これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、
人類にとっては偉大な飛躍である。
―ニール・アームストロング
『オデッセイ』(2015年、米)
火星の探査任務中に、一人置き去りにされた宇宙飛行士が
自身の生存をかけ、火星で孤独に奮闘する姿と、
彼を救いだそうとするNASAや周囲の努力を描いたSF映画。
監督:リドリー・スコット
原作:アンディ・ウィアー『The Martian(火星の人)』(2011年出版)
出演:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ
ヒマだったら観てあげてもいいよ。(上から!)と思っていた
『オデッセイ』と『ザ・ウォーク』が
早稲田松竹で2本立て上映されるというので、
これはもう神の思し召し…! と勝手に何かを感じて観に行く。(気持ち悪いね)
どうでもいいけど、名画座で上映される映画の特集や
2本立ての組み合わせを考えるのって楽しそうだわ。
気分はまるで、クラブDJ。美術館のキュレーター。
で、今回のテーマは、
「リドリー・スコット×ロバート・ゼメキス ~ミッション・インポッシブルな男たち~」
確かにどちらの映画の主人公も
ミッション・インポッシブルな男だった…!
そして、両者にフワリと漂うは1970年代の風。
そもそも、『ザ・ウォーク』は時代設定が70年代。
1974年8月7日、完成間近のワールドトレードセンター(911のやつやね)の上で
仏の大道芸人が命綱なしに綱渡りをしたという実際の出来事を映画化したもの。
ファッションも小道具も70年代だし、
登場人物がウォーターゲート事件のニクソンの悪口を言うのも当時ならでは。
(ニクソンはこの翌日に大統領辞任を発表)
一方、『オデッセイ』は、
人類が火星の有人探査をしているので、
2016年現在よりはるか未来の物語。 ・・・のはず。
だけども、なんだか70年代。
それは、、効果的に流れる1970年代のディスコ音楽のせいか、
デヴィッド・ボウイの『スターマン』が時期的にも映像的にもハマりまくっているからか
世界中が固唾を飲んで主人公を見守る様子がアポロ11号の月面着陸を彷彿させるからか、
地球でがんばるNASAサイドの様子が映画『アポロ13』っぽいからか・・・
(アポロ11・13号を含む一連のアポロ計画は1961~72年に実施)
火星で孤独に、それでも地球の科学の力を信じてたくましく生きる主人公が、
70年代に帰ってきた残留日本兵と重なるからか・・・(え? 飛躍しすぎ?)
なんつうか、未来の話なのに泥臭いのね。
無機なのに有機的。(ジャガイモのせいかも)
あと、絶望的状況なのにツンデレで笑いを忘れない登場人物たちがいい。
主人公が地球に子供やパートナーを残してきていないのもいい。
1969年のアポロ11号月面着陸の際は、そのニュースすら自国民に報道しなかった中国が
(冷戦中のソ連ですら報道したのに!)、火星からの救出にはやたらと積極的なのもいい。
宇宙映画って概念や哲学がからんできてバカな私は苦手なのだけれど、
『オデッセイ』は、なんだかとってもわかり易かった。
いや、難しい化学や科学の話をガンガンしてはいるんだけれど、
その辺は考えずとも感じられるのです。フィール!
デヴィッド・ボウイの息子の映画『月に囚われた男』とほのかに似た香りもする。
てか、リドリー・スコットって78歳なのね。
なんてステキな78歳でしょう。ホントに地球人なのか・・・?
エイリアンじゃないよね? レプリカント?
まぁなんでもいいけど、おもしろい映画だった~。こういうの好き。感服。