あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

絵描きの眼力。

2010-11-23 00:24:14 | 本(エッセイ・ノンフィクション他)

前回の記事で、江戸時代の登場人物がどうして猫の、そして他の動物の水の飲み方の違いを知っていたのかな、と書きましたけれど、でも半分は、意外ではない気持ちもあります。

それは、ドガのエピソードのせい。

今、まだ横浜の美術館で《ドガ展》開催中かと思いますが、そこでの目玉は『エトワール』。バレリーナの一瞬の跳躍を描いた一枚ですよね。

でも、彼にはたしか、疾走する馬を描いた一枚もあったと思います。

そして、こんなエピソードがあるのです。

競馬場行きの電車の中で、ドガは数人の男のグループと話をした。

賭けに興味がない、という彼に、男たちは不思議がったり呆れたりして、「じゃあ、競馬場に行って何をするんだい」と聞いた。

するとドガは含みのある笑い方をし、「私が何をしに行くかはわからないだろうな」と謎めいたことを言う。

さては警察の旦那かと、後ろめたいことのある男たちは途中で汽車を降りてしまった。

でも実際は、ドガは馬の疾走する脚を描きに行ったのです。

何たる動体視力!まさに高速カメラなみです。

世界史こぼれ話 1 (角川文庫)
価格:¥ 275(税込)
発売日:1973

このエピソードに出会ったのはこの本。(の、1~4巻のいずれか)

絵描きの眼ってすごいんだなぁ、と思った逸話でした。

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猫と虎。

2010-11-23 00:05:15 | 本(ミステリ・アンソロジー、その他)

最近新聞で、猫の優雅な水の飲み方についての記事を読みました。

犬はガブガブと飲むけれど、猫はちょっと舌の先を水につけて、すばやく舌を引っ込める。

そうして水柱が立ったところをパクッと飲むのだと。

それを知って、連想したのがこの本。

砂絵くずし―なめくじ長屋捕物さわぎ傑作選 (中公文庫 つ 7-4)
価格:¥ 357(税込)
発売日:1979-01

都筑道夫氏の、時代ミステリー短編集です。江戸時代の下町を舞台に、大道芸人たちが事件解決に活躍する。

探偵役は、“砂絵のセンセー”こと、色とりどりの砂で路上に絵を描く芸人。元は武士だった、とのうわさもある謎めいた人物。

このセンセーが、様々な謎を論理的にすっぱり解くわけですが、私が連想した一編は、人喰い虎の話。

それも、屏風に描かれた虎が、その絵を描いた絵師を喰い殺した、という不可解な事件。

あんまり書くとネタを割ってしまうのですが、その謎ときに、ちょっと猫の水の飲み方がかかわっています。

これを読んだのはもう20年も前ですが、鮮やかに思い出しました。

この短編シリーズは、『くらやみ砂絵』とか『ちみどろ砂絵』とかのタイトルで数冊のシリーズになっているのですが、その中からえりすぐったこの短編集はおすすめです。

時代小説で、もののけが起こしたような不可解な事件が出てくるけれど、それをきちんと論理的に解くのがミソ。

でも、ひとつ気になりました。最近高速撮影でわかったことのあらましが、どうして砂絵のセンセーたちには分かっていたのかな……

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