特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼 @東京国立博物館
10月22日に東京国立博物館で開催されていた「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」に行ってきました。陶磁器には全く素人で、伊万里は、佐賀県立九州陶磁文化館、京焼は仁清の色絵雉香炉を石川県立美術館を鑑賞したことがある程度ですが、いづつやさんの「200%満足」にまったく同感の素晴らしい特別展でした。というよりも、素人の私には、華麗なる伊万里、雅の京焼がよく勉強できた展覧会でした。
最初のコーナは、「磁器誕生 -初期伊万里」。初期伊万里は、朝鮮半島の技術で中国陶磁の様式を融合することで生まれた、と。中国青花(せいか)の意匠(17世紀の景徳鎮窯 の青花山水人物図皿が展示されていた)を目指していたとのこと。
重文「染付花卉文徳利」(1610~30年代 静岡・MOA美術館蔵)。初期伊万里で一番の秀逸と感じたのはこの作品。肩の如意頭文、胴に花卉文(菊、樹木、蔓草、草花)、筆致、発色も相まって素晴らしい作品。
「染付吹墨月兎図皿」。ポスターにもなっていた、月見を連想させる作品。空白を生かした兎のデザインが染付吹墨の技法と相俟って可愛らしい作品。
しかし、まだまだ、初期伊万里では、トンド形式(ここでイタリア語をつかうこともないですが)の空間をどう描いていいのか慣れていない様子。重文の「染付山水図大鉢」(1630~40年代 奈良・大和文華館蔵 )は、遠景、中景、近景がそれぞれに置かれており、との説明、また、「染付鳳凰図大皿」(1630~40年代 個人蔵)は、 鳳凰が皿を飛び出さんばかり、との説明でしたが、両者ともちょっとピンときません。冒頭で秀逸とした、重文「染付花卉文徳利」では、縦長の空間に草花を描くという構図のため、無理なく草花を描くことに成功しているのかも知れません。
「磁器に彩りを -伊万里・古九谷様式」のコーナでは五彩手、青手、祥(しょんずい)瑞手という様式を学ぶ。
「色絵祥瑞文瓢形徳利」( 伊万里・古九谷様式 1対 1650~60年代 東京国立博物館蔵 )。赤彩の毘沙門亀甲も交互の草花文も、いい感じです。
でも、このコーナはまだ技術的にはもう一歩と感じました。
二階に上がって、「世界へ-伊万里・柿右衛門様式」。日本の磁器がはじめて輸出が行われたのは、カンボジア(バタビア)向けで1647年のこと。1656年の清朝の海禁令によって中国陶磁の輸入の道をたたれたオランダ東インド会社が、磁器の供給を伊万里に求めて、輸出が盛んになった。その以降、欧州向けの意匠として、中国の文様のコピーをし、改良を重ね、柿右衛門様式が生まれた。そんな歴史があったのかと初めて知りました。
重文 「色絵花卉文有蓋八角壺」(伊万里・柿右衛門様式 1670~90年代 東京・出光美術館蔵)は、柿右衛門様式にしては珍しく大型の八角壺。乳発色の地と赤の発色がが目を引きます。
「色絵鳳凰草花文蓋物」( 伊万里・柿右衛門様式 1合 1670~90年代 栃木・栗田美術館蔵 )。輸出品。欧州好みの、蓋と取っ手の金縁がお洒落。
「世界へ、そして国内へ -金襴手」輸出品は兎も角、国内向けは圧巻。元禄文化の豪華さとはこのことをいうのでしょう。
「色絵松帆掛船文皿」(伊万里 1枚 元禄6年(1693) 個人蔵)、小品ですが、よく見れば、赤、緑、金の文様が美しい。「元禄柿」の中でも早期の作品。
「色絵赤玉雲龍文鉢」(伊万里 1口 1690~1720年代 個人蔵)赤玉とよばれ「太明万暦年製」の銘。金襴手の中で最高峰の作品とのこと。正確で精緻な文様、赤と金の色合い、豪華絢爛です。龍の顔もいいです。
「色絵寿字龍鳳文独楽鉢」(伊万里 1口 1690~1720年代 個人蔵)
「色絵荒磯文鉢」(伊万里 1口 1690~1720年代 個人蔵)赤と金に加え、黄緑の色合いが美しい。
この3点は、贅を究めた作品。豪華絢爛。個人蔵とあるのは、由緒正しい武家の方が所蔵されていると拝察。東京国立博物館の特別展だからで出品された作品では?
