アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

ライブで、心を掴む演奏

2016年07月18日 | ピアノ
世界的に有名な演奏家の、傷なき演奏をCDで楽しむのもそれはそれでよいのですが、やはりライブで演奏を聴く楽しみは格別です。

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前に千住真理子さんのバッハ無伴奏を聞きに行きましたが、CDで聞ける演奏の魅力とは何か決定的に違うものがあるように思います。きゅっと胸をしめつけられるような、そんな届き方です。空間をリアルタイムで共有しているからでしょうか。

ただ、こういう場合は大ホールで豆粒みたいな千住さんを見ながら聴く演奏ですから、なんというか生とはいってもかなりの距離感があります。

私がもっと好きなのは、「サロン」といえるような手頃なサイズの部屋で、ほど近くから演奏を聞くことです。

何百人~千人いるのと、十人~数十人いるのとは別物です。空間というより空気を共有する感じでしょうか?

汐留ベヒシュタインサロンのようなところでプロの演奏を聞くもよし、それから練習会などで聞き合うときは別にプロほどうまくはなくても(^^;; 心をつかまれることは多々あります。


ねじめ正一著「ぼくらの言葉塾」という本を読んでいたら、詩の朗読の話が出てきました。

詩は、あらかじめ書かれている、もう文字になって固定されているものですが(その点、ピアノ演奏でいえば楽譜みたいなもんです)、それを肉声で再現し(まぁ演奏ですね)、ライブで聴くとなると違う魅力が生まれるもののようです。

ねじめさんは、初めて朗読会なるもので詩の朗読を聞いたときは、そのあまりにも「思い入れたっぷり」で「人に聴かせるというより自分でうっとり」している感じに辟易としてしまい、朗読に悪い印象を持ちました。

ところが、詩人の伊藤比呂美さんの朗読を聞いたら、「ほかの人とは全然違っていました」。

小さくても澄んだ声で、声の小ささが会場に合っています。そしてまた声の質が、詩の内容とよく合っていて、無理な力みもなく、淡々と進んでいきます。会場はしんとして、朗読にぴたりと支配されていました。

「印刷された活字で読む以上に伊藤さんの詩は立っていました。言葉が声によってくっきりと立ち上がったのです。私は伊藤さんの声に、言葉に、心臓をぐいと掴まれた感じがしました。」

その朗読を聞いたあと、ねじめさんも自分の詩を朗読したのですが、うまく読もうとか感動させようとかいうよりも、自分の気持ちのまま読んでみたところ、いろいろつっかえたり、わからなくなったり、早口すぎたり、問題点は多々あったんだけれども少し「言葉が届いた」実感があったそうです。

詩は朗読しなくても読むだけで意味はわかるはずなのですが、朗読によって「届く言葉」というのは、意味だけではなくて、言葉の持っているエネルギーそのものだったりするようです(オーラ?)。

その後の朗読会で、ねじめさんが見た(聞いた)パフォーマーは様々。

「達者は達者なのですが、達者さの後ろから下心がチラチラ覗いているのです。あるいは詩であることにこだわりすぎています」…こういう朗読者だとお客さんもあんまり満足できなくて

「お客に言葉を届かせようという意識がはっきりとありました。意識だけでなく、言葉そのものもズレていて、メッセージとパワーの両方があります。途中で言葉を言い間違えましたが、かえって人柄が出ていて好感を持ちました。」…お客さんも前のめりになって聞いています。

そうした経験を経て、ねじめさんは朗読(する方)にのめり込んでいきます。すぐ目の前にお客さんがいるのでついビビッてしまいますが、ビビるとすぐ声に出てしまいます。実力以上のものを伝えようとして力むと、これまたすぐにバレます。声の中にはその人そのものが棲んでいるので、変に野心的にならず、自分のリズムで読むのがよいようです。

何回も何回も声に出して読むうちに、ついに自分の体にぴったりくる読み方を見つけたときはとてもうれしくて、「詩の中から飛び出せた自分を感じる瞬間です」。最初は、「詩の中から飛び出す」ためにパワフルな早口で読む感じだったのが、だんだん慣れてきたら、声を小さくしたり詩の内容を考えてものすごくゆっくり読んだりもしているそうです。それで客席に反応があったり、聞いた人に「ねじめさん、成熟したね」といってもらったりすると、「言葉を生き生き届けられた」ことがほんとうにうれしいのです。


ピアノに置き換えると、作ったようにピタリとはまる、ほとんど相似形の話だと思います。誰かの演奏が心に届き、自分の演奏が誰かの心に届く、そのことが演奏が成熟していくための糧になるのです。それが実感しやすいのは「小さめの箱」かなと思います。

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コメント (2)
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