(厚労省ホームページより転載)
上の図は、厚労省(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」)が、5月4日に発表した全国でのPCRの検査数とSARS-CoV-2ウィルスの陽性率を表したものである。陽性率に関して7日間隔の周期でリズムがみられる。厳密にはデーターを周期解析にかける必要があるが、ピークは日曜日ごとにみられ、目視的に1週間の周期性は明らかである。
検査実施数(棒グラフ)も日曜日が少ないが、これは検査場が休みになるので当然である。しかし、陽性率が日曜に限って、他の日より高くなる理由はなんだろうか?
次のような可能性を考えてみた。
1)サンプリングの問題
土日は感染リスクの高い人の申し込みが多く、結果として陽性率が高くなる可能性が考えられる。しかし、役所では実際に検体を採取・PCRするのは月曜以降である。日曜分実施されたPCRの申し込みは数日前の週日期間と思える。日曜日には空港での検疫サンプルの割合が増えるが、微々たるものである。
2)検査システムの問題
日曜日は週日とは違った検査場で実施されるので、検査感度が違いそれが反映された可能性がある。しかし、厚生省の発表では日曜は民間も含めて試験数は減るが、一様に減らしており、検査場の偏りはない。
3)集計方法の問題
集計結果が検査当日ではなく、遅れて集計された日の分として登録されている問題がある(これは是正すべき問題点としてニュースで取り上げられている)。日曜日の検査数が少なめになるのはそれで分かるが、陽性率がその日だけ上がるは理解できない。
要するに、いずれの仮説でもすっきりとした説明ができない。奇々怪々? 誰か分かる人がいれば教えていただきたい。
日曜日のピークを無視して、PCR陽性率の推移を上のグラフでザックリみると、2月18-3月2日までは2%程度、3月3日ー24日3.5%、25日ー4月9日は上昇トレンドで3.5%から12%、以降4月10日ー4月29日は下降トレンドで12%から4%となっている。いずれの期間においても陽性率は日曜がピークになっている。大阪府におけるPCR陽性率の日時変化にも同様の傾向がみられる(http://www.covid19-yamanaka.com/cont3/16.html)。
吉村大阪府知事は<大阪モデル>において、検査陽性率が7%未満が1週間続くことを自粛解除の用件の一つにしている。PCR陽性率は、実効再生産数を計算する根拠ともなるので重要な指標である。ただ、PCR陽性率はリスクが”濃縮”されたサンプルを取り扱っているので、実際の市中感染率とは乖離していることを認識しておく必要がある。本来はランダムサンプルで行うべきものである。後者は当然、前者より少なく、おそらく一桁〜二桁小さいものと思える。PCR被検査者のリスク”濃縮率”が時間や地域によって一定であれば、PCR陽性率は市中感染率のある程度の目安になるであろうが、基準が時と場所によって変わり、その保証がないのが問題がある。これに関して厚労省や専門委員会の公式の表明はない。
疫学の専門家が何らかの仮説を出すべきだが、多分データーが不足しており出せないのであろう。この段階ではPCR検査だけでなく抗体検査も必要になってくるが、抗体検査のデータはほとんどない(完全治癒者の身体にはウィルスはすでにいないのでPCRしても意味がなく、抗体検査で罹患履歴を調べるしかない)。
追記
抗体ができると身体から病原菌やウィルスが消滅するケースと、そのどこかに存在するケースがある。たとえばB型肝炎ウィルスは抗体が出現すると排除・治癒されるが、C型肝炎ウィルスの場合は抗体陽性のときにも存在する。抗体ができてもウィルスが表面のタンパク質を変化させて抗体と結合するのを避けるためである。SARS-CoV-2も症状が回復しているのにPCR陽性の患者がいるのはこういった可能性がある(宮地勇人 『感染症の科学』東京大学出版会、2004)
追記 (05/13)
東京都は検査数と陽性率を週単位で報告していたようである。東京都の検査結果が日曜日分にまとめて、その日分として計上されていた可能性がある。東京は陽性率が他府県に比べた高い時期があったので、ピークを形成した可能性が考えられる。現在では東京都のPCR検査はDailyになったそうだ。