あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

世界がひらけた。

2010-08-15 00:32:55 | 映画

もしかするとこのブログのなかでも以前触れたのかもしれませんが、私は高校生の頃、美術部と漫研を掛持ちしておりました。

そしてその高校の3年間と、専門学校の2年間は、自分でも漫画を描いたのです。

けれどそれは私にとって、最初は非常に困難なことでした。

もともと、漫研の活動紹介(新入生勧誘)には、中学からの同級生に強引に引っ張られていったのです。最初はそれほど興味がなかった。

けれど、その紹介の場で初代の部長である3年生の先輩と、2代目の部長になる2年生の先輩が掛け合い漫才、もといユニークなトークをしていたので、つい、面白そう、と思ってしまった。(まさか自分が3代目部長になるとは思わなかった)

けれどもちろん、漫研と言ってもとくに漫画を研究するわけではないわけです。日本のマンガの源流は鳥獣戯画や北斎漫画だとか、二次元的だった漫画に映画的手法をもちこんだのは手塚治虫氏の『新宝島』だとか女子高生が語りあったりするのではもちろんない。

たいていの子が、自分で漫画を描くわけです。私も描けと言われた。でも、どうしていいか分からないのです。

漫画を、描く、という視点から見たことがなかったし、コマの割り方も分からない。自然、私のコマ割りは四角いばかりの単調なもので、バストアップと呼ばれる胸から上の構図ばかり。たまに思いついたようにアップになったり、ロングになったりしますが、そこに自分なりの考えはなかった。適当にやっていただけなのです。

これではダメだということは自分で分かりました。けれど、どうすればよくなるのかは分からない。そんなとき、気まぐれで買ったのがこの本でした。

映画に学ぶビデオ術〈1 基本カメラ・ワーク編〉
価格:¥ 1,529(税込)
発売日:1991-12

役立てよう、という気持ちではありませんでした。だいたい、これはビデオの作り方の本であり、漫画の描き方の本じゃないわけですから。なんとなく、買ったのです。

でも、この本で様々な映画監督のカメラワークを見ているうちに、気づいたのです。いままで、私は漫画を、小説に挿絵がついたもののようにとらえていた。でも本当は、漫画は小説より映画に近い。コマ割りは、カメラワークなんだ!

それが分かったときは、まさに、目からうろこが落ちたような気がしました。今まで構図をどうしていいか分からなかったのが、ふいに腑に落ちたのです。

主人公の内面に迫りたいなら、カメラは下だ。けれど、突き放したいのなら、カメラは上、神の視点だ。

目の前がひらけたような気がしました。そうして、それから自分が少しづつ上達していくのが、心から嬉しかったのを覚えています。

思えば、私は上達していくその上り坂の気分が、何より好きなのでした。今、ちょっと料理に凝っていますが、それもそう。少しずつだけど、上手くなっていくのが楽しい。

そうして趣味程度ですが、今は物語を書いたりしています。かつては、同じように少しずつ上達していくのに、高揚したものでした。

でも今、ちょっと壁に突き当たっているのです。でも思えば、私は壁を破るまでは、打ち込んだことはなかった。

今、少女の頃のあの世界がひらけた幸福感を追想しつつ、壁を破りたい、と思っているところなのです。

コメント
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