見ないフリ

一時的な対応策にしかならない現実逃避をずっとするブログ

ラ・ラ・ランド

2017-03-23 | 本と漫画と映画とテレビ
「アステアとロジャースは好き? あなた私のこと好き?」
「さぁ、考えたことない」
「私のアソコ見たい?」
「見せなくたって好きだよ」

―映画『リトルダンサー』より




監督:デミアン・チャゼル
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン

2016年に公開されたアメリカ合衆国のミュージカル映画。
第89回アカデミー賞では、監督賞、主演女優賞、撮影賞、
作曲賞 、歌曲賞、美術賞の6部門を受賞。


切な。

話題だよ、名作映画のオマージュいっぱいだよってことで、
しっぽをブンブン振ってご機嫌で観に行ったら、切なくてびっくり。

後半、公園のシーンで、エレカシの『リッスントゥザミュージック』か
SUPER BUTTER DOGの『サヨナラCOLOR』が流れなかった? 気のせい??

そもそも、ジャズマン役がライアン・ゴズリングってのがずるい。反則。
「こういう役をさせたら右に出るものはいません」杯の世界代表じゃないスか。
『きみに読む物語』しかり『ドライブ』しかり『ブルーバレンタイン』しかり。
『ブルーバレンタイン』とか、思い出すだけでゲロ吐きそうだわ。
(胸がギューとなるという意味で)


切ないゴズリング氏はさておき、
映画はね、もう完璧。最多アカデミー賞ノミネート作品ですから。うんうん。
肩書大好き、権威主義な私。

監督のジャズ愛とミュージカル映画愛がギューっとつまっています。

舞台は現代のL.A.(ロサンぜルス)なんだけれど
50年代に流行った横広画面のシネマスコープ方式で撮られているうえ、
画面の色調や使用されてるフォントの古めかしさなんかが相まって、
なんだか昔の映画を観ているような錯覚に陥る。

あれ? 今日『ウエスト・サイド物語』観に来たんだっけ?
今、『雨に唄えば』観てるんだっけ?? って思う。
でもそこに、iPhoneが登場して我に返る。ふしぎ~。

美術や衣装の配色は
ジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』や
『ロシュフォールの恋人たち』を参考にしているそうで、
色がとってもきれい。
(けど、マカロンカラーではなくパッキパキのビビッドカラー)

時とともに部屋の色が少しずつ変わって
それで主人公たちが親密になってく様子がわかるんです。
小道具への熱量・こだわりは『ねほりんぱほりん』に勝るとも劣りません。

あと、一緒に踊っているかのようなカメラワークもステキ。

肝心の音楽や歌は、
名曲カバーいっぱいの『ムーラン・ルージュ』を想像していたら、
(途中がっつり映像が『ムーラン・ルージュ』になるけれど)
ほとんどオリジナルでびっくり。でも、すごい耳なじみのよさ。ワオ。
終盤、エマ・ストーンが歌う『Audition』のパワーもすごい。

歌詞の内容はね、公開中の映画『SING/シング』のゾウと
だいたい同じようなこといってるよ。たぶんね。




なんていうか、
何度も繰り返し観たくなるスルメ映画なのはもちろん、
オマージュ元の映画も観たくなる、おまけ付きです。

『巴里のアメリカ人』に『世界中がアイラブユー』、
あと『ニューヨーク・ニューヨーク』でしょ・・・って挙げるとキリがないよー!
(てか、『ラ・ラ・ランド』の中で『理由なき反抗』が登場するけれど、
効果的に昔の映画が出てくる映画って、名作が多いように思いません?)


