あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

小さきものにときめく。

2010-08-09 11:15:06 | アニメ・コミック・ゲーム
床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉 (岩波少年文庫) 床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉 (岩波少年文庫)
価格:¥ 714(税込)
発売日:2000-09

前回の記事は、『借りぐらしのアリエッティ』の感想・シリアス編だったので、今回はミーハー編で。

劇場には母と観に行きました。

母はもともとジブリのアニメが好きで、近所の仲の良い奥さんと、『千と千尋の神隠し』に行ったこともあります。

でもそのときに、まだ観ていない私に、「ハクって男の子が出てきてね、綺麗な男の子。それがね……」と、止める間もなくオチまで語ってしまい、私はちと怒ったことがありました。

(母は物語のオチを語ってはいけない、ましてやミステリやサスペンスの犯人を先に言ってはいけない、ということをいまいち理解できないタイプなのです)

そのお返しをしたわけではないのですが、私は母に、事前に何も教えませんでした。

母はだから、ジブリの新作アニメ、という知識しかなく、どんな話かは全く知らずにいたそうです。

あとで言っていました。「紫蘇の穂を背負ってささっと動くものを見たとき、なんだろう、って思ったんだよ。小さい人だなんて、思いもしなかったから」

なるほど、母は作中の少年と同じ驚きを味わったんだな、羨ましいなと思ったけれど、母にしてみれば、教えてもらった方が良かったのかもしれない

ともかく、観た後、母は烏が憎たらしかったとか猫の声が気に入らないとか彼女らしいシンプル&ストレートな意見を言っていたのですが、ふたりで共通していたお気に入りポイントは、小人たちの使う道具や、ドールハウスの小物の可愛さ!

もともと、ミニチュアが私は非常に好きなのです。ミニチュアフードの本や、ドールハウスの本も持っている。小さなティーセットなんて、見ただけでキュンとする。アリエッティのお母さんの気持ちが分かります。

枕草子を少女の時に読んで、“小さきものはみなうつくし”という言葉に共感した私は、人形そのものは苦手だけれど、精巧なドールハウスは憧れのアイテムなのです。

でも、実際に観た子どもさんは、アリエッティに感情移入するから、彼女からみた様々なものの巨大さこそ、心を動かされたかもしれない。

私もそんな目で観たかったな。ちょっと残念。

でも、母に最後に、「どうだった?」と聞くと、にっこりして「面白かった!」と言っていたので、まずは満足でした。

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胸のなかの灯火

2010-08-09 00:12:34 | アニメ・コミック・ゲーム

先月のことになるが、ジブリの新作映画『借りぐらしのアリエッティ』を観てきた。

観終わって連想したのは、過去のジブリ作品、『もののけ姫』だった。

あの作品のラストを観たとき、自然の領域で生きるサンと、人間の側で生きるアシタカが“別々に暮そう”と言ったので、これが、宮崎駿氏の結論なのかな、と少し淋しく思ったのを覚えている。

人間と、自然の完全な共生は不可能なのだと。

今回の映画も、アリエッティは自然(人間が破壊するもの全般?)を象徴するものであり、人間の少年と触れ合いながら結局、その出会いが小さき人たちの生活の破壊につながってしまうのだから、やはり同じ結論なのだろうか、と思った。

(事前予告でも出てきたので書いてしまうが)少年翔は、“君たちは滅びゆく種族なんだ”と残酷な言葉をアリエッティに投げかける。

けれどすぐ謝って、“本当は死ぬのは自分の方なのだ”ともいう。

そうなのだ。翔が死に寄り添って生きているように、本当は人間も、滅びゆく種族なのだ。

故伊丹十三氏が以前対談の中で言っていた。“古代の人が作ったような芸術作品を、現代の人間は創れない。人類は進化の途上にいるのではなく、ゆるやかに退化しているのだ”と。

そんな言葉も思い出し、少しもの悲しい、寂しい映画だと思った。

けれど、何日か経って、もう一度考え直してみて、それだけではない、と思った。

最後に、翔はアリエッティに、ある言葉を言う。

それが、人間が失くしてはいけない大切なものを象徴しているのではないか、と思った。

誰かが、“サンタクロースは現代にたったひとつ生き残った魔法的存在”と言ったが、アリエッティたちもそうなのだ。人間が失くしてはいけない、大切な何か。

それは微かだけれどまだ、人間の胸の中で、小さな明るい炎のように燃えている、と思う。

余談だが、映画の中で心に残ったモチーフはもうひとつある。

ドールハウスだ。小人たちの贈り物として作られ、けれど結局、住む者のいない夢の家。

でも、ドールハウス愛好家が言っていた。“本当のドールハウスは、人形は存在しないものだ”と。

完璧すぎるその美しい家に住めるのは、追憶だけなのだ。

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