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●《原子力規制委員長「慎重にやっていただきたい」》《花角英世知事、核燃料セットは「検査の一つの過程」》…委員長も県知事も何を言っているの?

2024年04月23日 00時00分27秒 | Weblog

[↑ ※「地震列島の原発安全性に警告」(週刊金曜日 1457号、2024年01月26日号)]


(2024年04月18日[木])
先日も地震があったばかり…「日本一細長い佐田岬半島の付け根に位置する伊方原発は、周辺住民にとって、“日本一避難しにくい原発」だというのに、昨夜、またしても豊後水道を震源として大きな地震発生。即座に《伊方原発「異常なし」》だそうだ…。

   『●「日本一細長い佐田岬半島の付け根に位置する伊方原発は、
             周辺住民にとって、“日本一避難しにくい原発”」
   『●小出裕章さん《今回一番学ばなければいけないことは、志賀原発が止まっ
     ていてよかったということ。…原発が1年間稼働すれば、広島原爆が…》
    「能登半島地震の「警告」を無視し続ける気らしい、キシダメ首相らは。
     正気だろうか。この間も、愛媛県で地震があり、震源は
     アノ伊方原発の極近傍。10kmほどの位置だったそうだ。
     さらに、千葉県沖でも、地震が続いているようだ」

 2024年4月18日のアサヒコムの記事【愛媛・高知、震度6弱 けが人の情報も 伊方原発「異常なし」】(https://www.asahi.com/articles/DA3S15914534.html?iref=pc_ss_date_article)。《17日午後11時14分ごろ、豊後水道を震源とする地震があり、愛媛県愛南町と高知県宿毛市で震度6弱、愛媛県宇和島市で震度5強を観測した。震源の深さは約50キロ、地震の規模を示すマグニチュードは6・4と推定される。この地震による津波の心配はないという。愛媛県ではけが人がいるとの情報があるという》。

 東京電力、原子力「推進」委員会…最早、狂気を感じてしまう。3.11東京電力核発電所人災から13年、《原状回復》に何の責任も果たさない東京電力にアノ柏崎刈羽核発電所を再稼働する資格など全くないというのに…。それ見たことか、《トラブル相次ぐ》。
 渡辺聖子記者による、東京新聞の記事【核燃料セット中にトラブル相次ぐ 制御棒の装置電源オフ、監視装置に不具合…東京電力・柏崎刈羽原発】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/321852)。《東京電力は17日、再稼働を目指す柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の核燃料の装塡(そうてん)作業で、制御棒を挿入する装置の電源が入らなくなるトラブルが発生し、作業を中断したと発表した。再開時期は未定。原因は分かっていない。作業に着手した15日にも別の装置でトラブルがあり、3時間ほど中断した。東電は「安全に問題はない」とするが、作業開始から3日間に中断が相次ぐ事態となった》。
 《◆原子力規制委員長「慎重にやっていただきたい」》、《◆花角英世知事、核燃料セットは「検査の一つの過程」》…核発電「寄生」委員会=原子力「推進」委員会山中伸介委員長、花角英世新潟県知事、一体何を言っているのだろうか? 寝言は、寝てから言ってほしい。

   『●杜撰・隠蔽・欺瞞だらけな廃液飛散事故…《人の命にもかかわる重大事故を
     起こしても、いまだ終始一貫して舐めた態度で会見をおこなっている東電》
    「欺瞞・杜撰だらけな東京電力福島原発廃液飛散事件…何もかも
     杜撰だった東電、飛散量・ホース・責任者不在…ホースって、
     東海村JCO事故を彷彿。」

   『●《子どもたちに、原発が安全なエネルギーと思ってほしくない。同じ
     過ちを繰り返さないため、声を上げられなかった人たちの分まで…》
   『●東電核発電人災から13年: 汚染水海洋投棄を強行し、柏崎刈羽核発電所
     を再稼働したい東電…3.11の教訓は? 能登半島地震の「警告」を無視…
   『●3.11東京電力核発電人災の教訓はどこに? 能登半島地震の警告は?
     正気だろうか? 東電に核発電所を運転する資格や能力は在るのかね?
   『●東電《小早川智明社長…「…は『(事故収束に)覚悟を持って取り組む』
      とよく言うけど、覚悟の『か』の字も見えない」(蜂須賀礼子氏)…
   『●老朽原発を含む関電美浜・高浜核発電所の運転差し止め訴訟、基準地震動
       は妥当で、《老朽化対策も合理的》と福井地裁・加藤靖裁判長は判断
   『●3.11東京電力核発電所人災から13年、《原状回復》に何の責任も果た
     さない東京電力にアノ柏崎刈羽核発電所を再稼働する資格など全くない

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/321852

核燃料セット中にトラブル相次ぐ 制御棒の装置電源オフ、監視装置に不具合…東京電力・柏崎刈羽原発
2024年4月17日 21時07分

 東京電力は17日、再稼働を目指す柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の核燃料の装塡(そうてん)作業で、制御棒を挿入する装置の電源が入らなくなるトラブルが発生し、作業を中断したと発表した。再開時期は未定。原因は分かっていない。作業に着手した15日にも別の装置でトラブルがあり、3時間ほど中断した。東電は「安全に問題はない」とするが、作業開始から3日間に中断が相次ぐ事態となった。


◆原子力規制委員長「慎重にやっていただきたい」

 東京電力によると、17日午前7時13分ごろ、制御棒1本を原子炉圧力容器に挿入する装置を動かすためブレーカーを入れたところ、すぐに落ちた。ブレーカーは制御棒を1本挿入するたびに入れる仕組み。制御棒は、核燃料を装塡する前に挿入し、核燃料が核分裂を始めないようにする。装塡する核燃料は全872体で、これまでに41体を終え、42体目を入れる直前だった。

 15日のトラブルは午後10時ごろ、核燃料装塡の手順を確認する監視装置の表示に不具合が発生。手順に問題がないことや、装塡する機械に異常がないことを確認し、約3時間後に作業を再開した。

 東京電力は今回の装塡を、再稼働前の検査の一環として位置づけており、約半月かけて完了する計画。作業を許可した原子力規制委員会の山中伸介委員長は17日の定例会見で「機械上や手順上のトラブルは起きると予測していた。安全上の問題はないが、核燃料を入れて行う試験なので慎重にやっていただきたい」と東京電力に求めた。

   ◇    ◇

     (東京電力が柏崎刈羽原発7号機への核燃料の装塡を始めた15日に
      公開した作業の様子。手前は核燃料を保管するプール、奥の水中に
      原子炉圧力容器がある=東京電力柏崎刈羽原発で(東京電力提供))


◆花角英世知事、核燃料セットは「検査の一つの過程」

 新潟県の花角英世知事は17日、県庁での定例記者会見で、東京電力が柏崎刈羽原発7号機で核燃料の装塡を始めたことについて、再稼働同意の是非の判断に「影響はない。東京電力の検査の一つの過程なので特に申し上げることはない」と述べた。事故時の避難を巡る課題解消などが議論の前提となる考えを改めて示した。

 東京電力は再稼働の時期を「未定」とした上で、15日に検査の一環として核燃料の装塡を開始。立地自治体の県などの同意を得てから再稼働するとしているものの、同意を得られる見通しは立っていない。

 花角知事は、能登半島地震で家屋倒壊が多発するなどして住民の避難が困難になった点を踏まえ「教訓として考えていく。災害対応を見直すことが必要だと思っている。知見をまとめることが必要だ」と述べた。(渡辺聖子


 東京電力柏崎刈羽原発 東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉で、首都圏に電力を送る。1〜7号機があり、総出力821万2000キロワットは世界最大規模。営業運転は1985年9月に1号機が開始、97年7月に7号機が始めた。現在は全基が停止。東電は新しくて出力の大きい6、7号機の再稼働を優先して目指している。2021年1月からテロ対策の不備が相次ぎ発覚。原子力規制委員会は4月に事実上の運転禁止を東電に命じ、23年12月に解除した


関連記事】「核燃料」原子炉にセット 異例の強行 東京電力柏崎刈羽原発 再稼働の地元同意ないのに 許可出たその日
【関連記事】「私たちの命を無視している」原発再稼働に突き進む東京電力に怒る地元 柏崎刈羽で後回しにされた課題とは
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●やはり最「低」裁(第2小法廷・菅野博之裁判長)でした、というオチ…《原発事故で国の責任認めない判決 避難者訴訟で最高裁が初判断》

2022年06月18日 00時00分03秒 | Weblog

[※ ↑【連載「6・17最高裁判決/原発被災者4訴訟】 (東京新聞 2022年06月11日)]


(20220617[])
片山夏子記者による、東京新聞の記事【原発避難者4訴訟 最高裁、国の賠償17日判断 「事故がなければおやじは死ななかった」福島・須賀川の農家、樽川和也さん】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/183817)。

 《トウモロコシの収穫で忙しくする福島県須賀川市の農家樽川和也さん(46)にとって、17日は特別な日となる。1人の原告として加わった東京電力福島第一原発事故を巡る被災者の集団訴訟で、最高裁が国の責任の有無を判断する。11年前の父の死がなければ、起こすことはなかった裁判。「東電とともに国の責任が認められ、双方のトップが事故の被害者にきちんと謝罪してほしい」。当日は収穫作業をしながら、判決を待つ。(片山夏子)》


   『●言葉が見つかりません…
    《須賀川市の野菜農家の男性(64)は、福島産野菜の一部に国の
     出荷停止指示が出された翌日の二〇一一年三月二十四日に自殺した。
     遺族によると、男性は原発事故後福島の百姓は終わりだ
     と話していたという》

