「20世紀初頭のニューイングランド。
孤児院で暮らすジルーシャ・アボット(坂本真綾)は、ある日、慈善家のジョン・スミスという匿名の人物から手紙を受け取り、その内容に驚く。類稀なる彼女の文才をのばし、文筆家になるために高等教育を受けさせ、そのすべての費用を援助するというのだ。そしてそこには、何者かを明かすことはできないが、月に一度手紙を送るようにと書かれていた。
初めて自分を認めてくれた存在に、まるで家族に見守られているような気持ちになるジルーシャ。大学の寄宿舎に入った彼女は、孤児院で見かけた背が高く足の長いシルエットを思い出し、ミスター・スミスに”ダディ・ロング・レッグズ”というニックネームを付けて手紙を書き始める。
棚が本で埋め尽くされた書斎でジルーシャからの手紙を読んでいる人物こそ、ダディ・ロング・レッグズ。けれど彼は、ジルーシャが想像したような年寄りではなく、30代半ばに見える。裕福な家に生まれたジャーヴィス・ペンドルトン(井上芳雄)は、人生に目標がもてず上流階級のつきあいにも馴染めない。一人の世界に引きこもるような日々を送っていた。
彼女からの生き生きとした手紙は、次第にジャーヴィスの気持ちに変化を与える。直接ジルーシャに会って言葉をかけたいという思いが募り、ついに、ジルーシャの同級生のジャーヴィス叔父さまとして彼女の前に現れる。
やがてジルーシャは、ジャーヴィスにほのかな思いを寄せるようになる。同一人物だとは知らないまま、ダディ・ロング・レッグズに手紙を書き続けながら。」
プログラムを読むと2012年初演、今回が四度目の上演だったんですね。坂本真綾さん、大きなミュージカルのキャストで名前をお見かけしないのでどんな方なんだろうと3年前から気になっていました。レミゼでエポニーヌ役を演じたことがあるほかは、声優・歌手として活躍されている方なんですね。わたし、役者さんへのほめ言葉として上手っていう言葉はあまり使いたくありません。もちろんミュージカルなのだから歌が上手っていうのは必須というか当たり前といえば当たり前ですが、ただ技術的に上手いとかではなく、何というか役の魂を生きている、魂で役を体現している、そんな役者さんを拝見すると素敵だなあと思います。
トランクと本でいっぱいの舞台はすごくシンプル。坂本さんと井上さんがトランクを移動させることで場面転換を現わすという演出。同級生のジャーヴィス叔父さまとしてジルーシャの前に姿を現したジャーヴィスとジルーシャが対面する場面が後半にはあったと思いますが、ジルーシャがジャーヴィスを足ながおじさんと知ってから二人が言葉を交わすのは最後だけ。舞台上では二人が観客に同時に姿をみせていても、それぞれ一人芝居。とくに前半は、坂本さんの長い一人芝居が続きました。一人芝居のような時間が終わると足ながおじさんの井上さんの書斎へと舞台は移ります。ジルーシャからの手紙を本棚にピンで留めて、書斎をウロウロしながらタイプライターを打つ姿がなんともシャイでお茶目な井上さんのジャーヴィスこと足ながおじさん。帽子をかぶって書斎を出て行くときの横顔とスーツの後ろ姿に、なんとも人付き合いの苦手で不器用な雰囲気が滲み出ていて、可愛いおじさんだなあと思いました。ジルーシャは物語の最後の最後まで、足ながおじさんは年寄りだと思い込んでいるところもこの物語を楽しいものにしていました。観客には二人の姿が同時にみえているのに、ちゃんとそれぞれの一人の時間として成立しているという世界観。レミゼのオリジナル版を演出したジョン・ケアードさんの、アンティークなオルゴールが音色を奏でるのに耳を傾けている時のような、穏やかな幸せ感で満たされる舞台。演じたお二人もすごく楽しい、幸せだを感じるとプログラムにあります。そんなあったかい想いがにじみ出ていた舞台。ジルーシャは喜怒哀楽の感情をわりとはっきり表現しているのにやわらかいところを感じさせるのは坂本さんの持ち味かな。井上さんは、この舞台の数カ月前にはスーツ姿の背中で魅せる男役のようなギャッビーを生きていたのに、この舞台では足ながおじさんのジャーヴィスそのものにしかみえなくって、この二人だから成立する作品、4回目の上演に納得。カーテンコールの時にはなんともいえない、幸せ感が心の中に満ちていました。生の舞台はやっぱりいいものです。
実家にあった、子どものころ買ってもらった曽野綾子さん訳の『あしながおじさん』、断捨離しながら少しずつ読み返しはじめました。こんな歳になったからこそわかることがたくさんあります。そのことはまたいつか書ければと思います。
ちっそくしそう部屋を逃げ出して普通の空気を吸い込みながら、『ダディ・ロング・レッグズ』観劇日記、短いですがようやく書けました。
明日はまた帝劇。シアタークリエは現在ジャニーズ、とーほーさんとジャニーズは仲良しなのかな。それはいいですが、ファンのマナーがひどすぎるというつぶやきをツィッターでみかけました。わたしの聖地日比谷をきたなくしないでほしいなあ。
2017年11月8日、お向かいの東京宝塚劇場。なんども同じこと書いていますが、ほんとにこの時この時間だけの一期一会。
