たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

宙組博多座『黒い瞳』『VIVA! FESTA!』ライブビューイング(2)

2019年02月25日 17時28分26秒 | 宝塚
「ミュージカル・プレイ
『黒い瞳』-プーシキン作「大尉の娘」より-
脚本/柴田 侑宏
演出・振付/謝 珠栄

ロシアの文豪プーシキンの「大尉の娘」をモチーフとしたミュージカル。1998年に真琴つばさを中心とした月組で初演、2011年には音月桂を中心とした雪組により全国ツアーで再演され大好評を博しました。ロシア帝国の圧政に喘ぐコサック民族が起こしたプガチョフの反乱という歴史的事実を背景に、その動乱に巻き込まれた貴族出身の青年将校ニコライと大尉の娘マーシャとの身分を越えた純粋な恋、そしてコサックの首領プガチョフとの男同士の友情を描いた浪漫溢れる名作に、宙組博多座公演メンバーが挑みます。

スーパー・レビュー
『VIVA! FESTA! in HAKATA』
作・演出/中村 暁

祈り、感謝、願いなど、生きる為に大切な想いが集約され、人々が非日常の世界に集うFESTA(祭り)。リオのカーニバル、中欧・北欧に伝わるヴァルプルギスの夜や日本のYOSAKOIソーラン祭りなど、世界各地のFESTAをテーマにしたスーパー・レビュー。2017年宙組で上演されたパワー漲るショーを、博多座公演バージョンとして新場面を加えてお届け致します。真風涼帆を中心とした宙組の新たなFESTAに、ようこそ! 」(宝塚歌劇団公式HPより)


「フランス革命が起こる十数年前、ヨーロッパ各地でも支配権力に抵抗する動きが様々な形で起こる時代、ロシアの辺境にもコサックを中心に何度も反乱がつむじ風のように起こり緊張感を漲(みなぎ)らせていた。その中で地方貴族の一青年が、任官した土地で恋を得たと思う間もなく、つむじ風の一つに巻き込まれ、その核にいる首謀者と出会い、自分の人生と真剣に向き合い、若い生を存分に生きようとする。これは一つの青春讃歌の物語である。」(公演プログラムより 柴田先生の言葉)

「女帝エカテリーナの時代に起こったブカチョフの反乱という歴史的事実を背景に、その動乱に巻き込まれた、真風さん演じる貴族出身の青年将校ニコライと星風さんの大尉の娘マーシャの純愛を中心に、愛月さん演じるコサックの首領ブカチョフとニコライとの男同士の友愛など、様々な人間模様が繰り広げられていく。

 広大な土地をもつロシアの厳しい自然の中で、愛する者達を守るために、そして時代を変えるために勇気を持って戦い、人々が幸せな”心”を持てる様に祈る。この物語に久しぶりに接し、人間の本来の姿である”崇高な生命の本質”をひしひしと思い出した。そう、こんな時代だからこそ、素朴な生活や、人間の持つ”本当の心”の状態を蘇らせるべきではないか、と思うのである。」(公演プログラムより 謝先生の言葉)

 1998年の月組初演は1000Days劇場でしたね。記憶あやふやじゃないか、ってか。当日券があるか電話で問い合わせてから出向いたんだったかな。細かいことはもう思い出せずです。ショーは、三木先生の『ル・ボレロ・ルージュ』、懐かしいことこの上ない響き。なぜかプログラムを買わなかったのでネットで調べた月組キャストと今回のキャスト。初演キャスト、懐かしい名前がずらり。のちにトップスターになった方々も何人もいらっしゃいました。


ニコライ(地方貴族の少尉) 真琴つばさ  真風涼帆

マーシャ(ミロノフ大尉の娘) 風花舞   星風まどか

プガチョフ(反乱軍の将) 紫吹淳  愛月ひかる

シヴァーブリン少尉(貴族の少尉) 初風緑 桜木みなと

エカテリーナII世(ロシアの女帝) 千紘れいか 純矢ちとせ

サヴェーリィチ(ニコライの従僕) 未沙のえる 寿つかさ

ミロノフ大尉(ベロゴースク砦の連隊長) 立ともみ 松風輝

ヴァシリーサ(ミロノフ大尉の妻) 藤京子 美風舞良

マクシームィチ伍長(コサック出身の下士官) 
 