ジャズについては恥ずかしながら何も知識がないので、
語ることがない・・・勉強します・・・。
サッチモはサチモスじゃなくてルイ・アームストロングのこと、と。メモメモ。

とりあえず、<舞台ミュージカル>じゃなくて、
<ミュージカル映画>が好きな人は楽しいハズ。


ちなみに、
タイトルの「ラ・ラ・ランド」(La La Land)という言葉は、
ロサンゼルス(主にハリウッド地域)の愛称であるとともに、
現実から遊離した精神状態、夢の国のことを意味するらしい。

なので、急に歌って踊るミュージカル独特のあの感じが苦手な人は、
主人公たちが急に歌い踊り狂いだした時点で
「あ、今この人は、あちらの世界に行ってるんだな。ラ・ラ・ランド状態なんだな」
つって、あたたかい目で見守ってあげてください。
そうすると、ミュージカルへの嫌気も緩和されるんじゃないでしょうか。

映画『トゥルー・ロマンス』で、
エルビス・プレスリーと会話してたクリスチャン・スレーターや、
『ファイトクラブ』でブラピと殴り合いをしてたエドワード・ノートンも
歌い踊りこそしなかったけれど、「ラ・ラ・ランド」だったわけです。

『アメリ』の監督のジャン=ピエール・ジュネ作品なんて
「ラ・ラ・ランド」だらけだ。






てか、ホントどうでもいい話なのだけど、
今回、上演時間になってからの広告? CM? がヤバかった。
新しい映画の予告編とかではなく、おそらく普通のコマーシャル。

そのCMというのは、
ソニーの新楽器? 体の動きで音を奏でるというプロジェクト? なんですけど・・・
(はてなだらけで意味不明だ…)

うまく説明できなくてホント恐縮ですが、、
ソニーの電子楽器? 装置? を身体に付けたダンサーたちが
ノリノリで踊ってひたすら音楽を奏でる、という内容なんです・・・

なんかね、観てるとゾッとするってか、わー! ってなるの。
見ているこっちが恥ずかしくなるやつ。

ただただ、私の偏見&欧米人コンプレックスのせいかもしれないけど、
日本人はミュージカル的なフラッシュモブ的な挙動に向いてないと思うわけです。
手足の長さの問題なのか、張り付いた笑顔がウソっぽいせいなのか、
はたまた国民性や文化の部分なのかはよくわかんないけど向いてない。と思う。

それでね、
その「わー!」ってなるCMを観たあとに、本編が流れるんです。
本編、本場のミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が始まるんです。

想像してください・・・恐いでしょう。

ただでさえ赤面してるところに、圧倒的な本物を見せつけられるから
もう恥ずかしさを通りこして、憐み、哀しみ…あらゆる感情が湧いてくる。

悪いことは言わないから、
ソニーさんは『ラ・ラ・ランド』の前にあのCMを流すのは控えたほうがいい。

映画の壮大なオープニングダンスを観ている最中に、
CMのダンスがフラッシュバックするんです。
『ラ・ラ・ランド』観てるのに、頭の中はラ・ラ・ランド。



ぜんぜん映画に集中できない。
なかなかのトラウマ。閲覧注意、と言いたい。

スノーデン

2017-03-15 | 本と漫画と映画とテレビ
良いと知りながら実行しなければ、本当の知識ではない(知行合一)

―陽明学の命題のひとつ




監督:オリバー・ストーン
原作:『スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実』、
『Time of the Octopus』
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー

2013年6月、コンピュータ専門家のエドワード・スノーデンが
NSA(アメリカ国家安全保障局)の機密情報を
英国の大手新聞『ガーディアン』紙に暴露した事件を基にしたフィクション映画。
(2016年・米)


いや、ぜんぜん知らなかったよ。
エドワード・スノーデン。
え? 4年前にそんなニュースあったの??