孤児院で暮らすジルーシャ・アボット(坂本真綾)は、ある日、慈善家のジョン・スミスという匿名の人物から手紙を受け取り、その内容に驚く。類稀なる彼女の文才をのばし、文筆家になるために高等教育を受けさせ、そのすべての費用を援助するというのだ。そしてそこには、何者かを明かすことはできないが、月に一度手紙を送るようにと書かれていた。
初めて自分を認めてくれた存在に、まるで家族に見守られているような気持ちになるジルーシャ。大学の寄宿舎に入った彼女は、孤児院で見かけた背が高く足の長いシルエットを思い出し、ミスター・スミスに”ダディ・ロング・レッグズ”というニックネームを付けて手紙を書き始める。
棚が本で埋め尽くされた書斎でジルーシャからの手紙を読んでいる人物こそ、ダディ・ロング・レッグズ。けれど彼は、ジルーシャが想像したような年寄りではなく、30代半ばに見える。裕福な家に生まれたジャーヴィス・ペンドルトン(井上芳雄)は、人生に目標がもてず上流階級のつきあいにも馴染めない。一人の世界に引きこもるような日々を送っていた。
彼女からの生き生きとした手紙は、次第にジャーヴィスの気持ちに変化を与える。直接ジルーシャに会って言葉をかけたいという思いが募り、ついに、ジルーシャの同級生のジャーヴィス叔父さまとして彼女の前に現れる。
やがてジルーシャは、ジャーヴィスにほのかな思いを寄せるようになる。同一人物だとは知らないまま、ダディ・ロング・レッグズに手紙を書き続けながら。」
プログラムを読むと2012年初演、今回が四度目の上演だったんですね。坂本真綾さん、大きなミュージカルのキャストで名前をお見かけしないのでどんな方なんだろうと3年前から気になっていました。レミゼでエポニーヌ役を演じたことがあるほかは、声優・歌手として活躍されている方なんですね。わたし、役者さんへのほめ言葉として上手っていう言葉はあまり使いたくありません。もちろんミュージカルなのだから歌が上手っていうのは必須というか当たり前といえば当たり前ですが、ただ技術的に上手いとかではなく、何というか役の魂を生きている、魂で役を体現している、そんな役者さんを拝見すると素敵だなあと思います。
トランクと本でいっぱいの舞台はすごくシンプル。坂本さんと井上さんがトランクを移動させることで場面転換を現わすという演出。同級生のジャーヴィス叔父さまとしてジルーシャの前に姿を現したジャーヴィスとジルーシャが対面する場面が後半にはあったと思いますが、ジルーシャがジャーヴィスを足ながおじさんと知ってから二人が言葉を交わすのは最後だけ。舞台上では二人が観客に同時に姿をみせていても、それぞれ一人芝居。とくに前半は、坂本さんの長い一人芝居が続きました。一人芝居のような時間が終わると足ながおじさんの井上さんの書斎へと舞台は移ります。ジルーシャからの手紙を本棚にピンで留めて、書斎をウロウロしながらタイプライターを打つ姿がなんともシャイでお茶目な井上さんのジャーヴィスこと足ながおじさん。帽子をかぶって書斎を出て行くときの横顔とスーツの後ろ姿に、なんとも人付き合いの苦手で不器用な雰囲気が滲み出ていて、可愛いおじさんだなあと思いました。ジルーシャは物語の最後の最後まで、足ながおじさんは年寄りだと思い込んでいるところもこの物語を楽しいものにしていました。観客には二人の姿が同時にみえているのに、ちゃんとそれぞれの一人の時間として成立しているという世界観。レミゼのオリジナル版を演出したジョン・ケアードさんの、アンティークなオルゴールが音色を奏でるのに耳を傾けている時のような、穏やかな幸せ感で満たされる舞台。演じたお二人もすごく楽しい、幸せだを感じるとプログラムにあります。そんなあったかい想いがにじみ出ていた舞台。ジルーシャは喜怒哀楽の感情をわりとはっきり表現しているのにやわらかいところを感じさせるのは坂本さんの持ち味かな。井上さんは、この舞台の数カ月前にはスーツ姿の背中で魅せる男役のようなギャッビーを生きていたのに、この舞台では足ながおじさんのジャーヴィスそのものにしかみえなくって、この二人だから成立する作品、4回目の上演に納得。カーテンコールの時にはなんともいえない、幸せ感が心の中に満ちていました。生の舞台はやっぱりいいものです。
実家にあった、子どものころ買ってもらった曽野綾子さん訳の『あしながおじさん』、断捨離しながら少しずつ読み返しはじめました。こんな歳になったからこそわかることがたくさんあります。そのことはまたいつか書ければと思います。
ちっそくしそう部屋を逃げ出して普通の空気を吸い込みながら、『ダディ・ロング・レッグズ』観劇日記、短いですがようやく書けました。
明日はまた帝劇。シアタークリエは現在ジャニーズ、とーほーさんとジャニーズは仲良しなのかな。それはいいですが、ファンのマナーがひどすぎるというつぶやきをツィッターでみかけました。わたしの聖地日比谷をきたなくしないでほしいなあ。
2017年11月8日、お向かいの東京宝塚劇場。なんども同じこと書いていますが、ほんとにこの時この時間だけの一期一会。