見ないフリ

一時的な対応策にしかならない現実逃避をずっとするブログ

オデッセイ

2016-06-26 | 本と漫画と映画とテレビ
これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、
人類にとっては偉大な飛躍である。

―ニール・アームストロング




『オデッセイ』(2015年、米)
火星の探査任務中に、一人置き去りにされた宇宙飛行士が
自身の生存をかけ、火星で孤独に奮闘する姿と、
彼を救いだそうとするNASAや周囲の努力を描いたSF映画。

監督:リドリー・スコット
原作:アンディ・ウィアー『The Martian(火星の人)』(2011年出版)
出演:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ


ヒマだったら観てあげてもいいよ。(上から!)と思っていた
『オデッセイ』と『ザ・ウォーク』が
早稲田松竹で2本立て上映されるというので、
これはもう神の思し召し…! と勝手に何かを感じて観に行く。(気持ち悪いね)

どうでもいいけど、名画座で上映される映画の特集や
2本立ての組み合わせを考えるのって楽しそうだわ。
気分はまるで、クラブDJ。美術館のキュレーター。

で、今回のテーマは、
「リドリー・スコット×ロバート・ゼメキス ~ミッション・インポッシブルな男たち~」

 

確かにどちらの映画の主人公も
ミッション・インポッシブルな男だった…!
そして、両者にフワリと漂うは1970年代の風。

そもそも、『ザ・ウォーク』は時代設定が70年代。
1974年8月7日、完成間近のワールドトレードセンター(911のやつやね)の上で
仏の大道芸人が命綱なしに綱渡りをしたという実際の出来事を映画化したもの。

ファッションも小道具も70年代だし、
登場人物がウォーターゲート事件のニクソンの悪口を言うのも当時ならでは。
(ニクソンはこの翌日に大統領辞任を発表)


一方、『オデッセイ』は、
人類が火星の有人探査をしているので、
2016年現在よりはるか未来の物語。 ・・・のはず。

だけども、なんだか70年代。

それは、、効果的に流れる1970年代のディスコ音楽のせいか、
デヴィッド・ボウイの『スターマン』が時期的にも映像的にもハマりまくっているからか
世界中が固唾を飲んで主人公を見守る様子がアポロ11号の月面着陸を彷彿させるからか、
地球でがんばるNASAサイドの様子が映画『アポロ13』っぽいからか・・・
(アポロ11・13号を含む一連のアポロ計画は1961~72年に実施)
火星で孤独に、それでも地球の科学の力を信じてたくましく生きる主人公が、
70年代に帰ってきた残留日本兵と重なるからか・・・(え? 飛躍しすぎ?)

なんつうか、未来の話なのに泥臭いのね。
無機なのに有機的。(ジャガイモのせいかも)

あと、絶望的状況なのにツンデレで笑いを忘れない登場人物たちがいい。
主人公が地球に子供やパートナーを残してきていないのもいい。
1969年のアポロ11号月面着陸の際は、そのニュースすら自国民に報道しなかった中国が
(冷戦中のソ連ですら報道したのに!)、火星からの救出にはやたらと積極的なのもいい。

宇宙映画って概念や哲学がからんできてバカな私は苦手なのだけれど、
『オデッセイ』は、なんだかとってもわかり易かった。
いや、難しい化学や科学の話をガンガンしてはいるんだけれど、
その辺は考えずとも感じられるのです。フィール!

デヴィッド・ボウイの息子の映画『月に囚われた男』とほのかに似た香りもする。


てか、リドリー・スコットって78歳なのね。
なんてステキな78歳でしょう。ホントに地球人なのか・・・?
エイリアンじゃないよね? レプリカント?
まぁなんでもいいけど、おもしろい映画だった~。こういうの好き。感服。

ズートピア

2016-06-05 | 本と漫画と映画とテレビ
沈没間際の豪華客船。救命ボートが足りず、
船員は各国の乗客に対して、海に飛び込むよう説得する。

アメリカ人には「飛び込めばヒーローになれますよ」
ロシア人には「海にウォッカのビンが流れていますよ」
イギリス人には「紳士はこういう時、海に飛び込むものです」
イタリア人には「海で美女が泳いでいますよ」
フランス人には「決して海には飛び込まないでください」
ドイツ人には「規則ですので海に飛び込んでください」
中国人には「おいしい食材(魚)が泳いでますよ」
日本人には「皆さんもう飛び込みましたよ」





『ズートピア』
2016年、ディズニー製作の
3Dコンピュータアニメーション、バディ・アクション映画。

「面白い!」「深い!」「みんな観てる!」
なんて、周囲の評判がやたらよいので
気になって観に行く。


いや~、クッソ面白かった。

過去のディズニーアニメの小ネタがてんこ盛り! だったのらしいけれど、
ディズニー作品に疎いわたしにはさっぱり・・・
深さについても・・・チョットよくわからなかった。。。深いの?

