安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ロブ・マドナ I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD

2012-09-09 20:58:57 | ピアノ

先週、飯田市のライブハウスcanvasで、canvasと、しんきん南信州地域研究所の主催で、キャンパセッションが行われました。話題提供、ミニライブ、わいわいがやがや個別トークといった内容で、僕は話題提供に単身赴任している飯田市の印象を話しました。30人ほど集まったのですが、30年ぶりにあった高校の同級生やボブ・ゴードンが好きなジャズファンなどと話ができて、面白い時間を過ごすことができました。その同級生は、ロック好きになっていて、昔は、ピアノ・トリオなどジャズを聴いていたので、驚きました。ヨーロッパのピアノ・トリオです。

ROB MADONA (ロブ・マドナ)
I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD (OMEGA 1976年録音)

 Igotitbadandthataintgoodrobmadna  

オランダのピアニスト、ロブ・マドナのアルバムですが、日本の澤野工房から再発されて、注目された作品です。オランダ原盤は、どういう理由かわかりませんが回収され、ほとんど出回っておらず、テープを買収して発売をしてくれた澤野商会に感謝です。ディスク・ユニオン渋谷店がオランダ原盤をセールに出していましたが、値段は8万円でした。当然、僕のものは再発CDです。

ライナーノートによると、ロブ・マドナは、もともとバップ系の演奏をしていたところ、ビル・エヴァンスの奏法を取り入れて、新しい自己のスタイルを確立した力作だとのことです。演奏全体は、そんな感じですが、エヴァンスほどメリハリをつけず、もっとふわっというか、タッチにしても和音にしても柔かめな響きです。

メンバーは、ロブ・マドナ(p)、Koos Serierse(b)、Erik Ineke(ds)。曲は、スタンダードの「The End of A Love Affaire」、エリントンの「I Got It Bad and That Ain't Good」、サド・ジョーンズ作「Quietude」、ビリー・ストレイホーン作「Upper Manhttan Medical Group」(略して「U.M.M.G」)、ガレスピーの「Con Alma」、コルトレーンの「Like Sonny」、そして、メンバーのロブ・マドナ作「P. J.」と「Let Me Know」、Koos Serierse作「Lima A Princess」の9曲。ジャズオリジナルが目立ちますが、知られた曲が多いです。

最初の曲、「The End Of A Love Affaire」では、マドナ(p)が、右手で「タラララー」と入りますが、タイミング、フレーズがよく、この導入部から最後まで聴きどころが多く、このトラックを気にいりました。「U.M.M.G」では、Serierse(b)のベースがよく伸びる音でソロをとるなど、このべーシストも印象に残ります。「Like Sonny」は、バビッシュさばかりでなく、イントロ、テーマそしてマドナ(p)のソロと洗練されていて、抒情的でもあり、ジョン・コルトレーンの演奏とは随分異なりますが、このヴァージョンも悪くありません。

【PLAT】
しばらく前に訪れたジャズ&アートのカフェPLATです。中は広々としていて、ピアノなど楽器を備え付けてあり、ライブも開催しています。長野県上伊那郡箕輪町にあり、中央道伊北インターから近いので、諏訪市や松本市近辺からも行きやすいのではないでしょうか。ホームページに記事を載せたので、そちらもご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう ジャズ喫茶 PLAT

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 JAZZ&ART CAFE  PLAT 
 所在地:〒399-4601 長野県上伊那郡箕輪町大字中箕輪7925-1
 定休:日曜日
 電話:0265-98-6731
 


ローレンス・マラブル TENORMAN

2012-09-05 23:09:51 | ベース・ドラムス

飯田市とその周辺では、いまちょうどお祭りのシーズンに当たっています。神輿が出て練り歩くのですが、それに必ず付け加わるのが、花火です。このごろ週末の土曜日は、どちらかで花火が上がっていて、先週の土曜日は、愛宕神社のお祭りで、近くで花火が打ち上げられて、マンションまで轟音が伝わってきました。轟音は出さないドラマーです。

LAWRENCE MARABLE (ローレンス・マラブル)
TENORMAN (JAZZ WEST 1956年録音)

 Tenorman_lawrence_marable

ドラマーの中には、わき役に徹した人もいます。その代表としてすぐ頭に浮かぶのは、デイヴ・ベイリーですが、ローレンス・マラブルもその一人です。これは、マラブル唯一のリーダー作であるものの、ジェームス・クレイ(ts)を紹介したもの。マラブルは、80年代にはチャーリー・ヘイデン(b)のカルテット・ウェストに参加するなど、長く西海岸のトップドラマーとして活躍しました。

