岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

天気がいいとそれだけで「自然観察会」は成功だ。昨日はまさにそうだった。

2009-10-26 05:08:56 | Weblog
 (今日の写真はハウチワカエデの「お見事」という言葉が口をついてでそうになるほどに美しいの「黄葉」や「紅葉」である。この見事な赤と黄の染め分けは何だというのだろう。
 分け方は様々だが、一応「ハウチワカエデ」は、秋になると葉が「赤く色づく」樹木になっている。だが、今日の写真は黄葉が中心である。
 はて、さてどうしてこのような黄色の「1枚の葉」に「赤い」染め分け部分が出来るのだろう。 これは、すべての葉が赤く染まる、その一過程途上にある姿なのだ。周りの木々や枝葉に遮られない陽光を「受けている部分」だけが赤く染まっているのだ。周囲の樹木の葉が落ちて、満遍なく日を浴びることが出来るようになると、次第に「葉」全体が「紅葉」していく。
 やはり、秋の紅葉は一回限りの観察で終わるべきではない。数回訪れて、その変化していく過程をじっくり味わうものであろう。実は一週間前にもこの「ハウチワカエデ」を見ていたが、その時はすべての葉が黄色であった。
 自然は偉大な画家である。このような微妙なペインテングは人の手によっては出来ないだろう。
 そんな思いで眺めていたら、突然妙なことを思い出した。先の「侵略戦争」で「日本」が描いた地図である。アジアの各国を占領し、北は樺太、南はオーストラリアの北部海域、西は中国からインド近くまでを、「赤で塗りつぶして」いったあの地図である。それを国民に示して、戦意高揚を国は計ったのである。実は紛れもない「侵略」なのに、「大東亜共栄圏」などと、あたかも解放戦争のイメージで国民を欺いたのである。ああ、何と、嫌なことを思い出させる「ハウチワカエデ」であることか。

 「ハウチワカエデ」は、学名に「japonicum」という言葉を持っている。これは、本州に分布する日本の特産種、または固有種ということである。これは世界に誇れる日本を代表する「カエデ科カエデ属」の落葉高木ということになる。樹高は10m以上になることもある。
 岩木山では、標高300m辺りから900mの「亜高山」の下部に生育している。分布の中心は、夏緑広葉樹林の尾根筋などの明るいブナ林域ではないだろうか。この「ハウチワカエデ」は標高500m付近のものだ。そして、この周りにはブナが生えていた。
 見れば見るほど「見事な黄色と紅色」の葉であろう。他の「カエデ」と比べて、葉の切れ込み数の多いのが特色で、大体、葉は9から11ほどに切れ込んでいる。それに、10cm以上と大きな葉だ。それらが、「真紅や金色」に染まっていく様子はただただ美しい。 かつての日本のように「版図拡大」などという野望はない。ここに見えるものは、自然に従う従順で純粋な美しさだけである。
 しばしば、「ハウチハカエデ」は山地で見られる「紅葉(モミジ)」の王様だ」と言われることがある。確かに「大きな葉を真紅や金色に染めて紅葉」する、その風格は「王」を連想させるものであろう。しかし、美しさは「葉」に止まらない。
 花も美しいのだ。5月頃に咲く花は臙脂色でこの上なく上品な色彩を帯びている。しかも、カエデの中では大きく、房状に垂れ下がり、雄しべが、とりわけ長いので、目につきやすい。「雄花」と「両性花」を付けるが、房の先端が雄花になることが多いと言われている。
 美しいのは翼をつけた種「翼果」もである。大きく、斜めに開いた形をしていて、風に揺れている姿はえもいわれないほどに美しい。
 「ハウチワ」は羽根で作った団扇で、名前の由来は、その形から連想による。別名を「メイゲツカエデ」ともいうそうである。)

◇◇天気がいいとそれだけで「自然観察会」は成功だ。昨日はまさにそうだった。◇◇

 昨日は、この秋一番の「いいお天気」ではなかっただろうか。まずは雲一つない快晴であった。その上、風も殆どなかった。しかも、気温が19℃ほどで、ゆっくりと山登りをするには最適温度でもあった。それに、湿度も低く、さわやかだった。まさに、自然観察日和だったのである。
 観察会の場所は「岩木山西麓松代登山道周辺」だった。テーマは「秋のブナ林内をたどり、樹木や紅葉を鑑賞する」であった。 
 この鰺ヶ沢松代地区は、70年ほど前に入植した開拓地である。かつて、この辺り一帯はブナ林であった。その殆どが伐採されて畑になっている。だが、所々にぽつりぽつりと「ブナ」が取り残されたように生えているのだ。それが、「かつてはブナ帯であった」ということの生き証人でもある。この開拓地は、今では寒冷地野菜の栽培で名を知られるようになっているという。
  登山口から入ると直ぐに両側に樹林帯が広がる。「ミズナラ」があり、「ウダイカンバ」や白い葉で「紅葉」している「コシアブラ」などが目につく。だが、圧倒的に多いのはブナだ。また、少し黄変した葉をまだつけている「カラマツ」も見える。これは植林されたものだ。
 白いブナの幹に巻き付いている浅黄色の葉っぱが目立つ。「ツルアジサイ(別名:ゴトウヅル)」の葉だ。
 その森には南東側から日が射し込んでいた。何だかものすごく明るいのである。
明るいのは、もちろん、落葉が始まって「葉」の密度が低くなって空間が広がって、日が射し込み易くなっているからだけではない。ある時季に比べると「暗色」という色合いから「明色」という色合いに変化しているからである。この森は、白、赤、褐色、明るい黄色、レモンイェロー、淡い緑、萌葱色という装飾が施されているのであった。(明日に続く)

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