父は92歳と思えないくらい元気で、
私たちが炊事や掃除や買い物を手伝うくらいで、自分の身の回りのことは一人でしてくれる。
それでも92歳の高齢であることは、事実である。
もしもの時のことなど考えたくはないが、いずれ、それは現実として迎えなければならないだろう。
最近、エンディングノートと言うのが売られているそうで、妹が買ってきた。
自分の最後の迎え方や、伝えて置きたい事を、書き残して置くノートだ。
私たち子供も、父のすべてを知っている訳では無い。
知らないことも多い。
聞いて置かなければならない事も、沢山ある。
エンディングノートには、友人や家族へのメッセージを書き残して置くページもあるが、
もっとシビアな内容もある。
介護や治療 通夜や葬儀 埋葬やお墓などの希望。
貯金や年金 不動産や保険などの財産の記録。
親族や友人の連絡先リスト。
等を具体的に記入するようになっている。
残された者が困らないように、記入して置いてもらう事は必要なのだろうが、
親子で有っても、なかなか聞きづらい事だ。
まだ元気だから、明日にしよう。明日にしよう・・・と、口に出せずに日が過ぎていく。
父に話す前の予行練習と思って目を通しているうちに、
自分のエンディングを考え始めていた。
私も、エンディングを考えるのに、それほど早いと言え無い歳になっている。
介護は誰に?
介護施設に入りたいが、その費用はどうする?
葬儀費用は残せるだろうか?
葬儀も墓も無くてもいいか?
生まれて来る時は、準備して待っててくれるが、死ぬ時は自分で準備しないといけないようだ。
子供に、迷惑を掛けたくないと思えば、
生きて行くのも大変だが、死んで行くのも大変だ。