「極められた洗練 -鍋島 」。伊万里市の大川内を訪れたときに、鍋島は櫛高台の染付けが典型とは教えていただいていたが、今回、鍋島とは意匠であると得心。
「色絵輪繋文三足大皿」(鍋島 1枚 18世紀 個人蔵)。この意匠、いまでも使われている意匠。鍋島で発明されたのですね。
「青磁染付水車文皿」(鍋島 1枚 17~18世紀 福岡・田中丸コレクション)
「色絵蒲公英図皿」(鍋島 1枚 18世紀 個人蔵)、「色絵組紐文皿」(鍋島 1枚 18世紀 奈良・大和文華館蔵)
と意匠で勝負といった作品が並びます。
「染付雪景山水図大皿」(鍋島 1枚 18世紀 東京国立博物館蔵)は雪景色が優雅。
ここから、雅の京焼。「形と意匠 -仁清」。
重文 「色絵吉野山図茶壺」( 仁清 1口 17世紀 東京・静嘉堂文庫美術館蔵)、重文 「色絵月梅図茶壺」( 仁清 1口 17世紀 東京国立博物館蔵 )と、桜と梅が並べて展示されます。後者は、梅を眺めれば月は拝めず、月を眺めれば梅は愛でれない、という不思議な構図。上から眺めれば、両方愛でることができるというので、写真がありました。
「モノトーンの中にみる仁清の洗練」として4点。
「白釉輪花水指」(雪月花 仁清 1口 17世紀 大阪・湯木美術館蔵) 中央のはずした方が絶妙。
「褐釉撫四方茶入」(仁清 1口 17世紀中頃 京都・高津古文化会館蔵)。
「御深井釉菊透鉢」(仁清 1口 17世紀 東京・根津美術館蔵)やや開き気味の椀形。そこに菊透文様。
「銹絵水仙文茶碗」(仁清 1口 17世紀中頃 京都・天寧寺蔵)
そして、
重文 「色絵鱗波文茶碗」(仁清 1口 17世紀 京都・北村美術館蔵 )(11/6まで展示)。緑の釉薬が垂れるところに金、銀、青の鱗波が細かく並ぶ模様が美しい。茶碗の形も少し波打った縁取りで洒落ています。今回見て一番感激した作品。(京都市上京区にある北村美術館は、古美術・茶道具を中心とした私立美術館だそうで、他にも与謝蕪村『鳶烏図(とびからすず)』(重要文化財|国重要文化財)、佐竹本三十六歌仙『藤原仲文像』 (国重要文化財)、織部松皮菱手鉢 (国重要文化財)-益田孝(鈍翁)旧蔵などが収蔵されているとのこと。)
「色絵鴛鴦香合」(仁清 1合 17世紀 奈良・大和文華館蔵)は、一寸ほしくなる可愛さ。近衛家伝来。
今後の参考に、仁清の茶碗のリストはこちら。
「絵を焼物に -乾山 」。乾山は、今の普段使いの焼き物の祖かと感じました。光琳が兄とは、初めて知りました。
「雅の造形 -古清水(こきよみず)」。名もない作家の作品ですが、京の雅さを感じます。次の作品は、黄土色の地に、緑、青、金彩。どれも派手ではないのですが優雅です。筆遣いも細やかで丁寧です。
色絵竹図徳利 古清水(御菩薩池) 1口 17~18世紀 東京国立博物館蔵 。細い首の形が優美。
「色絵椿松竹梅文透入重蓋物」(古清水 1具 18世紀 東京国立博物館蔵 )。兎の取っ手がいいですね。
色絵椿松竹梅文透入重蓋物 古清水 1具 18世紀 東京国立博物館蔵 。きちっと三段重になっており、網状の透かし模様、五弁花形の文様も丁寧に描かれています。
色絵片身替梅文銚子 古清水 1口 18世紀 大阪・湯木美術館蔵
「江戸後期の名工達 -頴川・木米・道八・保全 」。
「交趾じこう香炉」(奥田頴川 1合 18世紀末~19世紀初 京都・建仁寺蔵)。古代の中国の動物たち、愛らしく描けています。
金襴手花筏図水指 永楽保全 1合 弘化3年(1846) 個人蔵
「色絵月に蟷螂図茶碗」(永楽保全 1口 1827~45年 東京国立博物館蔵) 仁清写というだけのことはあります。
菊置上香合 永楽保全(南紀御庭焼) 1合 文政10年(1827) 東京・三井記念美術館蔵 菊の花の白と黄色の再現が見事。
「色絵絵替小角皿」(永楽和全 5客 19世紀後半 東京国立博物館蔵)これは先日、三井記念美術館で見た和全の「布目色絵団扇形食籠」と同じ織物文様という様式で仕上げられている。
