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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

敵機は必ず海中に墜落した(梅川少尉)

2023-05-30 03:40:46 | コラムと名言

◎敵機は必ず海中に墜落した(梅川少尉)

 藤本弘道著『踊らした者――大本営報道秘史』(北信書房、1946年7月)から、「四・一八空襲」に関する記述を紹介している。本日は、その二回目。

 その不確実発表は何処から生れたか。
 九機も撃墜された米機の残骸を誰一人も確認してゐない。またその墜落したのではないかと思はれる様子をも都民の誰もが見てゐなかつた。
 同月二十二日の各新聞紙上にこの空襲に関して陸軍省にもたらされた報告として、○○部隊梅川少尉談として、
《十八日午後零時五十分頃水戸飛行場上空を飛行中低空南進せんとする敵のロツクヒード・ハドソンと思はれる一機を発見、私は直ちに敢然これに攻撃を加へ、南方に逃げんとする奴を飽くまで喰ひ下つて追跡、石岡東方上空で高度百メートル以下に追ひ詰め射撃した。敵機はガソリンを機体後方に吹き流しつつ更に千葉県干潟〈ヒガタ〉飛行場上空で大火災を起し、漸次低空に降下海上に逃れ始めた。私はこれを何処迄も追はうと思つたが、自機の燃料の関係で残念乍ら追撃を断念したため墜落を確認することが出来なかつたが、あの状態より判断して敵機は必ず海中に墜落したことと思ふ。》
とあり、次いで○○飛行部隊戦闘経過の慨要報告として、
《十八日午後零時十二分水戸上空に敵機二機現るの情況報告に接し、直ちに出動、京浜上空にて待機中、同一時過ぎ、高度一千メートル以下にて西進中の米機ノース・アメリカンB25と覚しき敵双発一機を発見、品川沖二キロ附近より編隊は猛然これに攻撃を開始す。周章狼狽せる敵機は高度を低下せるも、この時○○附近より高射砲の攻撃を受け、さらに超低空にて退避せんと、城西地区より相模方面に回避しつつ敵は小癪にも機銃を以て応戦、高度百メートル以下にて○○河に沿うて海上に出づ。わが急追を恐れ、残存爆弾を数発海上に捨て上昇を開始す。この機を逸せずわが方は猛然攻撃し、伊豆大島に近き海上高度千五百メートル附近にて敵機の右発動機に黒煙の揚るのを認む。この頃より敵機は徐ろに〈オモムロニ〉機首を下げつつありしが、瞬時にして急速に前方にありし断雲中に姿を没し去れり。当時の情況より見て爾後遠く逃走し得ざることは疑ひを容れず海上に撃墜されたものと判断す。》
とある二報告を掲載して、その本文に、
《これらの報告を綜合すると、相次ぐ敗戦の申訳に我が本土の空襲を狙つた米機は、何等その目的を果すことなく辛くも海上へ逃げ去るつたといふものの、その殆どが太平洋の藻屑となつたことは疑ふ余地がないのである。》
 と書いて『九機撃墜』戦果の裏付けを一般国民に対して行つたのであるが、この二報告を何故新聞に掲載しなければならなかつたかといふ理由は別問題として、この報告そのものは懸値〈カケネ〉なしのもので、むしろ東部軍に報告され発表された戦果の確実性のあるものであるといへるが、それとても内容を熟読すれば判るやうに絶対的確実なる戦果とは言ひ得ないのである。〈86~89ページ〉【以下、次回】

 ドーリットル空襲で用いられた航空機は、全機、ノース・アメリカンB25ミッチェルであった。梅川少尉は、そのうちの一機を発見し、これについて「ロツクヒード・ハドソン(Lockheed Hudson)と思はれる」と報告した。この両機は、ともに双発動機、双垂直尾翼であって、外見がよく似ている。

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