徒然なるまままに

TB歓迎(事前承認にしましたので公開遅れるかもしれませんがご容赦を)。展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

北斎展(前半) @東京国立博物館 その2

2005-11-07 | 美術
北斎展(前半) @東京国立博物館 その2

その1はこちら

今回のこの展覧会。本当に見所と思ったのは、第6期 「画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)期」。北斎は75歳を過ぎると浮世絵版画にはあまり意欲を見せず、肉筆画を多く描くようになってきたという。北斎の88歳の作、小布施の岩松院の八方睨みの大鳳凰図は数年前に見てはいたのですが、私の意識していなかった北斎の世界が広がります。この第6期だけでも十分という展覧会でした。

第6期の中から、以下、絞りに絞ってコメントしたいと思います。
  • 473 八十三歳自画像 26.9×16.9 ライデン国立民族学博物館
    まずは、展示室1の冒頭にあったこの自画像です。自画像を描くというこの西洋的な発想。また、自身を画狂老人卍と号する自意識。すごいです。日本人離れしています。『風姿花伝』のように道を究めています。
  • 465 前北斎卍筆 肉筆画帖(福寿草と扇、鷹、はさみと雀、ほととぎす、鮎と紅葉 11/13まで展示)紙本着色 葛飾北斎美術館蔵
    どの一葉も間の取り方が抜群です。加えて鷹の細密な表現、鮎と紅葉の水面の表現、福寿草の生命力。現代日本画の構図を見ているようで、その細密な表現は西洋画です。会期後半は、(蛙とゆきのした、塩鮭と鼠、蛇と小鳥、鰈と撫子、桜花と包み 11/15から展示)です。
  • 471 西瓜図 絹本着色 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 〜11/13
    こんな斬新な構図はどうやって生まれたのでしょうか?紐に西瓜の薄皮をつるした様。西瓜にかけた半透明の布の表現。包丁の青光り。夏の一瞬を捉えています。宮内庁所蔵品は、御物なので国宝にも重要文化財にも指定されませんが、下賜されれば国宝級ですね。素晴らしい。
  • 472 柳に烏図 絹本着色 ボストン美術館蔵
    フェノロサの友人ビゲローの収集品。ボストン美術館から100年以上も貸し出されたことがない。はじめの帰国。天候の急変、吹き募る風、ざわめく柳、あわただしい鳥の動き、烏たちは、孤を描くように、しかし、風にあおられている烏もいる。「捉え難きものが渾然一体となって、一幅の画面に溶け合っている」(日経 美の美 10月23日)。烏一羽一羽の表現も細密で、鬼気迫るものがある。
  • 474 雪中張飛図 絹本着色 氏家浮世絵コレクション(鎌倉国宝館内)蔵
    歌舞伎の見得を切ったような張飛。槍で地面を衝く。煌びやかな張飛の衣装、そして、はらはらと舞う雪。緊張感のある構図、細密に描かれた色彩豊かな豪華絢爛な世界。
  • 492 重要美術品 狐狸図 紙本着色 個人蔵
    風を表現するのに、たなびく煙以外に狐と狸の姿の対比の二幅で表現。中国的な墨絵ではなく、里山をアップして描いた日本的な世界の墨絵の世界。

    さらに440 百人一首姥か恵と幾 菅家(横大判 町田市立国際版画美術)のこれが版画かと見まごう細密な御所車。さらに、すでにTakさんもお書きになっていますが、円をベースに画面を構成できないかという試みをしている477 田植図(34.0×52.0 佐野美術館)、491 七面大明神応現図 (132.3×59.3 妙光寺)など。第6期は凄いです。ここまで体力と気力を温存しないと。その意味では展示室2から鑑賞を始めたのは正解でした。

    最後に「美の美」から。
    岡倉天心は「東洋の理想」(1903年)で「(庶民の)唯一の表現手段であった浮世絵は、色彩と描画においては熟練の域に達したが、日本芸術の基礎である理想性を欠いている」と書いている。フェノロサと天心の美意識は相通ずるもの。しかし、フェノロサは、1892年-93年にボストン美術館で北斎の肉筆画を主体とする「北斎とその流派」展を開催し、「北斎が画風の変遷移動をたづねやうと思へば、その研究は些々たる版画のみに拠るべきではない。肉筆絵画の上に確固たる基礎をおいてかゝるのが、吾等真摯なる研究者の至当の用意であらうと思ふ。」と目録の緒言で述べている。さらに1901年出版の「浮世絵史概説」で「(北斎は)民衆を信頼し、民衆の見る以上の美と力を捉えているのだ」「その肉筆画と版画と絵本の三シリーズは、1894年に長寿をもって没するまで中断することなく、充実ぶりはほとんど天下無類だった」と書いている。そのフェノロサが「北斎最晩年期最大の逸品」と絶賛したのが「雷神図」(1847年、ワシントン・フーリア美術館蔵)。(この作品は隣接するサックラー美術館で来年3月4日から開催される「北斎展」に出展される。)(ワシントン・フーリア美術館についてはこちら)フェノロサは、北斎の画法の第5期を80歳から90歳までとし、「線描に代わって濃淡・明暗のマッスが主要な要素となり、荘重な効果が「北斎画歴の最後を飾る勝利となった」と評価している。「雷神図」はその評価に相応しい作品。
  • キーワード
    フェノロサ 国立博物館 ワシントン 画狂老人卍 1892年 1903年 1894年 1847年 七面大明神 1901年
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    5 コメント

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    TBありがとうございます (paul-ailleurs)
    2005-11-07 23:59:34
    相当に集中されていた様子が伝わってきます。私は最初から出鼻をくじかれたようで、見ることができるものの中で気に入ったものしか触れることができませんでした。ただ、これから時間をかけていろいろと味わっていきたいと思っています。

    Unknown (とら)
    2005-11-08 21:57:02
    感想文に力が入って、充実していますね。感心しました。



    ところで、西洋でも油彩だけでなく各種の版画が重んぜられているのに、フェノロサや天心が北斎の浮世絵版画をある意味で軽視しているのは意外でした。



    このサイトのバックにあわせた簡単なバナーを作り、私のHPのリンク集に載せましたが、よろしかったでしょうか?
    正解 (Tak)
    2005-11-08 22:12:13
    >展示室2から鑑賞を始めたのは正解でした。

    これ正解ですね。

    次はこれでいきます。

    第6期はとほうもなく凄いですね。

    ありがとうございます。 (ak96)
    2005-11-09 00:22:00
    とらさま



    リンク集に登録されて光栄です。

    10月23日の日経新聞18面ー19面の美の美によれば、江戸庶民の文化を低俗と見る伝統的な美意識が、はじめはフェノロサの目を狂わせていたようです。
    Unknown (はろるど)
    2005-11-27 02:29:34
    こんばんは。

    後期もご覧になられたのですね。

    ご感想拝見しました。

    私もそろそろ後期を狙っているのですが、

    もの凄い混雑のようで、少し躊躇しております。



    それにしても肉筆画が特に圧倒的でした。



    >御物なので国宝にも重要文化財にも指定されませんが、下賜されれば国宝級で



    同感です。

    そろそろ宮内庁も「お宝」を、

    またまとめて公開していただきたいですね。



    少し前の記事ですが、TBさせていただきました。

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