なんかね、スノーデン氏は、NSAやCIA(中央情報局)の元局員で、
2013年に米国政府の監視システムの実情をマスコミにリークしたんだって。
そのせいで、米司法当局から逮捕命令が出て、現在ロシアに亡命中なんだとか。
(なお、この亡命を手引きしたのはウィキリークス主宰者のジュリアン・アサンジ)

その告発内容ってのが、
「米国政府は全世界でインターネットを傍受している」
ということ。

なんでもアメリカは、IT企業(マイクロソフト、Yahoo!、Google、Facebook、
YouTube、Skype、アップル…etc)に協力させて、インターネット上のメールや
チャット、電話、ビデオ、写真、ビデオ会議、登録情報なんかを傍受して、
個人情報や企業の機密情報、発表前の研究機関の情報などを収集しているんだとか。

さらに、日本を含めた38カ国の大使館の盗聴もしているらしい。

ついでに、
スノーデンは2009年に日本の横田基地でエンジニアとして働いていたことがあり、
その時に送電網やダムなどのインフラに不正プログラムを仕込こんだんだそう。
だから、もし日本がアメリカの同盟国でなくなったら、
そのプログラムが起動して日本のインフラは崩壊するんだって。あらあら。
(詳しくはググるか映画を観ておくれ)


てかスノーデン、私と同い年じゃん!
タメが立派に政府を告発して、亡命先でもリア充してる・・・
同じ時間を生きながら、ずっと現実逃避している自分って。。。情けない。


・・・まぁね、彼が暴露しなくたって
何でも監視できる社会だってことくらい、私だって知っていましたよ!(強がり)

だって、うんと前から「日曜洋画劇場」で
何度も『エネミー・オブ・アメリカ』観てきたからね!(キリッ!!)

あの映画、ウィル・スミスがかっこいいのはもちろん、
猫の扱いがとってもよくて好きなのよ~。
たしか、その猫の飼い主であるジーン・ハックマンの役柄が元NSA局員だったハズ。



1998年の映画なのに、今でもぜんぜんアリ! トニー・スコット監督さすが!
SDカードをゲーム機に隠すか、ルービックキューブに隠すかの違いなのです。
ラストまで大切にされている猫のベイブ。いい表情だわ。




猫はさておき・・・

インターネットの監視や傍受については、
『エネミー・オブ・アメリカ』みたいな映画があったり
以前から都市伝説的に語られてたりしたので、腰を抜かすほどの衝撃はない。

実際、日本でもたま~に、
ネットに爆破予告の書き込みをしたとかで捕まる人がいるじゃない。
それって、なんらかの方法で監視されてるってことでしょ?

無限にあるネットの情報を人間が全部チェックするなんて不可能なんだから、
そこは、エックスキースコアだかプリズムだかに似たシステム?プログラム?
を使って抽出しているに違いない。(と勝手に思ってるんですが如何)

ベッキーのLINEも香里奈の写真流出もNSAの仕業!(なんてね!)

だからもう、
なにかしらで目をつけられたり、事件の容疑者にでもなったりしたら、
その性癖からハメ撮り動画まで秘密が全部バレちゃうのだよ。
怖い話だけれど、そこはまぁ想定内。


ただ、
『スノーデン』を観ていちばん衝撃だったのは、
(本人も映画の中で語っていたけれど)
高い給料もハワイでの楽園生活も愛する恋人も全部捨てて、
機密情報を暴露したってとこ。
大塩平八郎かセルピコか、ってとこ。

そんなことできる?

わたしゃ無理です。
スノーデンの足元にも及ばない最下層の暮らしぶりだけど、無理だわ。
特に守るものもないけど、無理。

私にできることなんて、
『海と毒薬』の勝呂先生みたく手術室の隅っこでうつむいて、
目をしばたたかせるくらい。(首を吊るまではできない)


けどさ、スノーデンほどの国家機密に関わる職に就いてなくても、
日々仕事をしていたら、多かれ少なかれ、
これはちょっと法的にアウトじゃないの? 倫理的にダメじゃないの?
って事象にぶちあたることがあると思うんですよ。

そういう時ってどうするのが正解なんだろうね。

なんていうか、そんな場面で自身の損得ぬきにして、
「これは違うんじゃないスか?」って発言できる人間ってすごいな、と。
しかもちゃんと行動にうつして世界に発信したスノーデンすごい。

