たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

2008年『フェルメール展-光の天才画家とデルフトの巨匠たち-』_「オルガン・ロフトの下から見たデルフト旧教会の内部」

2019年02月13日 22時16分07秒 | 美術館めぐり
ヘンドリック・コルネリスゾーン・ファン・フリート
(デルフト 1611/12-1675 デルフト)

《オルガン・ロフトの下から見たデルフト旧教会の内部》
 1662年頃、個人蔵

「ファン・フリートは、1652年から1650年代後半にかけて、デルフトの旧教会と新教会の内部を斜めから眺めた作品を多く描いた。それらの多くはヘラルト・ハウクヘーストの初期作品に負うところが大きいようだ。1657年頃から1660年頃には、旧教会の南側廊の眺めも描いた。身廊西側端のオルガン・ロフトが、全部あるいは部分的に描きこまれた構図である。教会をこんなふうに眺めた作品は、デルフトの建築画において、前例がない。

 本作品は、オルガン・ロフト下から身廊を通り、内陣障壁の戸口にまで至る深い奥行きの眺めを正面からとらえた図である。1世紀もの間、画家たちは、フレデマン・デ・フリースの伝統にのっとって、教会身廊の眺めを正面から描いてきたが、デルフトの教会室内画の自然主義的な伝統のなかにおいては、そうした見方が新しいものとなった。それは、ファン・バッセンによる1630年代の早い作例、あるいはそれよりも時代が下ったアンソニー・デ・ロルメによるロッテルダムの聖ラウレンス教会の内部の眺め、あるいはダニール・デ・プリークによる様々な教会内部を描いた作例の影響かもしれない。しかし、デルフトに限っては、それはファン・フリートの考案であったようだ。

 本作品は格別に興味深い。というのも、この作品には、同じく1662年の年記のある、同じ大きさの対作品、《オルガン・ロフトの下から見たデルフト新教会の内部》があるからだ。本展では、初めてその2作品が引き合わされることになる。ファン・フリートが描いた唯一の対作品であるが、いかなる画家であろうとも、建築画の対作品というのは実に珍しい。構図を類似させるため、ファン・フリートは2つの教会内部をオルガン・ロフト下の位置から描いただけではなく、旧教会の横に広いプロポーションを新教会のより幅の狭いプロポーションに似せて処理し、一方で、新教会の高さをいくらか誇張した。」

(2008年『フェルメール展-光の天才画家とデルフトの巨匠たち-』公式カタログより)