見ないフリ

一時的な対応策にしかならない現実逃避をずっとするブログ

プラド美術館 驚異のコレクション

2020-08-18 | 本と漫画と映画とテレビ
芸術は日々の生活で魂にたまったホコリを洗い流してくれる。
ーパブロ・ピカソ


ようやく観賞。
すっごい迫力!たまやー!



『プラド美術館 驚異のコレクション』
監督:ヴァレリア・パリシ
案内人:ジェレミー・アイアンズ

15〜19世紀にかけて歴代のスペイン王室が買い集めた膨大な美術品を収蔵する、スペイン・マドリードにあるプラド美術館。その美術館が2019年11月に開館200周年を迎えたことを記念し、美術館全面協力のもと制作された美術ドキュメンタリー映画。

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今年の3月ごろ映画館で予告を観て、
大画面で映し出される絵画に衝撃を受け
「コレ絶対見に行くー!」と心に決めていたのだけれど、

コロナで公開が延期され、
その間、中野京子さんの『怖い絵』シリーズを読みふけり
ますます観たい欲求は高まり高まり・・・

ただ、高まりが過ぎたのか7月下旬の公開時期になるとその熱は急速にクールダウン。
なんなら定期的に訪れる鬱期に突入し
ホントもう全てにおいてヤル気が出なくて怠惰な日々を過ごしていたわけですけど。

お盆休みだし、今なら映画館の席は確実に両隣誰もいない快適空間だし、
せめて『ラス・メニーナス』だけは見ておきたいよね…!と
鬱の自分をなんとかなだめすかして外へ連れ出す。


学生の頃、美術の図説を授業中に眺めることが好きで。
中でもデュシャンの『泉』とファン・エイクの『アルフィノフィニ夫妻の肖像』を
観ていると胸のドキドキが止まらなかった。
あと、ベラスケスの『ラス・メニーナス』。



もう「ラス・メニーナス」っていう音がかっこいいじゃない。
声に出して言いたくなる「ラス・メニーナス」。
(日本語訳すると「宮廷の侍女たち」という意味で、このタイトルはベラスケス本人が付けたわけではなく後年になって付けられたものらしい)

絵自体も見れば見るほど謎めいていて惹きつけられる。
中央のプリッと愛らしい女の子の隣に立つ
同じくらいの背丈のムスッとした女性の違和感とか。
壁の鏡に小さく映る女の子の両親とか。
その上に飾られているルーベンスとヨルダーンスの絵画とか。
絵を描いているはずの画家が絵の中にいる空間のねじれとか。
心がときめくっていうか。いろいろたまらんのです。

そのたまらない絵を見に行ったのだけれど、
なんていうか…
世界史やスペイン王室についての知識がない私には難しいうえに
かなり散らかった内容の映画だった。

プラド美術館ができるまでのスペイン王室を時代とともに追っていく構成の映画かと思いきや、途中でちょいちょい学芸員たちのお気に入り作品や修復作業風景、今後のプラド美術館の改装案を語る建築家なんかが登場してきて、なんというか脳がとても忙しい。さらに、フラメンコもドン・キホーテもペストマスク加わってスペインのごった煮。

ただ、個々のエピソードはどれも粒立っていて面白いのです。
プラド美術館の開館した当初は、女子供が入室できないヌード絵画ばかりを飾った部屋がありましたよ〜とか
プラドの美術品は他国の有名美術館のような戦利品・略奪品はなくて、ちゃんと謝礼を払って手に入れたものばかりだよ〜とか。
クララ ・ペーテルスの魚の静物画はやたらとかっこいいし、ゴヤの版画集「ロス・カプリチョス」に収められている家系図を見るロバの絵はまるでバンクシーだし。



面白いは面白いのだけれど、如何せんドタバタしている。
ゴヤの「5月3日」の絵もそのエピソードもバカみたいに随所で出てくる。
さっきまでエル・グレコの話をしていたかと思いきや、いきなりベラスケスになって、またエル・グレコに戻ったり。

絵の見せ方にしても、カメラがぜんぜん静止してくれない。
やたらと動くし、やたらと関連映像?が差し込まれる。
絵筆の跡がわかるくらいの近距離で見せてくれるのはいいのだけれど、全体像はじっくり見せてくれない。チラ見せ。加藤茶?ってくらいのちょっとだけ。
収蔵作品が多いから、一点一点ゆっくり解説してられないのかもしれないけれど、それにしてもあんなにカット割りする必要あります?と思う。

お目当ての『ラス・メニーナス』には流石に少し長めに時間が割かれていたものの、それにしてもあっという間。
(あくまでも「プラド美術館」の映画だから当然といえば当然…)

しかし、そんな散らかった映画も終盤には諸々回収され、
最後には「なんかいいもの見たわ〜」と心が洗われるから不思議。

おそらく、内容どうこうより数々の名画が大画面にドーンドーンと
それこそ大きな打ち上げ花火のように映し出されて、頭で考えるより先に心が圧倒されたからなのだと思う。

もしや、「芸術は爆発」ってこういうこと?
恐るべし芸術パワー・・・

なんていうか、大きな花火を見た後の興奮と、大掃除を終えた後のスッキリ感が得られます。
名画のサブリミナルによる魂のデトックス。

そして、美術館サイドの思惑通り?めちゃくちゃプラド美術館へ行ってみたくなるおまけ付き。


あとは、やっぱり多少歴史の知識が必要というわけで、
映画のパンフレットを参考に、歴代スペインの王様と代表的な画家たちをまとめてみたりなんかして(暇人)。

歴代の王様の美的センスとアゴはいい感じで受け継がれていることがよく分かります。
ちなみに、日本は室町〜江戸時代。
麒麟もくるし、ペリーもそろそろ開港を迫りそうな頃。
ボスやブリューゲルの絵画は日本的と思います。