10月を迎えた。
入院125日。
娘の病室を訪ね、夕食の終わりから、面会時間終了時間の夜8時過ぎまでいて、娘に「おやすみ」を言って帰る。
それが、私の日常になっている。
娘は、2週間前のよかった状態になかなか戻らない。
普通の応対はできるのだが、今いる場所が病院と分かっていたのに突然わが家になったりカラオケ店になったりすることでわかるように、現実に空想(妄想?)が入り込んでしまうことが多いのだ。
だから、そのことを自覚させようと、毎日こんこんと話をするのである。
「けいれんを起こして入院した。」
「けいれんが起きるたび、脳に影響が出て、記憶が悪くなり新しいことが覚えられなくなるんだね。」
「この2つを治すために、入院しているんだよ。」
娘は、自分の両腕にできた無数の「あざ」のようなものを気にする。
「それは、点滴のあとなんだよ。4か月も入院して病気と闘ってきたんだ。だから、両腕のいろいろなところに点滴をしてきたんだ。それは、おまえががんばって、病気と闘ってきた証拠なんだよ。」
「点滴を腕にしていたけど、脳に障害が起こると、時々その点滴を抜いちゃうことがあるんだ。だから、今は、胸にしているんだ。」
「腕や足や体がベルトで締められてしまうのも、そのためなんだ。無意識のうちに点滴を抜いたり暴れたりしないようにしてあるんだ。」
娘に、入院は4か月に及んでいることを告げる。
救急車で運ばれてきてから、何度かけいれんを起こし、そのたびに具合が悪くなったこと。
ICUで、血液の入れ替えのような血しょう交換を行って、約3週間も麻酔で眠らされていたこと。
人口呼吸器をつけていたから、のどが管で影響を受けて、しゃべれない時、食べられない時もあったこと。
2か月半もICUに入っていて、9月9日にやっと一般病棟に戻ったこと。
そうすると、娘は、だいたいポロリポロリと涙を流す。
そんなに大変だったのに、自分が何も覚えていないことが悔しいのだ。
「ここまでこうしてがんばって病気と闘ってきたのだから、元気になろうな。」
そう言って娘を励ます。
娘はうなずく。
話もすんなり聞けるわけではない。
時々、ぼうっとしている。
「頭がぐちゃぐちゃする。」と、時々娘は言う。
考えたくなくても、様々なことが勝手に娘の頭の中を巡るらしい。
そうこうしているうちに、またいつの間にか現実と妄想が混在し始める。
そういう娘の大変さを思う。
どれが現実だか、よくわからなくなるのだから。
そして、わかったと思っても、また翌日は、もう忘れてしまう。
忘れてしまうから、やっていられるのかもしれないが…。
涙をこぼす娘のつらさが伝わってくる。
「でも、本当のことを教えてもらう方がいい。」
と、娘は言う。
こんなふうに、毎日8時過ぎまでを娘と過ごし、帰宅の途につく私。
夕食を食べると、9時を回る。
でも、娘のために時間を使っているのは、とても貴重な気がしている。
また明日も、娘に会いに行く。
少しでもよくなっていることを願いながら…。
10月。
今年、夏を知らなかった娘は、秋を迎えている。
入院125日。
娘の病室を訪ね、夕食の終わりから、面会時間終了時間の夜8時過ぎまでいて、娘に「おやすみ」を言って帰る。
それが、私の日常になっている。
娘は、2週間前のよかった状態になかなか戻らない。
普通の応対はできるのだが、今いる場所が病院と分かっていたのに突然わが家になったりカラオケ店になったりすることでわかるように、現実に空想(妄想?)が入り込んでしまうことが多いのだ。
だから、そのことを自覚させようと、毎日こんこんと話をするのである。
「けいれんを起こして入院した。」
「けいれんが起きるたび、脳に影響が出て、記憶が悪くなり新しいことが覚えられなくなるんだね。」
「この2つを治すために、入院しているんだよ。」
娘は、自分の両腕にできた無数の「あざ」のようなものを気にする。
「それは、点滴のあとなんだよ。4か月も入院して病気と闘ってきたんだ。だから、両腕のいろいろなところに点滴をしてきたんだ。それは、おまえががんばって、病気と闘ってきた証拠なんだよ。」
「点滴を腕にしていたけど、脳に障害が起こると、時々その点滴を抜いちゃうことがあるんだ。だから、今は、胸にしているんだ。」
「腕や足や体がベルトで締められてしまうのも、そのためなんだ。無意識のうちに点滴を抜いたり暴れたりしないようにしてあるんだ。」
娘に、入院は4か月に及んでいることを告げる。
救急車で運ばれてきてから、何度かけいれんを起こし、そのたびに具合が悪くなったこと。
ICUで、血液の入れ替えのような血しょう交換を行って、約3週間も麻酔で眠らされていたこと。
人口呼吸器をつけていたから、のどが管で影響を受けて、しゃべれない時、食べられない時もあったこと。
2か月半もICUに入っていて、9月9日にやっと一般病棟に戻ったこと。
そうすると、娘は、だいたいポロリポロリと涙を流す。
そんなに大変だったのに、自分が何も覚えていないことが悔しいのだ。
「ここまでこうしてがんばって病気と闘ってきたのだから、元気になろうな。」
そう言って娘を励ます。
娘はうなずく。
話もすんなり聞けるわけではない。
時々、ぼうっとしている。
「頭がぐちゃぐちゃする。」と、時々娘は言う。
考えたくなくても、様々なことが勝手に娘の頭の中を巡るらしい。
そうこうしているうちに、またいつの間にか現実と妄想が混在し始める。
そういう娘の大変さを思う。
どれが現実だか、よくわからなくなるのだから。
そして、わかったと思っても、また翌日は、もう忘れてしまう。
忘れてしまうから、やっていられるのかもしれないが…。
涙をこぼす娘のつらさが伝わってくる。
「でも、本当のことを教えてもらう方がいい。」
と、娘は言う。
こんなふうに、毎日8時過ぎまでを娘と過ごし、帰宅の途につく私。
夕食を食べると、9時を回る。
でも、娘のために時間を使っているのは、とても貴重な気がしている。
また明日も、娘に会いに行く。
少しでもよくなっていることを願いながら…。
10月。
今年、夏を知らなかった娘は、秋を迎えている。