   『●哀しい遺書: 「原子力さえなければ」
   『●ドキュメンタリー映画『わすれない ふくしま』:
      「震災さえ」ではなく 「原発さえなければ…」
   『●「原発さえなければ」「福島の百姓は終わりだ」:
          東京電力原発人災と自殺には因果関係あり

   『●「原発事故で奪われた生業と地域を返せ」…人災を
      起こした東京電力や政府は「原状回復」してみせたのか?
    《福島県須賀川市で八代続く農家の樽川和也さん…▼だが、
     福島第一原発の事故は、久志さんと先祖代々の
     情熱が染み込んだ土を汚した。地元産のキャベツが出荷停止に
     なったとの知らせが入った翌朝、久志さんは自ら命を絶った》

   『●原状回復できない現実: 「12万円で、あとはもう黙ってろ、
                 自然に放射能さがんの待ってろっつうこと」
    《とても、そんなんで済む損害じゃねえべ
     「《もう取り戻せない、償うことなどできない現実》…「原状回復」なんて
     決してできない「現実」だ。一体誰が「こういうふうにした者たち」なのか、
     こんなとんでもない「現実」を生み出した者たちなのか?
     誰一人、責任をとろうともしない」
    《土と生きる豊かな暮らしは、あの日、一変した。福島県須賀川市で
     農業を営む樽川和也さんは、東京電力福島第一原発の
     事故後まもなく父親を自死により失った。田畑も放射能で汚染された。
     東京で20日公開のドキュメンタリー映画「大地を受け継ぐ」で
     苦悩を訴えている。もう取り戻せない、償うことなどできない現実を聞いた》

   『●「あれだけの事故を起こして被害を出して、
      だれか1人でも責任とってやめたか。申し訳ないと謝罪したか」
    《福島第一原発事故から5年。あの時、父親を自死により失った樽川和也さん
     が語るドキュメンタリー映画「大地を受け継ぐ」…。制作者らが映画に
     込めた思いとは――。井上淳一監督、企画した馬奈木厳太郎弁護士、
     出演した白井聡・京都精華大専任講師(政治学)…》

   『●3.11東京電力原発人災から4年: 虚しき
     「地球にやさしいエネルギー原子力 人にやさしい大熊町」
   『●東電旧経営陣に無罪判決…《誰も事故の責任を取らなければ
         企業に無責任体質がはびこり、また同じことが起きる》
    《事故の影響で生活が一変した被災者からは怒りや失望の声が上がった
     …無罪判決を聞いた福島県須賀川市の樽川和也さん(44)は
     「全く納得できない」と憤る。樽川さんの父、久志さん
     (当時64)は、事故直後に自慢のキャベツが出荷停止になり、
     もう福島で農業はできないと悲観して自ら命を絶った》

   『●《今なお続く福島の「不条理」》: 東電の初期の主張は
     「無主物」…裁判所は《放射性物質…農家が所有》と言い放った
   『●《失われた古里》、失われた《本来は恵みをもたらす田畑の土》
                …原状回復して見せたのか? 誰か責任は?
   『●東電核発電人災での国の責任も放棄…《あの未曾有の福島第一原発
        事故を招いた“最大の戦犯”》アベ様の責任は追及され続けるべき


 「あれだけの事故を起こして被害を出して、だれか1人でも責任とってやめたか申し訳ないと謝罪したか」!
 誰も責任をとらない…。《誰も事故の責任を取らなければ企業に無責任体質がはびこり、また同じことが起きる》。いまの政治状況と全く同じ。アベ様らの《無責任体質》、腐敗が連鎖。最大の戦犯は未だにのうのうと政治家で居続けている。《火事場ドロボー》として戦争を煽っている。最大の戦犯・アベ様が、核発電所を新規に作りたいそうです…正気じゃない。「アベシンゾウ」とでも名付けては如何か?
 核発電「麻薬」中毒患者の皆さんのやることはデタラメばかり。最「低」裁を頂点とした裁判所も「司法判断」を放棄し、アベ様らに忖度した「政治判断」を繰り返してきた。
 「原発さえなければと思います」―――《原状回復》なき《原発回帰》は許されない。

   『●馬奈木厳太郎弁護士《現在、賠償金は東電しか払っていない。
       国が『加害者』となれば賠償の在り方が根元から変わり
                            …政策に大きな影響》(1/2)
   『●馬奈木厳太郎弁護士《現在、賠償金は東電しか払っていない。
       国が『加害者』となれば賠償の在り方が根元から変わり
                            …政策に大きな影響》(2/2)



 ……………………………………………………… でっ、やはり最「低」裁(第2小法廷・菅野博之裁判長)でした、というオチ…《原発事故で国の責任認めない判決 避難者訴訟で最高裁が初判断》。
 アベ様の息のかかった最「低」裁、本領発揮。期待した私がバカでした。あぁ~あ、《東電核発電人災での国の責任も放棄…《あの未曾有の福島第一原発事故を招いた“最大の戦犯”》アベ様の責任は追及され続けるべき》。
 東京新聞の記事【原発事故で国の責任認めない判決 避難者訴訟で最高裁が初判断】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/183789)によると、《東京電力福島第一原発事故によって被害を受けた住民や福島県内から避難した人たちが、国に損害賠償を求めた4件の訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は17日、原発事故について国の賠償責任を認めない統一判断を示した。全国で約30件ある同種訴訟への影響は必至だ》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/183817

原発避難者4訴訟 最高裁、国の賠償17日判断 「事故がなければおやじは死ななかった」福島・須賀川の農家、樽川和也さん
2022年6月17日 06時00分

     (トウモロコシを収穫する樽川和也さんは「国と東電の責任が
      認められるのは当たり前」と話す=福島県須賀川市で)

 トトウモロコシの収穫で忙しくする福島県須賀川市の農家樽川和也さん(46)にとって、17日は特別な日となる。1人の原告として加わった東京電力福島第一原発事故を巡る被災者の集団訴訟で、最高裁が国の責任の有無を判断する。11年前の父の死がなければ、起こすことはなかった裁判。「東電とともに国の責任が認められ、双方のトップが事故の被害者にきちんと謝罪してほしい」。当日は収穫作業をしながら、判決を待つ。(片山夏子


◆人間の造ったものは必ずぼっこれる。福島の百姓はもう終わりだ…

 「おめえに間違った道を継がせたな」。2011年3月23日夜、和也さんは父久志さんが漏らした一言を忘れられない。父との会話はそれが最後だった。

 その日夕方、久志さんが力を入れていたキャベツの出荷停止を告げる県の文書がファクスで届いていた。夕食後、久志さんは珍しく茶わんを洗った。翌朝、暗いうちに寝床を抜け出し、自ら命を絶った。64歳だった。

 11年3月12日に福島第一原発1号機が水素爆発した様子を、久志さんはテレビで食い入るように見ていた。「人間の造ったものは必ずぼっこれる(壊れる)。福島の百姓はもう終わりだ」。よく冗談を言っていた久志さんの口数は減り、朝起きると吐き気を訴えるようになったという。

 ホウレンソウ、カキナ…。放射能汚染で県産野菜の出荷停止は増え、出荷直前だったキャベツ7500個も廃棄を余儀なくされた。久志さんは亡くなる直前に畑を見て回ったのか、携帯の歩数計は680歩を示していた。

 出荷できなくなった畑は黄色の花で埋まり、育ちすぎたキャベツが「バリッバリッ」と音を立てて割れた。和也さんは母美津代さん(72)と、久志さんの日誌を頼りに作業を続けた。「汚染した表土をすき込んでいいのか。出荷できるのか」と、作物の汚染を疑うのは切なかった


◆11年もたつのに誰も責任を取ってねぇべ

 久志さんが作っていた寒キャベツは地元で評判が良く、直売所ですぐ売り切れ、学校給食にも使われていた。「1センチ作るのに100年かかる」は久志さんの口癖。「子どもたちに安全でうまい野菜を食べさせるのが、おやじの誇りだった」と和也さんは目を細める。

 久志さんの死は震災関連死と認められ、東電とも和解したが謝罪はなかった。和也さんは「原発事故がなければおやじは死ななかった11年もたつのに誰も責任を取ってねぇべなのになんで国は再稼働しか考えてねぇのか」と憤る。

 美津代さんは、久志さんが亡くなった時の姿を忘れられないと声を震わせる。「黙っていられないと思った原発事故で放射性物質がまき散らされ、国も東電も責任あるべ

 和也さんが久志さんの死後に栽培を始めたトウモロコシは甘く、直売所で飛ぶように売れるほど評判になった。裁判が終わったら、父に伝えたいという。「農業を継いだこと、俺に後悔なんてあるはずがねぇよ


原発被災者訴訟 東京電力福島第一原発事故後、被災住民らが東電と国に賠償を求めて起こした集団訴訟は約30ある。うち福島、群馬、千葉、愛媛の4訴訟(原告計約3700人)について、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は17日、「国が巨大津波を予見し、東電に対策を講じさせれば事故は防げたかを判断し、国の賠償責任の有無を判決で示す。この統一判断は他の訴訟に大きな影響を与える。東電の賠償責任は最高裁第2小法廷(同)が3月に東電の上告を退けて確定し、4訴訟の賠償金は計約14億円。