ハードバップファンに人気がありますが、その主な理由は、ソニー・クラーク(p)が参加していて、3曲のオリジナルを提供しているところにあります。メンバーは、ジェームス・クレイ(ts)、ソニー・クラーク(p)、ジミー・ボンド(b)、ローレンス・マラブル(ds)。クレイは、20歳でダラスから西海岸にやってきたばかりですが、マラブルにプレイを認められて、この録音が実現しました。

曲は、スタンダードの「The Devil and The Deep Blue Sea」(絶体絶命)、「Easy Living」、「Willow Weep For Me」(柳よ泣いておくれ)、「Lover Man」に、ハーブ・ゲラー作「Airtight」、ソニー・クラーク作が3曲で、「Minor Meeting」、「Three Fingers North」と「Marbles」の全8曲。名曲「Minor Meeting」や、ワーデル・グレイ、ビル・パーキンス(ts)に名演がある「Easy Living」の演奏が注目されます。

マラブル(ds)は、ピアノ・ソロのバックではブラシで対応し、テンポの早い「Three Fingers North」では、短いながらソロを決めるなど、柔軟なプレイぶり。クレイ(ts)は、「Easy Living」をはじめ、黒い音色で、同一フレーズの繰り返しなどを行い、グルーヴィー。「Minor Meeting」は、「ソニー・クラーク・トリオ」(Time)で知った曲ですが、上昇と下降を用いたテーマは、マイナー調でもあり、一度聴くと忘れられません。ここでは、テーマはテナーで奏され、クラーク(p)のソロは、後年のニューヨーク時代より明るめ。

【愛宕神社のお祭りの花火】

マンションのベランダから撮影したもの。土曜日にもかかわらず、仕事の関係で、遅く帰宅したので、終了間際でした。両隣では、ベランダで、宴会をやっていてマンション内は賑やかでした。

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ナンシー・ウィルソン BUT BEAUTIFUL

2012-09-02 20:38:54 | ヴォーカル(L~R)

前に買っておいた、村上春樹著「村上ソングズ」を読みました。スタンダードからロックまで29曲を取り上げて、歌詞を日本語に翻訳し、その歌に関するエッセイをつけたものです。和田誠さんが挿絵を多数描いていて、文章ばかりでなく絵も楽しめる面白い本です。その中の一曲、「Happiness is a Thing Called Joe」は有名な歌ですが、いかにも英語らしい表現のタイトルです。本文中で挙げられていた、この曲の代表的なヴァージョンを含むアルバムを聴いてみます。

NANCY WILSON (ナンシー・ウィルソン)
BUT BEAUTIFUL (Capitol 1969年録音)

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ヴォーカルについては、ジャケットの魅力もあって、オリジナルLPの人気がまだまだあるようです。僕は、昔から国内盤のLPやCDを買うことが多く、オリジナルにこだわってきませんでした。それは、国内盤は値段が安いことに加え、ライナーに英語の歌詞が掲載されることが多く、意味が不完全ながらもとれるからです。なにしろ、聴きとる力はありませんから(笑)。

最近では、英語詞を翻訳した本やサイトなどもあって、参考にすることができ、有難いことです。「Happiness is a Thing Called Joe」は、日本語なら、「ジョーがいるから幸福だ」という表現になるのでしょうが、Thingを介在させて、「幸福はジョーそのもの」(村上ソングズでは、「幸福とはジョーという名の男」)という題名は、英語ならではという気がします。村上春樹さんの翻訳はこなれていて、エッセイも歌詞の意味を掘り下げるものでした。

伴奏は、ハンク・ジョーンズ(p)、ジノ・パタチーニ(g)、ロン・カーター(b)、グラディ・テイト(ds)。曲は、「Prelude To A Kiss」、「For Heavens Sake」、「Happiness is a Thing Called Joe」、「I'll Walk Alone」、「Supper Time」、「But Beautiful」、「Oh! Look at Me Now」、「Glad to Be Unhappy」、「In A Sentimental Mood」、「I Thought About You」、「Easy Living」、「Do It Again」、「Darn That Dream」の13曲。CDになって、3曲追加されています。

ナンシー・ウィルソンのバラードを主体としたアルバム。ジャズ・ヴォーカルではありますが、ややR&Bよりの歌唱で、ドラマチックに起伏を付けた歌が目立ちます。例えば「Happiness is A Thing Called Joe」では「Joe Joe」と繰り返し、「Supper Time」も感情が充分込められていて、強い声で歌っています。デューク・エリントン作の2曲「Prelude To A Kiss」と「In A Sentimental Mood」も、雰囲気がよく出ていて、なかなか素晴らしく、繰り返して聴きました。 ハンク・ジョーンズ(p)以下は伴奏に徹していますが、ロン・カーター(b)の歌伴は珍しい。

【村上ソングズ】

表紙と挿絵です。内容については、ホームページの読書の項に紹介と感想を書いたので、時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう 村上ソングズ

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