岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「弥生跡地」自然植生回復の兆し(2)

2009-10-18 05:11:17 | Weblog
 (今日の写真は今から10年ほど前の弥生跡地の写真だ。弥生いこいの広場に通じているアスファルト道路の左岸から写したものだ。
 写真中央の上にはコンクリートの構造物が見えるだろう。その左側には大きなコンクリートの塊がごろごろと置かれている。これらは、「スキー場」にした場合には「管理棟やリフトの発着施設」になろうはずの建造物の残骸である。
 手前の茶色の方形のものも、何かの構築物の土台部分であろう。写真に写っていないが、右手奥、つまり「跡地」の下部には「解体した構造物」から出た「鉄骨や鉄筋」が小山ほどの高さと大きさで、積まれていた。
 注目してほしいのは、「跡地」に生えている草や樹木である。季節は初夏である。昨年の「ススキ」が疎らに「枯れ姿」のまま残っている。だが、その数は少なく面積はもっと少なく狭い。
 この頃は「ススキ」をして「遷移」を考えると、まだ、この「跡地」は「森林回復」へ向かっての「遷移」の段階ではなかったのである。草丈や樹木の丈も低く、樹木の種類も少なく、まだ「十分」表土を剥ぎ取った部分を残している「跡地」なのである。
 中央部分には「水溜まり」が見える。このような水溜まりは「沢となって流れ込んだものが貯まった」ものではない。地下から染み出した水が貯まったものだ。
 この辺りは伏流水地帯なのだ。水脈の上に土石が堆積して地表を構成している。そのような地形や地質の構造地帯はしばしば、土石流に見舞われる。それを「体を張って」防いでくれているものが「林」なのだ。
 私たちは「弥生スキー場」、つまり、「跡地」造成は「土石流」を拡大させる装置になり得るという意味からも、反対したのだ。
 現に1975年の「百沢土石流」の時に、この「跡地」右岸の壁倉沢と、対岸の「ミズナラ林」で土石流が流れ込んで、そこで「止まった」という事実があったのだ。
 今日の写真は「弥生スキー場」が「県の指示」によって頓挫して、まだ日の浅い頃の「跡地」である。まだまだ、「地表が剥ぎとられ、植生の回復のない」ままの「跡地」なのである。)

◇◇「弥生跡地」自然植生回復の兆し(2)◇◇
(承前)

 ススキは、その株が大きくなるのには時間がかかるので、「初期のゲレンデや造成地」ではあまり姿が見られない。しかし、年を追うごとに背が高くなり、全体を覆うようになるのである。
 「跡地」のススキ原は今から、7、8年前がもっとも旺盛な生え方をしていた。もしも、ススキ原の状態を維持しようとするなら、草刈りや「野焼き(火入れ)」を定期的に行うことが必要である。奈良の三笠山(若草山)では毎春「野焼き」することで「ススキ草原」を維持している。
 ところが、「跡地」には何も手をかけないで、そのまま放置された。しかも、「跡地」に関わる事業は、市長選の公約通り凍結された。この「凍結」、つまり、「何も手をかけない」という意味に、私は「跡地」の破壊された植生の「自然回復」を図るという姿を見ていた。
 植物を遷移という点で見ると、ススキ(ススキ原)は草原としてはほぼ「最後の段階」に当たる。この時期が「跡地」にあっては7、8年前だったのである。
 今月の12日に、私たちが目にした「跡地」のススキも、次第に少なくなり、何年かするとなくなって、「跡地」そのものが林に、変わるのだ。ススキ原を放置すると、アカマツなどの先駆者的な樹木が侵入して、次第に森林へと変化していく。

 当該「跡地」の場合は、「ススキ」を駆逐して侵入している樹木は「ハンノキ」や「ヤマナラシ」、「オニグルミ」、「カワヤナギ」、「ヤマコリヤナギ」、「マツ」、「カラマツ」、「オオヤマザクラ」、それに、外来種である「シラカバ」などである。
 また、これら樹木が形成している林の縁には「ヌルデ」、「ミズキ」、「マンサク」、「タラノメ」、「ウダイカンバ」、などが雑多で密集して、見られるのだ。

 なお、これまでの調査で、「跡地」とその周辺部で確認している「樹木」は次の通りである。

 アカマツ・アカミノイヌツゲ・アカミノヤドリギ・アキグミ・アクシバ・アズキナシ・アブラチャン・イタヤカエデ・イワガラミ・ウスノキ・ウダイカンバ・ウルシ・ウワミズザクラ・エゾアジサイ・エゾノコリンゴ・エゾユズリハ・オオカメノキ・オオバクロモジ・オオヤマザクラ・オニグルミ・カスミザクラ・カラマツ・カワヤナギ・カンボク・ガマズミ・キブシ・クサギ・クサボタン・クズ・クマイチゴ・クマヤナギ・クリ・クロマツ・ケナシヤブデマリ・ウコギ・コシアブラ・コナラ・コマユミ・コリヤナギ・サルトリイバラ・サワグルミ・サワフタギ・サンショウ・シラカバ・スイカズラ・スギ・スノキ・ズミ・タニウツギ・タムシバ・タラノキ・ツノハシバミ・ツリバナ・ツルアジサイ・ツルウメモドキ・トチノキ・トネリコ・ナナカマド・ニワトコ・ヌルデ・ネコヤナギ・ノイバラ・ノリウツギ・ハウチワカエデ・ハナヘリノキ・ハリギリ・ヒメアオキ・ヒメヤシャブシ・フジ・ホオノキ・ホツツジ・マタタビ・マユミ・マルバマンサク・マルバアオダモ・ミズキ・ミズナラ・ミツバアケビ・ミツバウツギ・ムラサキシキブ・モミジイチゴ・ヤチハンノキ・ヤマツツジ・ヤマナラシ・ヤマナシ・ヤマネコヤナギ・ヤマハギ・ヤマブドウ・ヤマモミジ・リョウブなど(アイウエオ順)
(明日に続く)

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