【連載】「6・17最高裁判決/原発被災者4訴訟」
<福島>「歩く風評被害」と言われても、私は逃げない 覚悟決めた 原発事故被災者福島訴訟の中島孝原告団長
<群馬>「悔しいから、くじけなかった」 原発事故被災者群馬訴訟の原告・丹治杉江さん
<千葉>「ふるさと奪われ、なんでこんな仕打ちを…」 原発事故被災者千葉訴訟の原告・南原聖寿さん
<愛媛>「若者が希望持てる判決を」 原発事故被災者愛媛訴訟の原告・渡部寛志さん
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/183789

原発事故で国の責任認めない判決 避難者訴訟で最高裁が初判断
2022年6月17日 14時38分

     (判決前に最高裁正門前で集会を開いた原告たち
      =17日午後、東京都千代田区で)

 東京電力福島第一原発事故によって被害を受けた住民や福島県内から避難した人たちが、国に損害賠償を求めた4件の訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は17日、原発事故について国の賠償責任を認めない統一判断を示した。全国で約30件ある同種訴訟への影響は必至だ。

 4訴訟は国と東電を相手に福島、群馬、千葉、愛媛で起こされ、高裁段階では群馬以外の3件で国の責任が認められていた。東電の賠償責任については今年3月に最高裁で確定し、賠償総額は4件で計約14億円となっている。

 主な争点は、巨大地震による津波を予見できたかと、対策を講じていれば事故を回避できていたか

 原告側は、福島沖を含む範囲で津波地震発生の可能性を予測した政府の地震調査研究推進本部による「長期評価」などに基づき、防潮堤の建設や重要機器室への浸水を防ぐ「水密化」を行っていれば事故は防げたとし、国は東電に対策を指示する義務があったと主張していた。

 一方、国側は、長期評価は信頼性が低く、津波は予見できなかったと反論。長期評価に基づいて想定された津波と実際の津波とは規模や方向が異なり、対策を講じても敷地への浸水は防げなかったと主張していた。

【関連記事】原発避難者訴訟 争点は
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●東電核発電人災、仙台高裁上田哲裁判長に続き、国の責任も認めた東京高裁白井幸夫裁判長による逆転勝訴判決―――この判決の意義とは?

2021年03月17日 00時00分13秒 | Weblog

[※ ↑号外【国の責任認める/東京高裁 千葉地裁判決覆す/原発避難集団訴訟 東電にも賠償命令】 (福島民報 2021年02月19日)]


(20210228[])
海渡雄一さんによる、レイバーネットの記事【最高裁で確定させ国としての脱原発を確実に〜「千葉避難者訴訟」逆転勝訴の意義】(http://www.labornetjp.org/news/2021/0223kaido)。

 《さる2月19日に千葉避難者訴訟について東京高裁(第22民事部 白井幸夫裁判長)が、東電と国の責任を認める判決を言い渡しました。この判決の推本の長期評価の信頼性と国の責任に関する判示部分は、私が被害者代理人としてかかわっている東電刑事裁判、原告代理人としてかかわっている東電株主代表訴訟の帰趨に大きく影響するものです。この裁判の一審判決では、国の責任を否定する判決が出されていましたが、東京高裁で見事に逆転勝訴判決を勝ち取られた原告団と弁護団に敬意を表したいと思います。この弁護団の団長は福武公子弁護士です。福武弁護士は、私も加わったもんじゅ訴訟弁護団の事務局長でした。以下、この判決の内容を紹介し、この判決の意義について述べたいと思います。(海渡雄一)》


 《避難者の生業はいまだ戻らないままである》…責任をもって東電や国が「原状回復」してみせてくれよ。

   『●「あれだけの事故を起こして被害を出して、だれか1人でも
          責任とってやめたか。申し訳ないと謝罪したか」
    《馬奈木厳太郎弁護士…樽川さんのお怒りは、まっとうなものなんです。
     今回の福島の被害の象徴と言ってもいいかもしれない。
     彼が求めていることは責任をとってくれです。
     「あれだけの事故を起こして被害を出してだれか1人でも責任とって
     やめたか申し訳ないと謝罪したか」と。そう思っているのは、
     樽川さんだけではない。国と東京電力を相手に、事故から2年後の
     2013年3月11日に福島地裁に起こした
     「生業なりわいを返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟
     には約4千人の原告がいて、樽川さんもそのお一人です》

   『●「生業を返せ、地域を返せ!」…原告団馬奈木厳太郎弁護士
      「国の対応、東電の責任を厳しく断罪する判決となっている。一審よりも…」
   『●「原子力災害伝承館」《批判…口封じ》…《安倍政権では「被災地
      切り捨て」政策がつづけられてきたが、それを菅政権も「継承」》
   『●東電核発電人災での国の責任も放棄…《あの未曾有の福島第一原発
        事故を招いた“最大の戦犯”》アベ様の責任は追及され続けるべき

   『●《避難者の生業はいまだ戻らないままである》…責任をもって東電や
       国が「原状回復」してくれれば《生業》を、《地域》を取り返せる
    「民事裁判では、地裁に続き高裁レベルで、《国と東電に損害賠償などを
     求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は一審福島地裁判決に続き
     両者に賠償を命じ》ました。仙台高裁上田哲裁判長によるものです。
      「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」という訴えが、
     一部認められました。

      国や東京電力が責任を果たす方法は明確で、簡単です。《原状回復
     して見せてくれればよいのです。もう10年が経とうとしています。
     さっさとお願いします。
      …出来ない、不可能というのであれば、やるべきことは一つしかない
     でしょ? 《国や東電は被災地を事故前の状態に戻すことができない
     現実を直視し》、何を為すべきですか?」

   『●東京電力核発電人災後に《福島県から千葉県などに避難した住民ら
     43人が国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審》で逆転判決
   『●《「国に法的責任はある」原発事故で千葉県に避難した人々が起こした
        訴訟での東京高裁の判断だ。規制権限の不行使を厳しく指弾した》


 仙台高裁・上田哲裁判長に続き、国の責任も認めた東京高裁・白井幸夫裁判長による逆転勝訴判決 ――― この判決の意義とは?
 白井幸夫裁判長は、《防潮堤の設置などの措置を講じていれば「津波の影響は相当程度軽減され、全電源喪失の事態には至らなかった」と認定。国が規制しなかったことと事故との間に「責任を認めるに足りる因果関係がある」として「規制権限を行使しなかったことは国家賠償法上、違法だ」とした》そうだ。真っ当な司法判断。

 責任をもって東電や国が「原状回復」して見せてくれよ! 10年が経ってしまいましたよ。いつになったら元の姿に戻してくれるの? 元の姿に戻してくれれば、皆さん喜んで福島に帰り、生業を取り戻すはずですよ。
 東京電力核発電人災から10年。あの人災から何の教訓を得ることもなく、何も変わらないニッポン。民主党政権末期・野田政権、アベ様・カースーオジサンによる《悪夢のような》、〝地獄〟の自民党政権は、核発電〝麻薬中毒〟から抜け出せないままです…。

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http://www.labornetjp.org/news/2021/0223kaido

最高裁で確定させ国としての脱原発を確実に/「千葉避難者訴訟」逆転勝訴の意義

最高裁で確定させ国としての脱原発を確実に〜「千葉避難者訴訟」逆転勝訴の意義
海渡雄一(弁護士)

 さる2月19日に千葉避難者訴訟について東京高裁(第22民事部 白井幸夫裁判長)が、東電と国の責任を認める判決を言い渡しました。
 この判決の推本の長期評価の信頼性と国の責任に関する判示部分は、私が被害者代理人としてかかわっている東電刑事裁判、原告代理人としてかかわっている東電株主代表訴訟の帰趨に大きく影響するものです。
 この裁判の一審判決では、国の責任を否定する判決が出されていましたが、東京高裁で見事に逆転勝訴判決を勝ち取られた原告団と弁護団に敬意を表したいと思います。この弁護団の団長は福武公子弁護士です。福武弁護士は、私も加わったもんじゅ訴訟弁護団の事務局長でした(私は事務局次長)。2003年1月に名古屋高裁金沢支部で川崎和夫裁判長によって「もんじゅ設置許可無効」の逆転勝訴判決を勝ち取った原動力は福武弁護士と原発反対福井県民会議の小木曽美和子さん、そして毎回の法廷に私たちを支えるために出廷して下さった二人の原子力の専門家、久米三四郎さんと小林圭二さんでした。
 この判決は昨年九月の仙台高裁生業判決につづいて、高裁で二例目の住民勝訴判決となりました
 福武先生、おめでとうございます。そして、本当にありがとうございます。
 以下、この判決の内容を紹介し、この判決の意義について述べたいと思います。


第1 はじめに

 2021年2月19日東京高裁(白井幸夫裁判長)は、千葉の避難者が提起していた東電と国に対する損害賠償について、国の責任を認めなかった地裁判決を破棄し、いずれに対しても請求を認める判決を下した。
 その判決要旨は次のとおりとされている。

長期評価
 国の地震調査研究推進本部が平成14年7月に公表した「長期評価」は、三陸沖北部から房総沖の領域で、過去400年にマグニチュード8クラスの大地震が3回発生しているとし、約133年に1回の割合で同様の地震が、この領域内のどこでも発生する可能性があるとする。長期評価の信頼度は「やや低い」とされていたが、過去の地震データが少ないことによるもので、長期評価の基礎となっている科学的知見の信頼性が低いことが理由ではない。
 経済産業相は、土木学会が14年2月に策定して公表した「原子力発電所の津波評価技術」の知見によって規制権限行使の判断をしていた。長期評価と津波評価技術は、いずれも専門家が議論を重ねて得た見解で、科学的信頼性は同等といえる。新たな知見が示された場合、それまで判断の基礎としてきた知見と少なくとも同程度の科学的信頼性があると評価できるのに、新たな知見を判断の基礎としないのは著しく合理性を欠く。
 経産相は、長期評価が公表された後のしかるべき時期に東電に依頼するなどして、福島県沖で発生する可能性のある地震による津波の評価をしていれば、20年の推計結果と同様に、福島第1原発に敷地の高さを大きく超える津波が到来する危険性があることを認識し得た。敷地内が浸水して重大な事故が発生する恐れがあり、福島第1原発が技術基準に適合しないと判断することができる状態にあった。