10月22日に東京国立博物館で開催されていた「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」に行ってきました。陶磁器には全く素人で、伊万里は、佐賀県立九州陶磁文化館、京焼は仁清の色絵雉香炉を石川県立美術館を鑑賞したことがある程度ですが、いづつやさんの「200%満足」にまったく同感の素晴らしい特別展でした。というよりも、素人の私には、華麗なる伊万里、雅の京焼がよく勉強できた展覧会でした。
最初のコーナは、「磁器誕生 -初期伊万里」。初期伊万里は、朝鮮半島の技術で中国陶磁の様式を融合することで生まれた、と。中国青花(せいか)の意匠(17世紀の景徳鎮窯 の青花山水人物図皿が展示されていた)を目指していたとのこと。
しかし、まだまだ、初期伊万里では、トンド形式(ここでイタリア語をつかうこともないですが)の空間をどう描いていいのか慣れていない様子。重文の「染付山水図大鉢」(1630~40年代 奈良・大和文華館蔵 )は、遠景、中景、近景がそれぞれに置かれており、との説明、また、「染付鳳凰図大皿」(1630~40年代 個人蔵)は、 鳳凰が皿を飛び出さんばかり、との説明でしたが、両者ともちょっとピンときません。冒頭で秀逸とした、重文「染付花卉文徳利」では、縦長の空間に草花を描くという構図のため、無理なく草花を描くことに成功しているのかも知れません。
「磁器に彩りを -伊万里・古九谷様式」のコーナでは五彩手、青手、祥(しょんずい)瑞手という様式を学ぶ。
でも、このコーナはまだ技術的にはもう一歩と感じました。
二階に上がって、「世界へ-伊万里・柿右衛門様式」。日本の磁器がはじめて輸出が行われたのは、カンボジア(バタビア)向けで1647年のこと。1656年の清朝の海禁令によって中国陶磁の輸入の道をたたれたオランダ東インド会社が、磁器の供給を伊万里に求めて、輸出が盛んになった。その以降、欧州向けの意匠として、中国の文様のコピーをし、改良を重ね、柿右衛門様式が生まれた。そんな歴史があったのかと初めて知りました。
「世界へ、そして国内へ -金襴手」輸出品は兎も角、国内向けは圧巻。元禄文化の豪華さとはこのことをいうのでしょう。
この3点は、贅を究めた作品。豪華絢爛。個人蔵とあるのは、由緒正しい武家の方が所蔵されていると拝察。東京国立博物館の特別展だからで出品された作品では?
「極められた洗練 -鍋島 」。伊万里市の大川内を訪れたときに、鍋島は櫛高台の染付けが典型とは教えていただいていたが、今回、鍋島とは意匠であると得心。
と意匠で勝負といった作品が並びます。
ここから、雅の京焼。「形と意匠 -仁清」。
「モノトーンの中にみる仁清の洗練」として4点。
そして、
今後の参考に、仁清の茶碗のリストはこちら。
「絵を焼物に -乾山 」。乾山は、今の普段使いの焼き物の祖かと感じました。光琳が兄とは、初めて知りました。
「雅の造形 -古清水(こきよみず)」。名もない作家の作品ですが、京の雅さを感じます。次の作品は、黄土色の地に、緑、青、金彩。どれも派手ではないのですが優雅です。筆遣いも細やかで丁寧です。
「江戸後期の名工達 -頴川・木米・道八・保全 」。
TBありがとうございます。ようやく拙ブログ記事が完成しましたのでTBさせていただきます。
私も陶磁器についてはまったくの素人ですが、この展覧会でおぼろげに江戸時代の陶磁器の流れを概観できたような気がしました。わかりやすい良い展覧会でした。
また染付の青、銹絵の洗練、瀟洒な色絵と非常に豊かな色彩にも目を見張りました。このように生活に密着した美しい工芸品を見るとやはり豊かな気持ちになれますね。
仁清の「色絵鱗波文茶碗」が会期の都合で見れなかったのは残念でしたが満足の展覧会でした。
それから、リンクありがとうございます。私の方でもブログリストに入れさせてもらいますね。長文失礼しました。