、
ファンチーヌが工場で働くシーン(とくに工場長の歌い方?なまり?が好き)や、
髪と歯を売る波止場のシーンも好き。そこで歌われる『Lovely Ladies』も好き。
♪ラブリー・レディ!カム・アロング&ジョイナス!♪ラブリー・レディ!
ただ、
ある程度、予習をしていたほうが楽しめるのかも?
私は、小説のあらすじと、
何曲か劇中歌を予習していたので(ユーチューブ魔王のおかげ)
なんとか映画についていけたけれど、
これ知識ゼロで観てたら、確実に後半寝てるなー、と思う。
たしか、
なんにも予習せずに観たミュージカル映画『ロッキー・ホラー・ショー』は
あんまり楽しめなかった記憶。
何度か観て、曲やフリを覚えないと楽しくない…っていう。
うまく言えないけれど、、
物語のあらすじを楽しむ映画、というよりは、
オペラや歌舞伎、古典落語みたく、
観客はある程度の予備知識を持っている前提で、
監督の演出や解釈、演者の違いを楽しむ映画。という感じ。
いや、予習がなくても楽しめるんだろうけど、
予習してるともっと楽しい。というか・・・
例えば、、
終演後に、馴染みの蕎麦屋で一杯やりながら
「やっぱ、志ん朝の『愛宕山』が一番だねぇ、」
つってグダグダくだを巻くのも楽しみのひとつ、みたいな・・・
「カラヤンの『第九』が好きだったけど、バーンスタインの『第九』もなかなか…」
つって指揮者の違いを楽しむのも一興、みたいな・・・?
なんか違うか。
でも、
複雑なあらすじや、登場人物の不可解な行動は
小説や解説なんかでそれなりに解消したうえで観たほうが
ゆるりと楽しめるんじゃなかな?と。
そしたら、
映画とミュージカルの演出の違いを比較して
「おー、そうきたか~!」つって楽しんだり、
冒頭の『囚人の歌』のシーンで囚人が船を引いているのは
当時、囚人を収容する施設である徒刑場の管轄が海軍だったからで、
これは海軍工廠の危険な作業をさせられてるのかしらねぇ。と思ったり、
ジャベールの制服の変遷(トゥーロン徒刑場→モントルイユ警察→パリ警察)
を楽しんだり、『ワン・デイ・モア』の辺りで肩章や襟元が立派になって
胸に勲章が付いてるのを見て、出世したんだね~と喜んだり、
ジャン・ヴァルジャンが幼いコゼットを連れて、
フォシュルヴァン爺さんが働く修道院に逃げ込むシーンや
ラマルク将軍の葬儀シーンは、小説にも書かれてるけれど、
映画だと映えるわね~。と感心したり、
暴動が始まってからも、カフェ・ミュザンで飲んでいる学生が
大酒飲みのグランテールか。この人ずっと酒ビン持ってるわー、と注目したり、
エポニーヌの死に、ガヴロッシュが陰で涙する場面は、
小説で軽く触れられてるだけの姉弟設定を映画でも使っているから?と想像したり、
ナポレオンの命令で建造が予定されていたものの、
未完成のままずっと放置されてて、ガヴロッシュが住み家にしてた
バスチーユ広場の巨象ってこれかー!と驚いたり、
小説での些細な出来事が、
映像として巧みに落とし込まれているシーンを発見して、ニヤニヤしたりもできる。
舞台のミュージカルだけじゃ分からない、細部まで楽しい。
そんな映画。
あ。
音楽はどれもステキなので、それはもう。
『ワン・デイ・モア』だけじゃない、名曲いっぱい。
異なる場面で同じメロディが頻繁に使われるので覚えやすいのです。
(リプライズというやつ?)
例えば、
序盤のジャン・ヴァルジャンの独白シーンと、
終盤のジャベール警部の自殺シーンのメロディが一緒だったり、
ファンチーヌが死ぬ直前に歌う『Come to Me』とエポニーヌの歌う『On My Own』、
ジャン・ヴァルジャンの最期の歌は同じメロディだったり、
テナルディエ夫妻の歌はだいたい『Master of the House』の旋律だったり…いろいろ。
逆に、メロディは違うけれど歌詞は同じ、という場面も結構ある・・・(と、思う。)
こういうのは多分、意味があってのことなので
その意味を考えてみるのも楽しい。
そんな映画。