規制権限不行使
 経産相は、事業者に技術基準適合命令を発するに当たり、事業者が講じるべき措置を想定している必要がある。津波の到来による原発の全電源喪失という重大な事故を防ぐため、防潮堤の設置やタービン建屋などの水密化を想定すべきだった。想定すべき対策が講じられていれば、津波の影響は相当程度軽減され、全電源喪失の事態には至らなかったと認めるのが相当だ。
 長期評価の公表から遅くとも1年後には技術基準適合命令を発することができたと認められ、それから地震発生までの約7年半を費やせば、技術基準に適合させるための措置を講じることは可能だった。規制権限の不行使と事故には因果関係が認められ、違法だ。

国と東電の責任
 事故は国の規制権限不行使と東電による原発の運転などが相まって発生したと認められる。国と東電は原告らの損害についてそれぞれ責任を負う。国の立場が二次的・補完的であるとしても、国の賠償責任の範囲を限定するのは相当ではない。

損害
 避難生活を余儀なくされた者は、不慣れな場所での生活による不便や困難を甘受しなければならなくなった上、生活の本拠に戻れるのかどうかなどの不安感や焦燥感を抱くことになり、精神的苦痛を被った。
 避難を余儀なくされ、生活物資の調達や周辺住民との交流、伝統文化の享受といった経済的、社会的、文化的な生活環境が基盤から失われた場合や、ある程度復興しても生活環境が大きく変容した場合は、慣れ親しんだ生活環境を享受することができなくなり、精神的損害を被ったといえる。
 暫定的な生活本拠での生活を続けるか、元の居住地への帰還を断念するかの意思決定をしなければならない状況に置かれることや、生活の継続や帰還の断念による精神的損害もある。」
 この訴訟の争点は、東電役員の法的責任をめぐる刑事裁判、株主代表訴訟の争点と、重なり合う点が多い。本稿においては、この判決の判示内容を確認し、これらの事件でも鋭く争われている推本の長期評価の信頼性に関する判示部分を中心に紹介し、長期評価には早期の津波対策の必要性を基礎づける高い信頼性があったことについて、原告の主張を補充的することとする。


第2 異論があったうえで、コンセンサスでまとめられた長期評価には高い信頼性が認められる

長期評価策定の目的

 判決は長期評価の策定の目的について次のように認定している。

「長期評価は,その取りまとめの主たる目的が,国民の防災意識の向上や,広く関係機関により地震防災対策に活用されることにあり,津波評価技術のように,原子炉施設の設置時に想定すべき地震や津波の評価等といった特定の施設や地域について地震や津波を評価する目的を持ったものではなく,想定津波の評価手法を示したものでもない。もっとも,原子炉施設も地震防災対策を要する施設であることはいうまでもなく,長期評価は,そのような施設のーつとしての原子炉施設の地震防災対策に活用されることも目的に含まれていたということができる。」(判決127ページ)


2 長期評価策定時における、海溝型分科会における様々な議論について

 判決は、推本策定時に、海溝型分科会において交わされた様々な議論についても詳細に認定しつつ、異論がありながら、これが多くの専門家によるコンセンサスでまとめられていった過程を、正確に認定している。
「例えば,慶長三陸地震については,メカニズムがよく分からない地震で,資料も少なく波源域も得られていないなどとの意見がある中で,明治三陸地震と同じ場所で起こったとして矛盾がないと整理がされたり,どこでも津波地震が起こるという考え方と明治三陸地震の場所で繰り返しているという考え方のどちらがよいかとの疑問に対して,慶長三陸地震がよく分からない以上,明治三陸地震の場所をとるしかないとの意見が出されたりした。また,延宝房総沖地震については,慶長三陸地震以上に震源域が明らかでなく,プレート問地震ではなく,プレート内地震であるとの指摘もあるとの意見が出るなどした。その後,慶長三陸地震,延宝房総沖地震,明治三陵地震が日本海溝沿いで発生した津波地震であるとして整理する案が示された際には,延宝房総沖地震を入れることへの異論が出るなどし,延宝房総沖地震を津波地震とする見解と津波地震でないとする見解の両論を併記してはどうかとの意見も出たが,その上で波源域が明らかとはいえない慶長三陸地震を入れるとこれが明らかになっているように見えてしまうなどの意見もあった。」
「このようなさまざまな意見が交わされる議論を経て,海溝型分科会では,最終的には,三陸沖で地震が起きる確率を示すことが重要であるなどの見解もあったことから,不確実であることは明記することなどとして,上記三つの地震を三陸沖北部から房総沖の日本海溝寄りの領域で過去400年間に発生した津波地震として扱うこととされたものであり,このような形で公表すること自体への異論が示された形跡はない。」(判決128ページ)


3 長期評価は法に基づき設置された国の機関である地震本部の地震調査委員会として公表されたものである

 そして、判決は、長期評価が法に基づき設置された国の機関である地震本部の地震調査委員会として公表されたものであることを正確に認定している。
 「三陸沖北部から房総沖の日本海溝寄りの領域について,これを一つの領域として扱い,この領域で過去400年に3回の津波地震が生じた可能性があるとする内容の長期評価をとりまとめるに当たっては,海溝型分科会の委員が,それまでの科学的知見を整理しながら,どのように過去の地震を評価するかについての議論を重ね,科学的知見が熱していない点については,異論も示されるなどした中,最終的に,専門家集団である海溝型分科会としての意見として集約したので、あって,それは,長期評価部会及び地震調査委員会に諮られ,法に基づき設置された国の機関である地震本部の地震調査委員会として公表することとされたものである。」(判決129ページ)


4 さまざまな異論の検討を経てまとめられた見解は、「科学的信頼性が高められているともいうことができる」

 そして、結論として、長期評価が、さまざまな異論の検討を経てまとめられたものであり、このような経過自体から、「科学的信頼性が高められているともいうことができる」と、きわめて常識的で、良識に沿った判断が示されている。
 「長期評価は,上記(イ)のとおり,国の機関である地震本部に設置された地震調査委員会において,地震学,津波学等の専門家による種々の議論を経て取りまとめられ,公表されたものであって,その内容も,過去の大地震に関する資料に基づき,それまでの研究成果等を整理し,専門的・学術的知見を用いて将来の地震の発生についての見解を形成したものであることに鑑みれば,相応の科学的信頼性を有するものと評価することができる。
 なお,長期評価の主たる目的が,国民の防災意識の向上や,広く関係機関の地震紡災対策への活用にあることは前記のとおりであり,国民一般に地震発生の可能性を分かりやすく示し,いわば警鐘を鳴らすという観点がとりまとめの方法に反映されている面があり,長期評価自体において言及されているとおり,その後の精度の向上が期待されているものであることは否定できないが,それによって,長期評価の科学的信頼性が大きく減殺されるものではない。
 また,上記(イ)のとおり,とりまとめに向けた議論の過程で,三陸沖北部から房総沖の日本海溝寄りという領域で過去に3回の津波地震が発生したと整理することについては,いくつかの異論が示されたのであるが,長期評価の策定から現在に至るまで,地震や津波の発生メカニズムの解明は未だ十分でなく,その進展の途上にあるのであって,そのような状況の下では,異論が示されることは不可避で、あり,また自然なことというべきであって,そのような異論がある中で,過去の知見が整理され取りまとめられたという点においては,その科学的信頼性が高められているともいうことができる。」(判決129-130ページ)


第3 津波評価技術と長期評価の関係について

1
 津波評価技術とは何のためのものか

 判決は津波評価技術と長期評価の関係について判示をしている。しかし、津波評価技術は、津波の波源を設定した後の、津波高さの評価のための方法を示したものであり、津波波源について、検討を経て一定の見解を示したものではない。
 判決では、このことが誤解されている。
 判決はまず、津波評価技術の位置づけについて判示する。
 「津波評価技術は,原子力発電所の設計津波の設定を目的として策定されたものであり,既往津波の断層モデルを設定し,想定津波を選定して設計津波水位を検討するという手法を提示するもので,論理的,分析的であるだけでなく,設計津波水位を検討する過程で、の想定津波の波源領域区分の設定は,地震地体構造の知見に基づいており, 『これまでに培ってきた知見や技術進歩の成果を集大成して,現時点で確立しており実用として使用するのに疑点がないものを取りまとめたもの』とされているとおり,それまでの科学的知見を集約したものであるということができる。」としている。
 このまとめは、津波評価技術が「既往津波の断層モデルの設定」だけを目的とするように読み取れる点は疑問であり、津波評価技術も、七省庁手引きなどと同じように既往津波が特定されない場所での「想定津波」を想定すべきとしていた。この点を除けば、この認定は正しい。
 続いて、次のとおり、「その策定に関与した専門家や議論の過程,そしてそれを公表した主体のいずれにおいても,科学的信頼性の観点からみて,一方が他方に比して優位であるということはできない。」として、津波評価技術によって長期評価の信用性を低めることはできないと判示し、結果として国として長期評価に基づく検討が必要であったとの結論を導いており、結論においてはこの判断は正しいといえる。
 「津波評価技術と長期評価のいずれについても,地震学,津波学等の相当数の専門家を含む構成員が議論を重ね,しかも双方の議論に関与した専門家もある中で,その議論の結果として得られた見解を,一方は土木学会という学術的権威のある学会が,他方は地震本部という国の機関が公表したものであり,その策定に関与した専門家や議論の過程,そしてそれを公表した主体のいずれにおいても,科学的信頼性の観点からみて,一方が他方に比して優位であるということはできない。」


