フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

朝鮮族研究学会国際大会を覗かせてもらう

2009-12-12 22:48:35 | research
前回にもちょっと触れたように、1月中旬は中国東北部を訪ねる予定で、今日はたまたま目白大学で行われた朝鮮族研究学会国際大会に参加させてもらうことにした。

中野に近い東西線の落合駅までは、じつは僕の住む千葉からは1時間あまりで行くことができる。10時からの大会だったが、10分前に駅につき、そこから10分ほどを歩くことになる。駅から地上にあがると、そこは首都高中央環状線の坂道になっていて、いつか作るつもりの環状線の脚なのか、ゴミ焼却センターの煙突のような四角い塔がその道の真ん中にどん、どんと立っているのが見えた。へーと思っていると、後ろからものすごい人数の年配の一団が追い越していく。みな、リュックを背負っているのと、なにかタグをつけているので、町歩きツアーだったかもしれない。歩くのも速くて、かなり迫力あり。

信号のところから狭い道に曲がって住宅地に入っていくと、そこは古い家と新しい家が混在する不思議な風景が続いてる。コンクリート打ちっ放しの家があると思えば、木造の住んでいるのかいないのかわからない家や、昭和の雰囲気絶大の歯科医院があったりする(写真参考)。そんな家並みが坂道の両側に続いているわけだ。この坂道は名前がついているようで、江戸時代の地図を見たら、もとの姿がわかるのかもしれない。

ようやく目白大学に到着して、学会で手続きをすませる。面白いのは参加料にお弁当がついていたこと。ぼくは午前の研究発表の分科会が終わったらすぐに帰ることにしていたので断ったのだが、たしかに住宅街にあるから、こんな気づかいも必要なのかもしれない。朝鮮族研究学会を運営しているのはどうやら日本に住む中国朝鮮族の研究者や経済関係の人々のようだった。スライドや資料は日本語で示されていたが、発表自体はほとんど朝鮮語(韓国語も?)で行われていた。

ちょっと遅れて入った最初の発表は、貿易関係の研究所の人で、延辺自治州と新潟のニット産業の小さな町の経済関係の事例を報告していた。延辺はまさに中国の辺境にあたるが、そこは海に近く北朝鮮にもロシアにも近いために、経済開発がさかんな場所でもあるらしい。朝鮮族の文化資本をどのように利用すべきか、なんていう政策的な発表もあった。韓国の高麗大学の学者は到着が遅れてその分科会自体のスケジュールがめちゃくちゃになってしまったのだが、滔々と北京郊外の朝鮮族在住地域の社会経済的な調査を報告して、中国籍でかつ朝鮮語を使用できる朝鮮族の経済的優位について話していたのが印象に残っている。

文学研究のコメンテーター役の研究者は、私たちは3言語を所有しているのではなく3言語に所有されているのだ。だからアイデンティティといった閉じた系をもちにくく、むしろ3言語に開かれた系を持っている、なんて発表者の研究とほとんど関係のない話をやっていた(この研究者だけ日本語だったので理解できたわけだ)。高麗大学の学者の話にもこれは通じている話なのだろう。

残念ながら朝鮮語がわからないので延辺の知識はあまり増えなかったけれど、日本には5万人の朝鮮族と自分を考えている人々が住んでいて、その中には研究者もビジネス界の人々もおり、そして国際大会をも運営するほど学会活動は活発な様子だった。そう、活発で明るい、それが大会を覗かせてもらった印象だ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 論文間に合わず | トップ | 菊地君の博論文審査会 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

research」カテゴリの最新記事