先日の3連休の前半は、読書や年賀状作成などで落ち着いて過ごし、粟村政明著「ジャズ・レコード・ブック」( 東亜音楽社)も久しぶりに読んでみました。あちこちに線などが引っ張ってあって、学生時代から社会人になってもしばらくは熱心に読んだことを想い出しました。同著の中で、『アーティー・ショウがスローで吹く甘いクラリネットは、テンポの遅いものを苦手としていたベニー・グッドマンを遥かに凌いでいた』という記述が目にとまりました。今夜はアーティー・ショウを。
ARTIE SHAW (アーティー・ショウ)
I CAN'T GET STARTED (Verve 1953年録音)
アーティー・ショウ(1910~2004年、cl)は、スイング時代のクラリネット奏者、バンドリーダーとして有名ですが、1940年代が全盛期なので、現代のジャズファンの関心を惹くことはほとんどないかもしれません。彼には1950年代にも録音があり、このアルバムは、ショウの意外とモダンな演奏に加え、サイドメンに人を得て、面白く聴くことができます。
メンバーは、アーティ・ショウ(cl)、ハンク・ジョーンズ(p)、タル・ファーロウ(g)、トミー・ポッター(b)、アーヴィン・クルーガ―(ds)、ジョー・ローランド(vib)。ハンク・ジョーンズとタル・ファーロウが加わっているのが注目されますが、ジョー・ローランド(vib)のソロもスイングしていて、バラードは別にして、ジャムセッション的な演奏もあります。
曲は、アーティー・ショウのオリジナルとスタンダードです。ショウの自作が、「The Grabtown Grapple」、「Lugubrious」、「Lyric」、「Sunny Side Up」、「When The Quail Come Back to San Quentin」の5曲に、スタンダードが「I've Got A Crush on You」、「Tenderly」、「I Can't Get Started」、「Imagination」で、全8曲。僕としては、まずスタンダード曲に興味をそそられます。
玉手箱的な楽しいアルバム。とりわけ、「The Grabtown Grapple」では、次々と出てくるソロが快調なことに加えて、ジョー・ローランド(vib)のソロのバックでは、「チュニジアの夜」がリフで流れる仕掛けが施され、さらにショウ(cl)は、「べサメ・ムーチョ」や「ジェラシー」を引用していて、思わず微笑んでしまいました。バラードの「Tenderly」は、ジョージ・シアリング・サウンドを聴いているようですが、ショウのクラリネットが甘美。「I Can't Get Started」や「Imagination」でもショウ、ファーロウ(g)、ジョーンズ(p)らの見事なバラードプレイが聴けます。
【粟村政明著「ジャズ・レコード・ブック」(東亜音楽社)】
初版は1968年の発行ですが、僕の持っているのは、1974年に発行された第5刷です。1973年に改訂されミュージシャンも追加されていて、全190人を取り上げています。
目次を見てみると、登場するミュージシャンの守備範囲が広くて驚きます。ヘンリー・レッド・アレン、シドニー・べシェ、チュー・ベリー、バーニー・ビガードといったスイング時代以前の人にもきちんとページを割いています。
目次の続きの一部ですが、ジミー・ブラントン、ローレンス・ブラウン、ハリー・カーネイとエリントン楽団所縁の人が取り上げられています。