2 土木学会の津波評価技術は福島沖の日本海溝沿いの津波地震の可能性を検討して出されたものではない

 この判決は、土木学会の津波評価技術が、福島県沖における津波地震の可能性について検討し、福島沖で津波地震が起きないと判断していたことを前提としたうえで、二つの見解を比較している。
 判決78ページは、この前提について「福島第一原発付近の設計想定津波」との表題の下に、「津波評価技術では, 日本海溝沿いの海域において,北部では海溝付近に大津波の波源域が集中しており,津波地震・正断層地震も見られる一方,南部では,1677年の延宝房総沖地震を除き,海溝付近に大津波の波源域は見られず,陸域に比較的近い領域で発生していると整理された(丙ロ112・2-26頁)。
 この結果,津波評価技術では,福島県沖(日本海溝寄り)においては,1938年の福島県東方沖地震のみが既往の地震であり,福島県沖の日本海溝沿いでは津波地震が発生していないとし,福島県東方沖地震に基づくMw 7. 9の断層モデルを基準断層モデルとして設定したが,福島県沖の日本海溝沿いの領域には,津波の波源が設定されなかった(別紙12 「津波評価技術日本海溝沿い及び千島海溝沿いのプレート境界付近の断層モデル」参照) (丙7・1-59頁,丙112・2-29頁)。」
 この「福島県沖の日本海溝沿いでは津波地震が発生していないとし,福島県東方沖地震に基づくMw 7. 9の断層モデルを基準断層モデルとして設定したが,福島県沖の日本海溝沿いの領域には,津波の波源が設定されなかった」との認定は、東電と国の主張にもとづく認定であるが、前提を欠く議論である。
 土木学会では福島沖で津波地震が起きるかどうかの検討などはされていないのである。
 このことは、次に紹介する群馬訴訟の控訴審において、実施された津波評価技術の策定の中心人物であった東北大学の今村文彦氏による最新の証言記録や千葉訴訟における地裁段階での佐竹証言で明らかにされてきたところである。このことが踏まえられていないことは残念である。


3 添田氏による群馬訴訟控訴審における今村証言の紹介

 この点については、以下のジャーナリストの添田氏による群馬訴訟控訴審の公判報告を紹介する(2018年12月18日 添田孝史 「土木学会で安全確認実は検討していなかった。」ウェブサイト レベル7への投稿
 「土木学会で安全確認」実は検討してなかった - level7 (level7online.jp))。
 「福島第一原発事故で、避難した住民が東京電力と国に損害賠償を求めた群馬訴訟の控訴審第4回口頭弁論が12月13日、東京高裁(足立哲裁判長)で開かれ、国が申請した今村文彦・東北大学教授(津波工学)が証言した。
 今村教授は、土木学会が原発の津波想定(土木学会手法)を2002年にまとめた時の中心メンバーだ。その際、福島沖の日本海溝沿いに将来津波が起きるのかどうかについてどう考えていたのか問われ、「詳細な検討はしていない。今後(2003年以降)の検討課題だった」と証言した。
 「土木学会手法は、福島第一の沖合の日本海溝で津波は起きないと判断していた」と国や東京電力は裁判で主張している。しかし、土木学会では、検討さえしていなかった事実が明らかになった。法廷では、福島沖の津波予測について、以下のようなやりとりがされた。

原告側・久保木亮介弁護士
 (土木学会第一期1999年〜2001年で)既往地震やこれまでの知見のレビューをした。ただ、日本海溝沿いの、過去に大地震の発生が確認されていない領域に、将来の大地震を想定するか否かの詳細な検討はしてない。こういう理解でいいですか。
今村教授
 はい、第一期では。
東電側弁護士
 土木学会手法はあくまで技術的なシミュレーション方法のみを示したもので、これに当てはめる波源は検討していない、持ち越しになったという主張もあるのですが、その点について証人のご認識は
今村教授
 第一期についてはそのとおり。第二期(2003年〜05年)以降で将来の可能性についても確率的に検討した。
東電側弁護士
 第一期では、土木学会手法を検討しています。その策定の過程で、確定論としてどこまでの津波を取り込むか、そういう検討もしていないのでしょうか
今村教授
 当時の研究のレビューはしました。しかし起きていないところにどういう地震津波が起きるかどうか、そういうところの議論は、第二期以降になります。

 (千葉訴訟に関する東京高裁判決も引用している-引用者注)土木学会手法が示している波源域(地図1、赤線は筆者による)で、福島沖の日本海溝沿いは波源が示されていない。これは、検討していないから白いのであって、将来津波が起きないと判断して白くしていたわけではないことが証言でわかった。
 国や東電は、「原発に標準的に用いられてきた土木学会手法は、福島沖の日本海溝沿いで大津波を想定しない。だから福島第一原発に巨大津波は予測できなかった」「福島県沖の海溝沿いについては波源が設定されていないのは、地震地体構造等をふまえて検討した結果、将来津波は発生しないと判断されていたからだ」などと主張してきた。
 一方、政府の地震調査研究推進本部は、2002年7月に、福島沖を含めて日本海溝沿いのどこでも巨大な津波を引き起こす地震が起きうると予測していた(地図2、オレンジ色の領域)。十数人の研究者が議論して、とりまとめている。これにもとづいて計算すると、福島第一で津波は高さ15.7mになることがわかっていた(東電による2008年の計算結果)。
 これについて、国や東電は「地震本部の長期評価は信頼性が低く、土木学会手法の方が優れている」と述べてきた。ところが、今回の今村教授の証言で、土木学会手法は、福島沖に将来起きる津波について、詳しい検討をしていなかったことが示された。
 同じく土木学会手法の策定に関わった佐竹健治・東大教授も千葉地裁で国側の証人として証言した際、「そもそも土木学会の津波評価部会では、個別の地域で地震発生可能性というようなことを議論はしておりません。それは(地震本部の)長期評価部会でやっていること」(2015年11月13日)と述べている。
 土木学会手法の波源設定の信頼性について、国側や東電のこれまでの主張は、国側の証人によって、説得力を失ってしまったようだ。
 口頭弁論で、原告側と、国や東電側、双方からの質問に対し、ほとんどの場合は「そうですね」と肯定し続けた今村教授。しかし、福島沖で将来予測をしたかどうかについては、東電の「検討していたのではないか」という問いをはっきり、繰り返し否定した。
 東電側の弁護士は三度にわたって表現を換えて質問し、「福島沖も検討していた」という発言を今村教授から引き出そうとしていたが、今村教授の答えは変わらなかった。」
 このように、土木学会の津波評価技術が福島沖では津波地震が起きないという見解に基づいているという、千葉訴訟東京高裁判決の認定には根拠がない。しかし、この点の誤りは、判決の結論に影響を及ぼさないし、むしろこの誤りを正すことで、この判決の正当性は著しく強化されるといえる。


第4 国は、長期評価に基づく対策を命ずるべきであった。

国の規制権限行使のための要件

 東京高裁判決は以上のとおり、津波評価技術の位置づけ、判断された事項の範囲について、東電・国の主張に引きずられた誤解があり、このような誤解は東電・国による誘導の結果である。
 しかし、このことは、判決の結論には影響を与えていない。むしろ、この誤りが正されれば、その論理はより強固なものとなるといえるであろう。
 そして、判決は、以下のように判示し、国は長期評価に基づく津波対策を講ずるように東電に命ずるべきであったと判示している。
 すなわち、判決は、「原子炉施設についての技術基準適合命令の発令という規制権限を行使する要件の具備,すなわち,当該原子炉施設が技術基準に適合しているか否かの判断については,その権限主体である経済産業大臣のその時点での科学的,専門技術的知見の下における専門的な判断に委ねられており,その判断をするに当たってどのような科学的知見を基礎とするかについても,規制機関である経済産業大臣の専門的な判断に委ねられているというべきである。そして,その判断が著しく合理性を欠き,規制権限行使の要件の具備の判断に当たってその基礎とすべき知見を基礎とせず,そのために,経済産業大臣において技術基準適合命令を発する要件が備わっていることを認識し得たにもかかわらず,これを認識せず,同命令を発しなかったときは,これを発しなかったことは,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くこととなると解される。」と判断の基準となる考え方を定立する(判決134ページ)。この考えは伊方最高裁判決にもとづいたものである。
 このように,科学的知見の採否は規制機関の専門的判断に委ねられているものではあるが,原子炉施設についての規制権限の目的が,ひとたび事故等により放射性物質の大量放出という事態が生じれば,極めて深刻な被害を広範囲かつ長期間にわたってもたらす危険性がある原子炉施設について,万全の安全対策を確保することにあることに鑑みれば,規制機関がある科学的知見を基礎として原子炉施設に対する規制権限行使の要件の具備について判断してきたが,その科学的知見とは異なる新たな知見が示された場合において,その新たな知見に,それまで判断の基礎としてきた知見と少なくとも同程度の科学的信頼性があると評価することができるようなときは,規制機関が,当該新たな知見を規制権限行使の要件の具備の判断の基礎としないとすることは,著しく合理性を欠くこととなるというべきである。」(判決134ページ)と、事故の重大性という伊方最高裁判決にも示されていた事情にもとづいて、国の裁量判断に厳しい枠はめを求めている。この点も、きわめて常識的で、最高裁の判断を意識したものと言えるだろう。


