「聾(ろう)文化」とは、聴覚という感覚を持たないことで発生した手話という言語や、視覚と触覚を重視した生活から生まれた文化である。私は、聾者というものは、健聴者とは異なる文化を持った「少数民族」のようなものだと思えるようになったのである。
ー「全国高校生読書体験記コンクール」で文部科学大臣賞(最優秀賞)に選ばれた作品「聾者は障害者か?」より
映画のタイトルを目にした当初は、大島渚の本番がある映画かな?と思ってスルーしていたのだけれど(節子、それは『愛のコリーダ』や…)、オールナイトニッポンゼロでTVプロデューサーの佐久間さんが大絶賛していたので、無性に気になりはじめいそいそと観に行く。(ラジオショーでノブコブの徳井さんも絶賛していた)
『Coda コーダ あいのうた』(2021年 米仏豪合作)
監督:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、マーリー・マトリン
家族の中でただ1人の健聴者である少女とその家族の成長を描いたヒューマンドラマ。2014年製作のフランス映画『エール!』のリメイク。タイトルの「CODA (コーダ)」は、「Children of Deaf Adults= “⽿の聴こえない両親に育てられた⼦ども”」のこと。
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感動&感動。
主人公だけでなく、その家族みんなが前に進む感じがとても爽やかでとてもいい。
しかし、自分に子供がいたら、
いろいろと考えてしまって感動どころではないかもしれない…
感動ついでに、帰宅後Amazonプライムでフランス版の『エール』も観る。
『エール』(2014年 仏)
監督:エリック・ラルティゴ
原作:ビクトリア・ベドス
出演:ルアンヌ・エメラ、カリン・ビアール、フランソワ・ダミアン
フランス版も感動&感動。
フランス版を観てしまうと、アメリカ版は1つずつの出来事をやり過ぎなくらい粒立たせているのがよくわかる。下ネタから最後の演出まで油こってり。
ついでに、アメリカ版はタイトルに「コーダ(CODA:Children of Deaf Adults=⽿の聴こえない両親に育てられた⼦ども)」と付いているだけあって、その部分もかなり強調されている。というか、フランス版ではあまり描かれていない部分だと思う。
どっちもいい。どっちも感動。
ただ、主人公が最後に歌う歌があるのだけれど、フランス版の曲『Je vole (ジュ・ヴォル:私は飛ぶ)』が良過ぎてもう嗚咽。歌い終わった後に「いい選曲」と声をかけた審査員に握手を求めたい。
アメリカ版で歌われるジョニ・ミッチェルの『青春の光と影』も大号泣だけれど、映画『ラブ・アクチュアリー』大好き人間としては、どうしても夫の浮気に気づいた妻のあのシーンが思い浮かんでしまって…涙。
まぁ時間があれば両方みるよし。
あと、『Coda コーダ あいのうた』に登場する主人公家族を演じた俳優さんはみんな聾者なのだそうで。
これは、監督の「耳の聞こえない人の役があるのに、耳の聞こえない優秀な役者を起用しないというのは考えられなかった」という思いからの配役らしい。
うん、その方が説得力があるし全然問題ない。監督とか制作者側の意思で俳優を起用することには全く文句はない。
ただ、この話を聞いてふと思い出したのが、最近ときどき耳にする「トランスジェンダーの役はトランスジェンダーがするべき」というあれ。
あれどうなの。
そう言うならば逆に、トランスジェンダーの役者はシスジェンダーの役を演じたらだめなのか?トランスジェンダーのチャンスを奪うなとかそういうこと?
ここがよくわからない。
確かに、
ハリウッド映画に登場する日本人役に、他のアジア圏の俳優さんがキャスティングされている時は、えも言われぬ微妙な心持ちになるけども。これに近いのかな?
多様性ムズい…と思う今日このごろ。