きっと、スノーデンみたいな人は、
ミルグラム実験(アイヒマン実験)を受けても
服従の心理に影響されずに「私はやらない」って言えるんだと思う。

難しいことはよくわからないけれど、
そういう人になりたいもんです。

王子と踊り子

2017-03-12 | 本と漫画と映画とテレビ
彼(ローレンス・オリヴィエ)は映画スターになりたがってる偉大な役者。あなた(マリリン・モンロー)は女優を目指してる映画スター。

―映画『マリリン 7日間の恋』より


ちょっと前に聴いたラジオ番組の中で、作家の小川洋子さんが
ダフネ・デュ・モーリアの小説『レベッカ』について熱く語ってて。

(まぁ、そのラジオでは毎週、小川さんが
なんらかの文学作品のおもしろさを熱く解説してくれるのだけども)

小説は長くて読むのが億劫なので、
ヒッチコックが監督した映画『レベッカ』を鑑賞。

したら、
主人公の相手役のローレンス・オリヴィエが
めっちゃ男前で、内容そっちのけでくぎづけ。

口髭をたくわえたジュード・ロウっていうか、オーランド・ブルームっていうか。
なんていうんですか、紳士感。



美女を楽しむヒッチコック映画で、まさかのイケメン。
たなぼた。やっぴー! つって。
だてに、ヴィヴィアン・リーのダンナやってねーっつうのな。


となると、
ローレンス・オリヴィエの他の出演作も観なきゃっ…!
てヘンな使命感にかられる訳じゃないですか。

そんなこんなで『王子と踊り子』。



監督:ローレンス・オリヴィエ
原作:テレンス・ラティガン『眠りの森の王子』
出演:マリリン・モンロー、ローレンス・オリヴィエ

1911年の英国を舞台に、ヨーロッパ某国の摂政大公と
アメリカ人女優の恋愛を描いたロマンティック・コメディ。

いや~びっくりした。
時の流れにびっくりした。

1940年に制作された『レベッカ』出演時のオリヴィエは33歳。
対して、1957年制作『王子と踊り子』のオリヴィエは50歳。
オーリーが急にメイクの濃いジョージ・クルーニーになっちゃってて
想像してたオリヴィエと違うー! 期待はずれー! つって。

でもね。

そんなオリヴィエを補ってなお余りある輝きを放ってたのが、マリリン・モンロー。
抜群にかわいかった・・・。

顔は美形なのに、
一挙手一投足が超絶キュートだから、総合してモーレツにかわいい。
もうね、そのかわいらしさに画面から目が離せません。



ホクロも唇も、透けるような白い肌もセクシーで素敵ですが、
アイメイクがすんごいかわいいと思う。
(かわいい以外の語彙力の無さよ・・・)

もともとが舞台劇らしいので、
ストーリーもしっかり普通におもしろい。
ちょっと天然のかわいこちゃん(モンロー)のおかげで、みんな幸せ。
なんだかんだでハッピーハッピーですやん、っていう話。
イチャイチャシーンの前半と後半の対比が好き。

あと、
モンロー演じる踊り子・エルシーの装いがかわいい。

彼女はいろいろ訳あって
3日くらいずっっと同じイブニングドレスを着てるんだけれど
(最終的に皇太后さんにつっこまれている。笑)
シーンによってちょっとずつアレンジが変わるのがいい。
『ローマの休日』のアン王女ばりの着回し術です。



ちなみに。
1957年当時、マリリン・モンローは30歳くらい。
映画『紳士は金髪がお好き』(1953年公開のミュージカル・コメディ)や
『七年目の浮気』(地下鉄の風でスカートがめくれあがるあれ)の大ヒットで
すでにハリウッドのトップスター。
プライベートではメジャーリーガーのジョー・ディマジオと離婚して、
劇作家のアーサー・ミラーと結婚1年目の新婚さん。

エロいドレスで色気たっぷりに
「ハッピッ、ヴァースデー、ミスター・プレジデンッ」って歌ってたのは
この5年後の1962年(亡くなる2カ月半前)。美人薄明すな。