2 本件に対するあてはめ

 続いて、判決は、以上に定立した規範を事件に次のように当てはめている。
 すなわち、「これを本件についてみると,規制機関である経済産業大臣は,相応の科学的信頼性を有する知見である津波評価技術については,原子炉の設置許可処分に先立つ審査の際に津波評価技術の考え方と同様の考え方を用いて津波に対する安全性を確認するなどの方法でこの知見に依拠して規制権限行使の要件具備の判断をしていたのであるが,長期評価に示された見解については,上記のとおり,津波評価技術と少なくとも同等の科学的信頼性を有していたのであるから,それにもかかわらず,原子炉施設についての規制権限行使の要件の具備の判断においてこれを基礎としないとすることは,いかなる科学的知見を基礎とするかが規制機関の専門的判断に委ねられていることを考慮しても,著しく合理性を欠くというべきである。」と判断しているのである(判決134-135ページ)。
 そして、具体的には国・原子力安全保安院には次のような行動が求められていたと判示する。
 「そうすると,規制機関としては,福島第一原発についての規制権限行使の要件の具備の判断に当たって,長期評価に示された見解を基礎として福島第一原発に到来する可能性のある津波を評価すべきであったのであり,それによって,福島第一原発が津波による損傷を受けるおそれがあることを認識し得たと認められる場合には,技術基準に適合しないと判断し得たこととなる。」
 「津波地震の発生領域を設けて震源域を設定し,津波のシミュレーションを行うことは,津波評価技術において示された科学的信頼性を有する手法であるから,具体的には,規制機関としては,まずは,長期評価に示された見解,すなわち,三陸沖北部から房総沖の日本海溝寄りの領域において, M8クラス, M t (津波マグニチュード) 8. 2前後の津波地震がどこでも発生する可能性があり,その発生する津波地震の震源域については,明治三陵地震についての震源モデルを参考にして想定することができるとした見解に依拠して,上記領域内の福島県沖についても,明治三陸地震を参考にした震源域を設定して津波のシミュレーションを行うなどし,それにより想定される津波が福島第一原発に及ぼす影響の有無や程度を調査,検討すべきで、あったということができる。」(判決135-136ページ)


3 国には結果を予見することが可能であり、津波対策を命じてこれを回避することもできた

 以下、判決は東電の津波対策を放棄してきた姿勢を時間を追って詳細に認定しつつ、結論として、次のようにこの部分の結論をまとめている。
 「経済産業大症としては,長期評価が公表された後のしかるべき時期に,一審被告東電に依頼するなどして,長期評価に示された見解に依拠して福島県沖で発生する可能性のある地震による津波の評価をしていれば,福島第一原発に敷地高(0. P. + 10m) を大きく超える波高の津波が到来する危険性があることを認識し得たということができる。そして,そのような津波が到来すれば, ドライサイトコンセプトを採っていた福島第一原発の敷地内に大量の浸水が生じ,全電源喪失などにより重大な事故が発生するおそれがあるのであるから,福島第一原発は省令62号に定める技術基準に適合していないこととなり,規制機関である経済産業大臣は,そのような判断に達し得る状況にあったといえる。(判決138ページ)」
 この判示も結論は正しいが、東電が「ドライコンセプトを取っていた」という認定は東電の主張ではあるが、実際の事実とは若干異なる。東電内では機器の水密化などの他の津波対策も検討されていたことは、本件で原告が提出した東電と日本原電の津波対策に関連する数多くの証拠によって裏付けられている。そして、この判決も結果回避措置としてとるべきであった措置として、防潮堤の設置やタービン建屋、重要機器室などの水密化を想定すべきだったとし、想定すべき対策が講じられていれば、津波の影響は相当程度軽減され、全電源喪失の事態には至らなかったと認めるのが相当であると判示しており、ドライコンセプトが徹底されていて、それ以外の対策が取れなかったとは判断していない(判決143ページ以下)
 そして、判決は、結論として次のように述べる。

「防潮堤等により福島第一原発の敷地内への津波の浸入を防ぐ措置に加え,タービン建屋の水密化及び重要機器室の水密化が,規制機関において,平成14年当時においても想定することができた措置であったと認められる。そして,平成20年推計の後に一審被告東電においてさまざまな対策を検討していることからみても,これらを組み合わせることによる効果を十分に検討し,具体的措置を実施すれば,平成20年推計による津波と同等の津波,すなわち福島第一原発の敷地南側にO.P.+15.7m程度の波高の津波が到来した場合においても,全電源喪失等の重大な事故を回避することは可能であったということができる。」


第5 結論

1 判決の画期的な意義

 以上に述べてきたとおり、千葉訴訟についてさる2月19日に東京高裁が言い渡した判決は、推本の長期評価に津波対策を基礎づける高い信頼性を認めたものです。そして、国が事故の結果を予見することができ、防潮堤の設置やタービン建屋・重要機器室の水密化の措置を講ずることにより、事故の結果を回避することができたことを明確に認定しています。
 推本の長期評価に基づいて、速やかに津波対策を講ずることなく、土木学会における検討に委ね、何らの対策も講じないで、原子炉の運転を続けていた東京電力とその役員である被告らの対応が許されないものであったことも、本判決によって明らかになったといえると思います。


2 事故の真実を明らかにすることが脱原発の闘いである

 まもなく福島原発事故から10年が経過しようとしています。脱原発をめぐる闘いの最前線は、全国での再稼働をめぐる闘いと事故の真実を明らかにし、どのように語り伝えるかをめぐる闘いの二つが主戦場となっています。福島原発事故に関してはたくさんの事柄が隠されてきました。東電と国による津波対策の方針転換に関する情報の多くは2011年夏には検察庁と政府事故調の手にあったはずです。しかし、これらの情報は徹底して隠匿されたのです。私たちの闘いは原子力ムラの情報隠蔽を打ち破ってきました。この隠蔽を打ち破ったのが、検察審査会の強制起訴の議決であり、株主代表訴訟における証拠の開示であり、東電刑事裁判における指定弁護士による果敢な立証活動であったといえます。
 政府事故調と検察が真実を隠ぺいしたことはあきらかです。これらの情報はなぜ隠されたのでしょうか。考えられる推測はただひとつです。
 原子力推進の国策を傷つけるような事実は、隠ぺいするしかないと、政府事故調と検察のトップは、どこかの時点で決断したのだろうと思います。このことは、福島原発事故そのものに匹敵するほどの、行政と司法と検察をゆるがせる「もう一つ」の福島原発事故真相隠ぺい事件が起きていたのです。その背後では官邸による検察庁に対する強力なコントロールがなされていたとみることができるでしょう。
 いま、刑事裁判で明らかになっていることは、検察が起訴できるだけの証拠を集めていたということです。にもかかわらず、なぜ検察は起訴できなかったのでしょうか。
 不起訴の決定後に東京地検と福島地検で、告訴人に対して異例の不起訴理由説明会が開催されました。私たち弁護団も同席しました。その場では激しい言い争いになりました。
 当時、私たちの告訴によって、これだけの証拠を検事が集めているとは、思っていませんでした。一線の捜査検事たちは、起訴し有罪に追い詰めることができるだけの証拠固めをしながら、不起訴とせざるを得なかったのでした。説明会で、「私たちはやれるだけのことをやったのです」と述べて、私たちの前で涙ぐんだ検事もいました。事故から10年、いま、彼らはどのようにこの事件のことを思い返しているでしょうか。あのとき検察内部で起きたことを知りたいと思います。


3 司法を通じて真実を語り伝える責任

 私は、東電役員の告訴、検察審査会、刑事公判のすべての過程に関わった弁護士として、明らかにすることのできた証拠と事実を、社会に広く知らせていく責任があると考えて、「東電刑事裁判 福島原発事故の責任は誰がとるのか」を書きました。
 いま、日本の司法は危機的な状況にあるといえます。しかし、仙台高裁では、昨年9月国と東電を断罪する判決が下されました。大阪地裁では、昨年12月規制委員会による原発の規制に誤りがあることが指摘され設置許可が取り消されました。そして、2月19日には、本稿で詳しく紹介した東京高裁で再び国と東電を断罪する判決が下されました。司法はまだ生きているのです。良心を失っていない裁判官は残っているのです。
 私たちは、東電刑事裁判の東京地裁の判決では敗れましたが、同じ証拠を駆使して仙台高裁上田コート、東京高裁白井コートは、東電と国の責任を認め、その対応を厳しく断罪する判決を下してくれたのです。大飯の設置許可取り消し判決を書いた森鍵裁判長も含めて、この3人の裁判官には重要な共通点があります。いずれも最高裁で仕事をしていた経歴を持っているという点です。


4 最高裁で国の責任を確定させ、国としての脱原発を確実に

 我々が刑事裁判の控訴審で勝利することができれば、株主代表訴訟で役員の゛帰任を認めさせることができれば、仙台高裁高裁判決と前橋避難者訴訟と千葉避難者訴訟の東京高裁判決の上告審の審理にも直結することになるでしょう。
 東電の役員の刑事責任を問う刑事裁判、東電の役員の民事責任を問う株主代表訴訟と全国で闘われている避難者損害賠償訴訟との緊密な連携が求められています。
 刑事裁判の証拠内容を最高裁にきちんと理解させることができれば、我々は、最高裁でも必ず勝利することができるはずです。
 そして、最高裁における我々の勝利は福島原発事故の真実を後世に語り伝え、脱原発の国民的な合意を形成することにつながることでしょう。千葉訴訟の東京高裁白井判決によって、私たちはそのための重要な足掛かりを得ることができたのです。
 最後にあらためて、逆転勝訴判決を勝ち取ってくださった千葉避難者訴訟の原告団と弁護団に心から感謝して、結びの言葉といたします。