それでも、序盤の電車と駅のシーンだけでテンションは上がりまくり!

なにより、
登場人物たちのかわいいことかわいいこと。
みんな、フワッフワのモッフモフ。

まず、
主人公のウサギ(ジュディ)の両親は、なかなかのシルバニアファミリー。
(1980~90年代前半頃のシルバニア)


もう一人の主人公であるキツネ(ニック)は、雰囲気が
ウェス・アンダーソンの『ファンタスティック Mr. FOX』。


実際は、ディズニーの『ロビンフッド』や
『ジャングルブック』なんかを下敷きにして制作されているらしい。



副市長さんの日本語吹き替えは、
あのかすれ声&個性的ファッションから
ぜひ、篠原ともえに担ってほしいところ。


そして、誰よりかわいいのが
免許センターで働くナマケモノのフラッシュ。


なんでも、職員がみんなナマケモノという設定は、
アメリカの免許センター(DMV)が、
すんごい待たされるという事実を皮肉っているからなんだとか。
そんなこと、1ミリも知らなかったけれど、
免許センターのシーンは面白すぎる。かわいさに笑いがとまりません。

赤ちゃん役のフェネックギツネもかわいいし、
(ゾウの着ぐるみがやばい。モンスターズインクのブーを彷彿させるかわいさ)
受付のチーターもかわいい。
つられて遠吠えするオオカミ達も、超絶かわいい。
(MAN WITH A MISSION・・・?)



こうやって魅力的な登場人物をいっぱい配置し、
事件の捜査という名目のもと、
主人公のウサギとキツネにいろんな気候のエリアを案内させることで、
映画だけでは終わらせない、スピンオフやキャラクターグッズ、
ランド&シー方面での商売も視野に入れているであろう展開力。脱帽。

よ! 商売上手! 

は~ハマってしまった~。もう、ディズニーの思う壺。
やられたわ~。(単純だな)
ディズニーさん、マジぱないっス。


ストーリーだって
老若男女が楽しめるよう、よく練られている。(上から)
広げた風呂敷もキュッときれいに包んでくれます。
監督・脚本だけでも6~7人いるらしいよ。すごいね。
だから、物語にスキがない! たぶん!


物語序盤、夢いっぱいの主人公・ジュディが
「ズートピアでは自分がなりたいと思えば何にでもなれる! ゾウにだってなれる!」
的なことを目をキラッキラさせて言うのに対して、
キツネのニックは
「ズートピアに来たからって、自分以上のものにはなれない」
と、なかなか耳の痛い言葉を発する。

この辺りのシーンから、
肉食動物と草食動物が共に暮らす巨大都市「ズートピア」は、
自由の国「アメリカ合衆国」の比喩なんだろうなぁと思う。

「バスケットの国アメリカの―― その空気を吸うだけで
僕は高く跳べると思っていたのかなぁ・・・」
つって、漫画『スラムダンク』なかで
谷沢が安西先生に宛てた手紙で語ってたのを思い出します。

自分が動かないと誰もパスをくれない、大都会あるある。


あと、根底のテーマであろう「差別」や「偏見」は
アメリカにかかわらず、どこの国にでもあることなんだろうけども、
ほんと、海のむこうの人たちはそれに対しての意識が高い。
よくも悪くも、最先端。

「ニガー」とかは同じ人種間では使っていいけど、
他者が使うとNGらしい。なんじゃそりゃ。
日本でいうところの「オカマ」とかか?

複雑な歴史的背景もあってか
年齢性別人種・・・いろんなことに神経質な欧米さんに比べ、
血液型診断が大好きな私は、相当劣っているなぁ。と反省するのです。

日本だって何かと敏感。
「障害者」は「障がい者」って・・・ねぇ?

中島らもの言うところの、
「問題は言葉の響きのなかになど存在しない。
それを使う人間の意識の在り方にあるのだ」
っていうか。


しかし、よくよく考えてみると、年齢を重ねるにつれて
自分の中の差別意識や偏見の思考は増大している気がする・・・。
こ、これは恐ろしい。

想像以上に己の心が腐っていたので、
世間から白い目で見られないためにも、
取締りで捕まらないためにも、当面は
「みんなちがってみんないい」
っていう金子みすずの言葉を呪文のように唱えてやり過ごす。