 樹里咲穂(宝塚)汐美真帆(東京) 蒼羽りく

ベロボロードフ(反乱軍の参謀) 真山葉瑠 澄輝さやと

トリオ(勇気) 嘉月絵理 秋音光

トリオ(愛)霧矢大夢 和希そら

トリオ(祈り)大和悠河 優希しおん

 
 それぞれの表情がしっかりと描かれ人間模様が交錯する層の厚い物語。無駄がどこにもありません。柴田作品で私が観ていて忘れてならないのはほかに『あかねさす紫の花』『激情-ホセとカルメン』『雪之丞変化』『ガラスの風景』『凱旋門』、観ていないですが再演が繰り返されていて観たいのが『紫子』『小さな花がひらいた』『川霧の橋』などなど、宝塚の財産となっている作品ぞろい。宝塚でしかみることのできない美しき世界。

 印象的だった場面を断片的にもう少し書いてみると、ニコライとブカチョフがマーシャを救うべく橇を走らせてベロゴールスクへ向かう場面、真風涼帆さんも愛月ひかるさんが背が高いので画面がせまく感じられました。二人の心が通い合う重要な場面。ブカチョフがニコライに「お前には本当の気持ちを話そう」みたいなことを言ったときは、ハッとしました。初演ではなかったかな?そんな気が。生々しかった場面も演出が変わっていてみせないようになっていたかな。断片的な記憶ですが・・・。ブカチョフがニコライを先生と呼び心を許す、二人にしかわからない関係性が築かれたところが、ブカチョフが追い詰められていると知った時最期を見届けたいと政府軍に参加する意思をマーシャに伝える場面へとつながっていきます。涙が出そうでした。脚本を読もうと思ったら「ル・サンク」ですね。

 シヴァーブリンと決闘して怪我を負い5日間眠り続けたニコライが目覚めた時、マーシャに「目がさめて最初に目に入ったのが君でよかった。一日の始まりが幸せ」みたいな台詞が美しくきこえるの、説得力がありました。真っすぐで純朴なニコライと清らかで可憐なマーシャ。ほほえましいかぎりで宝塚ならではの夢の世界。政府軍に参加することを告げられたマーシャがニコライに「これ以上戦いにいくあなたを見たくない」って涙をためながら言う場面も印象的でした。マーシャをコサックの娘という設定にしたのは柴田先生のオリジナルとのこと、物語に厚みが出ました。

 愛の精霊の和希そらさんのダンスとストーリーテラーの語りも心に沁みました。とくにマーシャがペテルブルクへと急ぐ場面の語りが沁みました。長身揃いの宙組の男役では小柄。ロシアの帽子と衣装がすごく似合っていてダンスの表現力も豊かで、勇気の精霊の秋音光さん、祈りの精霊の優希しおんさん、三人の背丈が少しずつ小さい方から大きい方へときれいに並んでいるのが、そのようにキャスティングしたのかもしれませんがなぜだかよくって、ペテルブルグへと急ぐマーシャを三人がリフトしていくダンス場面はとりわけ素敵でした。マーシャの心情をダンスで表現する、これも宝塚ならではの美しい場面。

(舞台写真はWEBRONZAというサイトよりお借りしています。)





 
 ショー、『VIVA! FESTA!』、博多座バージョン。YOSAKOIソーランの場面、真風さんが出ずっぱりだと思ったら、プログラムをみるとÅからEまでありさらにはReoriseまでありました。客席降りもこなし声量と肺活量に感嘆しました。ものすごいエネルギー。法被すがたのまどかちゃんを中心とした娘役群舞も印象的。あと真風さんもまどかちゃんも法被をびしっとしなおしたり、桜木みなとさんがはちまきをしめ直すところをライブビューイングのカメラがしっかりと捉えていましたね。「組全員で踊る総踊りの場面をいつも意識しています」とあり、批判もめにしますが『エストレージャス』で娘役群舞やチャンピオーネの場面をつくってくれた中村暁先生ならではのショーだと再認識。組ソングとして歌い継いでいけるものができたのは大きいですね。

こうして大劇場、ライブビューイングと全組観劇していたらきりがないんですけどね、人生の休日の今だけかもしれないし、これからも続けられるかもしれないし、先のことはわからないので可能なかぎりはできるだけ、全てあの世へ旅立つときの心のお土産です。