Last modified on 2021-02-23 20:06:34
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●東電核発電人災での国の責任も放棄…《あの未曾有の福島第一原発事故を招いた“最大の戦犯”》アベ様の責任は追及され続けるべき

2020年10月29日 00時00分46秒 | Weblog


添田孝史氏による、AERAの記事【津波リスク「計算して大騒ぎするのを避ける」とのメモも 原発事故で国が隠し続けた真実】(https://dot.asahi.com/aera/2020100800039.html)。

 《隠していたのは保安院だけではない。政府事故調査委員会も、重要な事実を知りながら、報告書に書いていないことがある。内閣府が今年7月に開示した文書から、事故調による国の責任隠しも見えてきた》。

   『●「生業を返せ、地域を返せ!」…原告団馬奈木厳太郎弁護士
      「国の対応、東電の責任を厳しく断罪する判決となっている。一審よりも…」
   『●「原子力災害伝承館」《批判…口封じ》…《安倍政権では「被災地
      切り捨て」政策がつづけられてきたが、それを菅政権も「継承」》

 原子力郷土の発展豊かな未来」「原子力明るい未来のエネルギー」「原子力正しい理解で豊かな暮らし…もうすぐ10年が経とうとしている。
 《あの未曾有の福島第一原発事故を招いた“最大の戦犯”が、他ならぬ…安倍晋三》様だ。

   『●(リテラ)「あの未曾有の福島第一原発事故を招いた
       “最大の戦犯”が、他ならぬ現内閣総理大臣・安倍晋三」

 《国の責任隠し》についてのこの記事には触れられていませんが、何食わぬ顔で《最大の戦犯》なアベ様。しかも、菅直人氏についてのデマメルマガ事件」の犯人もアベ様だ。今も何食わぬ顔で、原子力「寄生」委員会のデタラメな「お墨付き」の下、核発電所再稼働を強行し、司法も役立たず、核発電所まで輸出しようと暴走していた…大迷惑な核発電「麻薬」中毒者のトップがアベ様。《最大の戦犯》が犯罪を犯し続けており、それさへも《継承》する大惨事アベ様政権。いまだに《ベースロード電源》などと寝言を言っている始末。

   『●「想定外」という言い訳は許されない
    《実は、東電の福島第一は津波に弱く、炉心溶融の危険性があることは、
     5年前から指摘されていた想定外などではない。福島第一で
     想定されている津波、チリ地震津波クラスに遭遇すると、大きな引き波に
     よって冷却用の海水を取水できなくなるといわれる。この引き波による
     取水停止が、炉心溶融に発展する可能性を、2006年に国会で共産党の
     吉井英勝議員が質問している。
       二階俊博経産相(当時)は善処を約したが、東電は具体的な改善を
     行なわなかった。東電には地元から改善の要望書も出されているので、
     津波による炉心溶融の「危険性の指摘」を知らなかったはずはない
     百も承知だったのに、素知らぬ顔ですべての原因が想定外の巨大地震に
     あるかのように振舞っているとしたら、なかなかの役者である》

   『●”原子力発電”という箱を開ける覚悟と、(とりようの無い)開けた責任
    《この日、これまでに原発問題を国会で追及してきた吉井英勝衆院議員
     (共産)が質問。原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は昨年5月の同委で、
     電源喪失は「あり得ないだろうというぐらいまでの安全設計はしている」
     と発言していたが、この日は「当時の認識について甘さがあったことは
     深く反省をしている」と述べた。 
       これまでの法廷証言などで電源喪失の可能性を否定してきた班目春樹
     ・原子力安全委員長は「事故を深く反省し、二度とこのようなことが
     起こらないようにしたい」と答えた。 
       また、過去に同様の見解を示してきた前原子力安全委員長
     (現・日本原子力研究開発機構理事長)の鈴木篤之氏も「国民の皆様に
     大変申し訳ないと思っている。痛恨の極み」。電源喪失の事態に備えて
     こなかったことは「正しくなかった」とした》

   『●SLAPPと原発、沖縄
    《[CML 019566] 甘利明の名誉棄損訴訟にSLAPP批判
       甘利明・自民党衆議院議員がテレビ東京を提訴した名誉棄損訴訟が
     恫喝訴訟SLAPPであると批判されている。甘利氏は安倍政権の
     経済産業大臣であった。テレビ東京『週刊ニュース新書』は2011年
     6月18日に甘利氏へのインタビューを放送した。
       インタビューで取材陣は福島原発事故を自公政権の安全対策の
     不備に起因するのではないかと追及した。甘利氏は「津波は想定外」と
     責任回避するが、取材陣は日本共産党の吉井英勝・衆議院議員の
     「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の
     安全を守ることに関する質問主意書」を提示した。そこでは津波被害など
     による電源喪失に起因する原発事故の危険が指摘されている。
       福島原発事故が想定外でないことを示す事実
であるが、この趣意書を
     突き付けた直後にインタビューは中断された。インタビュー中断の事実は
     番組で報道された。この番組放送に対して甘利氏は名誉毀損として
     1000万円もの損害賠償を求めてテレビ東京を提訴した》

   『●『DAYS JAPAN』
      (2013,SEP,Vol.10,No.9)の最新号についてのつぶやき
    「さらに、斎藤美奈子さんの二つの指摘。「第一次安倍内閣時代…
     吉井英勝…「巨大地震の発生…原発の危機から国民の安全を守る
     ことに関する質問主意書」…提言を無視した結果がご覧の通りの事故である」」

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https://dot.asahi.com/aera/2020100800039.html

津波リスク「計算して大騒ぎするのを避ける」とのメモも 原発事故で国が隠し続けた真実
添田孝史 2020.10.11 08:00 AERA #原発

     (20年4月、撤去作業が終了した東京電力福島第一原発
      1、2号機の共用排気筒(c)朝日新聞社)

 東京電力福島第一原発の事故について、9月30日、仙台高裁は「国にも責任がある」とする判決を出した。東電に津波対策をとらせる立場にあった、経済産業省の旧原子力安全・保安院全くその役割を果たしていなかったことなど、国の責任を示す事実が次々に明らかになったためだ。AERA 2020年10月12日号では、国が隠し続けた原発事故の真実に迫った。

*  *  *

 隠していたのは保安院だけではない。政府事故調査委員会も、重要な事実を知りながら、報告書に書いていないことがある。内閣府が今年7月に開示した文書から、事故調による国の責任隠しも見えてきた。

 保安院は事故1年前の10年4月に、傘下の旧独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)に指示して、東北電力女川原発の津波想定が妥当か確かめさせた。そのおよそ半年前の09年9月、保安院は東電から、869年の貞観津波が再来すれば福島第一の敷地に津波が遡上する可能性があるという報告も受けていた。


■部下に送ったメール

 当然、福島第一でも貞観津波のリスクを精査しなければならない。ところが保安院は「JNESのクロスチェックでは、女川と福島の津波について重点的に実施する予定になっているが、福島の状況に基づきJNESをよくコントロールしたい(無邪気に計算してJNESが大騒ぎすることは避ける)」と東電に話していた(東電作成のメモ)

 事故調は、女川原発についてJNESが作成した報告書を集めていたことが内閣府の開示でわかった。10年の時点で、保安院やJNESは貞観津波を想定すべき確実なものと判断していたと、事故調は知っていたのだ。

 しかし事故調は、このことを報告書に全く書いていない。

 東電作成のメモにある「福島の状況に基づき」とは、東電が福島第一でプルサーマルを進めようとしていたことを指す。プルトニウムをウランに混ぜて原発で燃やすプルサーマルの実施は、核燃料サイクルを維持するために経産省が推進してきた。

 福島県の佐藤雄平知事(当時)は10年2月、プルサーマル実施の前に、国に耐震安全性の確認を求めた。保安院の森山善範審議官(当時)は同年3月24日、部下にこんなメールを送っている。

「耐震安全性の確認では、貞観の地震による津波評価が最大の不確定要素である旨、院長、次長、黒木(慎一)審議官に話しておきました」「福島は、敷地があまり高くなく、もともと津波に対しては注意が必要な地点だが、貞観の地震は敷地高を大きく超えるおそれがある」「貞観の地震について検討が進んでいる中で、はたして津波に対して評価せずにすむのかは疑問」


■開示請求「3年かかる」

 森山審議官はメールについて検察にこう説明していたことが、19年に明らかになった。

「貞観地震について審議が活発化すれば、10年8月に予定していたプルサーマル実施までに審議が終了せず、プルサーマルを推進する立場の資源エネルギー庁などから非難される可能性がありました」

 仙台高裁は、「喫緊の対策措置を講じなければならなくなる可能性を認識しながら、そうなった場合の影響の大きさを恐れるあまり、そのような試算自体を避け、あるいはそのような試算結果が公になることを避けようとしていたものと認めざるを得ない」と判断した。

 かつて九州大学副学長を務め、事故調の委員だった故・吉岡斉氏は、こう話していた。

「他の政府審議会と同様、事故調は役人主導。事務局が用意した文案にもとづいて検討する」「霞が関官僚に対して甘い傾向がある。政府が設置することの問題点はここに現れた」

