出雲伝説7/8の殺人 (光文社文庫) 価格:¥ 620(税込) 発売日:1988-04 |
図書館で有栖川有栖氏のエッセイ集『鏡の向こうに落ちてみよう』を借りてきました。
短いエッセイがたくさん入っていて、その中に『「私の愛する本格ミステリ」ベスト3』という一文がありまして。
その中でベスト3の1つに挙げていたのがこの、『出雲伝説7/8の殺人』(島田荘司 著)。
私も大好きな作品なので嬉しくなってしまった。(それに、島田荘司氏の作品の中ではマイナーな方なのでは?)
有栖川氏は、『殺人計画の緻密さ、手掛かりのスマートさ、読後も残る異様な味わい。いずれも申し分なく、「この作者だから書けた」と感じさせる』と的確に短く紹介しています。
私は、作品そのものも印象深いのですが、島田氏がエッセイで書いていたエピソードが忘れがたくて。
島田氏は、この作品のトリックが実行可能かどうか、実際に電車に乗ってたしかめたそうです。(あ、トラベルミステリー、というか、電車が重要なアイテムなのです)
ところが、電車を乗り継がなければならないのに、遅れたそうなのですよ電車が!日本の電車の発着は正確無比ですから、島田氏ならずとも驚きますよね。
島田氏はじりじりしながら、『くそっ!俺の完全犯罪が!』と本気で憤ったそうです。
ようやく電車がついて(すでに彼の完全犯罪は崩壊していた……)大幅に遅れた理由を尋ねたら「雪でね」という答えが返ってきたので、冬の設定だったものを4月に変えた、とあったと思います。
それだけのことをした説得力があって、読んだのはかれこれ10年以上前ですが、今も印象は鮮やかです。