◎講談社学術文庫『第二芸術』と市民文庫『第二芸術論』
創刊のころの講談社学術文庫に、桑原武夫『第二芸術』(一九七六)という一冊がある。これとよく似たタイトルの本に、桑原武夫『第二芸術論――現代日本文化の反省』(河出書房、一九五二)がある。後者は市民文庫の一冊である。
長い間、私は、講談社学術文庫の『第二芸術』は、市民文庫の『第二芸術論』を復刻したものと思い込んでいたが、先日、両者を比較してみたところ、そうでなかったことに気づいた。講談社学術文庫の『第二芸術』は、市民文庫の『第二芸術論』に収録されている十七篇のエッセイのうちから二篇を選び、それに六篇のエッセイを加えて再編集された本であった。しかし、講談社学術文庫版に、そのことについてのコトワリはない。また、講談社学術文庫版を編集したのが誰だったのかについて説明もない。
参考までに両者の目次を以下に掲げておく。
市民文庫『第二芸術論』
日本現代小説の弱点
模倣について
文学修行
三好達治君への手紙
第二芸術――現代俳句について
芭蕉について
谷崎氏のインエイ・ライサン
横光氏の秋の日
趣味判断
断想
文芸俗話
文化院の問題
文化の将来
ものいいについて
むずかしすぎる
ブウルデル雑記
西洋文学研究における孤立化について
講談社学術文庫『第二芸術』
まえがき
第二芸術――現代俳句について
短歌の運命
良寛について
ものいいについて
漢文必修などと
みんなの日本語――小泉博士の所説について
伝統
日本文化の考え方
解説 多田道太郎