 「加害者」である国の調査報告では、まだ隠されたままの事実もあるだろう。事故調が集めた文書リストの中から、疑わしい文書約60点の追加開示を7月に請求すると、「開示は3年後になる」と内閣府から通知がきた。「著しく大量である」「担当部局において、請求事案が多数ある」などの理由だった。

 最高裁で決着がつくまで、不利な情報は隠し通すつもりなのだろうか。(ジャーナリスト・添田孝史)

※AERA 2020年10月12日号より抜粋
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●東電核発電人災から8年: 《11日の夜9時すぎには、東電の社員も家族もだれ一人双葉町に残って…》

2019年03月11日 00時00分04秒 | Weblog


日刊ゲンダイの記事【私が見た「平成」/前双葉町長が語る 地震当日夜9時に東電社員とその家族は…】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/244158)。

 《井戸川克隆さん(72)は、当時の双葉町長。…実は、後で分かったことですが、11日の夜9時すぎには、東電の社員も家族もだれ一人双葉町に残っていなかった。いち早く社宅を出て、役場にいた社員も黙って消え去りましたそういう会社ですよ、東電は。現在、どこかで何食わぬ顔をして生きているんでしょうけど、ひどい話ですッ…“町長、限界ですよ”と。官邸や東電からは断片的な情報しか入らず、唯一警察官からもたらされたひと言が命を守る情報でした》。

   『●言葉が見つかりません・・・
    「須賀川市の野菜農家の男性(64)は、福島産野菜の一部に国の
     出荷停止指示が出された翌日の二〇一一年三月二十四日に自殺した。
     遺族によると、男性は原発事故後福島の百姓は終わりだ」と話していたという」。

   『●哀しい遺書: 「原子力さえなければ」
   『●ドキュメンタリー映画『わすれない ふくしま』: 
         「震災さえ」ではなく 「原発さえなければ・・・」
   『●「「3.11」から2年② 原発という犯罪」
          『週刊金曜日』(2013年3月8日、934号)
   『●「原発さえなければ」「福島の百姓は終わりだ」: 
         東京電力原発人災と自殺には因果関係あり
   『●「原発さえなければ…」: それでも川内原発や伊方原発を再稼働したいの?
   『●福島県双葉町「原子力明るい未来のエネルギー」
                  ・・・・・・いま、その〝少年〟は?

   『●消えゆく「事故を思い出して原発を議論するきっかけになるもの」
              ~「原子力 破滅 未来のエネルギー」~

   『●「東京電力が、飛散した放射性物質について…
          「無主物」だと主張」…「その無責任さに衝撃」
   『●東京電力原発人災4年目のアベ様の酷い記者会見:
         情報公開、信頼関係、オンカロ、将来的、自立、除染

   『●原発PR看板撤去=「間違った過去と向き合わない行為」
                ・・・「人間の愚かさ」にさらなる恥の上塗り
   『●双葉町長「(原発PR看板)復興した時に 
      あらためて復元、展示したい」…それは『X年後』の何年後?
   『●「故郷の川に身を投げたい衝動に駆られた」
       「早く浪江に帰りたい」…「原状回復」することも無く…
   『●今頃ようやく福島第二原発の廃炉を決断、
      一方、「あとは野となれ山となれ」な玄海原発4号機の再稼働…
   『●《余ると分かっている電力を、なぜ原発で作り続けるのか?》
                 核発電「麻薬」中毒なアベ様に忖度する九電
    「リテラの鈴木耕さんのコラム【言葉の海へ/第48回:九電の
     太陽光発電遮断から見えたこと】」

   『●「これまで東電に、8兆4000億円を超える税金が投入…
             でもって今、東電は巨大な利益を上げている…」
   『●東京電力核発電人災下の福島でも荒稼ぎした
      ゲス・ヒトデナシな詐欺師・ジャパンライフの片棒を担ぐ議員達
   『●大沼「少年」の《事故を思い出して原発を議論する
      きっかけになるもの》を撤去し…いま、政治的と言われ…

 東京電力核発電人災から8年…。《11日の夜9時すぎには、東電の社員も家族もだれ一人双葉町に残っていなかった。いち早く社宅を出て、役場にいた社員も黙って消え去りましたそういう会社ですよ、東電は》。でっ、いまや東京電力は…《これまで東電に、8兆4000億円を超える税金が投入…でもって今、東電は巨大な利益を上げている…》。
 東京電力の誰一人「責任」を取らない無責任ぶり。(絶対に不可能だからこそ、すぐさま核発電から脱するべきだというのに…)双葉町やその他の街を「原状回復」してみせよ!、出来るものなら…。
 東京電力核発電人災から8年、何の解決にも至らなかった8年。

   『●お見舞い申し上げます・・・
   『●あの3・11原発人災から1年: 松下竜一さん「暗闇の思想」を想う
   『●3.11東京原発人災から2年が過ぎて
   『●「福島原発事故の今」
        『週刊金曜日』(2014年3月7日号、982号)について

   『●3.11東京電力原発人災から4年: 
      虚しき「地球にやさしいエネルギー原子力 人にやさしい大熊町」
   『●東電核発電人災から5年: 「今や世界の笑い者…
        政権批判をいとわないキャスターの首を差し出した」
   『●東電核発電人災から6年: 4つの「生」+「命」「活」「業」「態」… 
                        どれか一つでも原状回復できたか?
   『●東電核発電人災から7年: 「村の生活は百年余りにわたり、
                 人生そのもの」…「やっぱりここにいたいべ」

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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/244158

私が見た「平成」
前双葉町長が語る 地震当日夜9時に東電社員とその家族は…
2018/12/21 06:00

     (前双葉町長の井戸川克隆さん、福島被曝訴訟で國と東電を
      相手に奮闘中(C)日刊ゲンダイ)

■平成23年3月11日 福島第一原発事故

 東日本大震災が発生した2011(平成23)年3月11日午後2時46分。震度6を超える大地震による津波は、福島県双葉町大熊町にある東京電力福島第1原子力発電所に襲い掛かった。その直後、おぞましい原発事故が発生した。井戸川克隆さん(72)は、当時の双葉町長。いま、静かにあの日を振り返る。

 地震発生時、井戸川さんは隣町の町村会館の駐車場に止めた車中にいた。

 「グラグラッ。地震だ!あまりの強い揺れに、私はハンドルにしがみつくしかなかった。体が浮き沈みするような、今まで経験がない揺れでした。これは、もうダメだ。原発は大丈夫か。短時間にさまざまなことが頭をよぎりました。なぜか、菅総理も頭に浮かんできて、不安になった。あとは、早く収まってくれ――。その一心でした」

 揺れが収まると、井戸川さんは双葉町役場に車を走らせた。国道6号が混み始めていたため、とっさに信号が少ない“浜街道”と呼ばれる裏道にハンドルを切る。

 「ラジオから、3メートルの大津波警報が流れてきました。ですが、道路はあちこち陥没してるし、下水道管は飛び出していてスピードが出せない。通常30分で帰れるところを1時間以上かかって、役場に着いたのは午後4時ごろ。実はこの道は間もなく津波で流されたんです。

 役場の中は書類やファイルがことごとくひっくり返って、職員たちは呆然とたたずんでました。4階建ての庁舎を1階から被害状況を確認しながら最上階の議会議場にたどり着いた。と、東側の窓の前で10人ほどの職員が、声にもならない声を上げていました。津波が迫ってたんです。庁舎と海の間にあったはずの松林が水没して消え、庁舎に近い集落2カ所も海の中に。ショックで言葉もありませんでした」

 11日の夜は避難所支援などに徹夜で対応する。そして翌早朝、政府からの避難指示が出る。井戸川さんが防災無線のマイクの前に立ったのは12日午前5時44分のことだ。

 「第一声は、“町民の皆さん、ただ今、福島第1原発で地震による事故が発生しました”でした。官邸から海岸から半径10キロ以内に避難指示が出されたので、町民に“急いで避難してください。避難先は川俣町です”と呼びかけた。ですが、絶望感と悔しさで涙が出てきて声が詰まってしまった。双葉町のほぼ全域が10キロ圏でしたから……。

 実は、後で分かったことですが、11日の夜9時すぎには、東電の社員も家族もだれ一人双葉町に残っていなかったいち早く社宅を出て、役場にいた社員も黙って消え去りましたそういう会社ですよ、東電は現在、どこかで何食わぬ顔をして生きているんでしょうけど、ひどい話ですッ

 3月12日の昼。役場の南側の窓に設置していた線量計の針が振り切れたという。1号機のベント放出があった時刻だ。

 「役場に頭から足まで隠した真っ白のフル装備の警察官が近寄ってきて、私に耳打ちしました。“町長、限界ですよと。官邸や東電からは断片的な情報しか入らず、唯一警察官からもたらされたひと言が命を守る情報でした。私は6人の職員と一緒に、12日午後2時をもって最終退避命令を出したんです。そして、午後3時36分。私は双葉町福祉施設がある現場で、忌まわしい光景を目にしたんです。

 まず、ド~ンという地響きのような音1号機の爆発音でした。その4、5分後に空からぼたん雪のようなフワフワした断熱材が静かに駐車場に舞い降りた。警察官や自衛隊員、バスの運転手ら約300人が見たんですよ。あの時、“これで死ぬなって思いました

 この情報は政府も県も無視官邸は原発事故後、ただちに影響はないとも発表。井戸川さんたちの声はかき消された。

 19日、井戸川さんは双葉町民約1200人を引き連れ、川俣町からさいたまスーパーアリーナに避難。バス40台での移動は歴史的な避難行動だった。
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