図書館で、KAWADE道の手帖『田村隆一』20世紀詩人の肖像という本を借りてきました。名詩アンソロジーやインタビュー、彼に関する論考や思い出などが収録されています。その中に掲載されている「四千の日と夜」をはじめとした詩は、力強く、リズミカルで、大げさに言うと、魂を揺さぶられるようでした。詩集は別に持っていますが、このような冊子も詩人を身近に感じられて悪くありません。「Soul(魂) Society」というアルバム。
SAM JONES (サム・ジョーンズ)
THE SOUL SOCIETY (RIVERSIDE 1960年録音)
サム・ジョーンズは長きにわたって活躍したベーシストですが、チェロも演奏し、この初リーダーアルバムでは、8曲中4曲でチェロを使用しています。当時、彼は、キャノンボール・アダレイ・クインテットに属していて、この作品もソウルフルですが、チェロも違和感なく聴こえます。
メンバーが豪華です。二つのグループからなり、ジョーンズがチェロを弾く方は、サム・ジョーンズ(cello)、ナット・アダレイ(cor)、ジミー・ヒース(ts)、チャーリー・デイヴィス(bs)、ボビー・ティモンズ(p)、キーター・ベッツ(b)、ルイ・ヘイズ(ds)。ジョーンズがベースを弾く方は、ナット・アダレイに代わりブルー・ミッチェル(tp)が入り、キーター・ベッツが抜ける以外はチェロのメンバーと同じです。
曲は、メンバーらのオリジナルとスタンダードです。キーター・ベッツ作「Some Kinda Mean」、ジミー・ヒース作「All Memebers」、ナット・アダレイ作「The Old Country」、キャノンボール・アダレイ作「Home」、サム・ジョーンズの自作「Deep Blue Cello」、ボビー・ティモンズ作「So Tired」、スタンダードが2曲で「Just Friends」と「There is No Greater Love」の全8曲。ジャズオリジナルとして有名な「The Old Country」と「So Tired」がまずは気になります。
サム・ジョーンズの「Just Friends」などにおけるソロ、ナット・アダレイの吹く「The Old Country」やボビー・ティモンズの弾く「So Tired」など、ハードバップ、ファンキーの面白いところが聴けます。大型コンボですが、ジミー・ヒースが編曲に手を貸しているようで、アンサンブルも整っています。久しぶりに聴いてみましたが、ティモンズ(p)のピアノの音色・タッチが重くて黒っぽくて、それだけで当時にタイムスリップしそうです。ジャケットもよく、レコードで聴いています。
【田村隆一 20世紀詩人の肖像(河出書房新社刊)】
日本の現代詩は、慣れないと難しいかもしれません。頭韻や脚韻といったものも使われず、短歌や俳句のように定型性もありません。加えて理解には想像力が必要です。その中で、比較的散文に近く、わかりやすいところもある田村隆一の詩は、折に触れて読んできました。彼の書くエッセイも面白い。
リバーサイドの3枚ではこれが一番いいですね。メンバーよし、内容よし、ジャケットよしです。サム・ジョーンズの作曲は「Unit 7」や「Del Sasser」、「Bittersweet」等で高く評価されておりますが、この「Deep Blue Cello」も深みがあります。この曲を聴くたび、アルバムタイトルはこちらの方が良かったのではと思います。
タイトルは、レコード会社が売れ線を狙ったのでしょうか。ライナー・ノートは、キャノンボールが書いていて、もしかしたら彼の提案かもしれません。
「Deep Blue Cello」も、アンサンブルも締まっているし、各人のソロもソウルフルな快演ですね。タイトルにもってきてもよかったのかもしれません。