ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

えっ!?まさかわれわれが遭難…!?その3

2012-06-04 20:04:19 | 自然・季節
道を見失い、
水筒を落とし、
鈴を無くし、
いつになったら、知っている道に出られるのか。

幸い、まだ日は高い。
もう1,2時間のうちにこの状態から脱出したい。
ただし、徐々に体力が失われている。
二人とも、足が上がらなくなってきているし、何度も枝や茎につかまって力を出してきたため腕力や握力も失われてきている。
急ごう。

迷ってから3つ目の尾根下りをしていくと、長い雪渓の沢が見えてきた。
迷って入り込んだ沢かな、と思ったのだが、どうやら違っていた。
そしてまた尾根は行き止まりとなった。
東側が崖で下りられない。
仕方がない、西側の沢の方に下りることにしよう。
やむを得ず、下っていると、ふいに道に出た。
しかも、路上にはみ出した太い枝(幹?)には、赤いペンキで登山路を示す「○」が付いていた。

やったあ!助かった!!
思わず、夫婦で抱き合い…はしなかったけれど、生存を喜び合った。
気が付けば、二人とも、靴やズボンのあちこちに泥のあとや葉の緑のあとが付いていた。


あの無くしてしまった水筒や熊鈴が、われわれの身代わりになってくれたのだ、という話にもなった。
あとは、今度は間違えずにこのルートを歩いて下って行く。
途中で、

ミヤマカタバミや
シラネアオイなどを見かけ、しばらく撮影をやめていた妻も、花の写真撮りを再開した。

道を間違えた場所に出た。
迷った理由がわかった。
川の上の雪渓で、右に上がればよかったのに、そのまま左に折れて、雪渓を上がっていたのが悪かったのだ。

しかも、正規のルートの方に、細い木々が倒れていて、それがまるで「通行止め」を示唆しているように見えていたのだ。
だから、先を行った妻は、道を間違えたのだ。
私は、妻に追いつくことばかり考えて急いでいたので、右に道があることなど気付かなかったのだ。

雪の残る時の登山は、怖い。
こうして、道が見えなくなっていることがあるから。
前の年に行っていたとはいえ、迷ってしまった。

ともかく、二人で道に迷いながらも、励まし合って行けてよかった。
互いを責めて夫婦ゲンカ…などはなかったのである。

翌日、妻も私も、全身筋肉痛。
生きるために、必死で歩き回ったりつかまったりして、体じゅうを使ったためである。
日曜日は、おとなしくしていた。(体が痛くて、おとなしくするしかなかったのである。)


来週からは、土曜日が必ず仕事上の理由で休めなくなる。
だからこそ、ちょっと無理して出かけたのだが、なるべく思慮深く行動しなければ。
そんなことを教えてくれた「遭難騒ぎ」であった。

あとは、草かぶれに弱い私の顔や体に湿疹が出ないことを祈るのみである。
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えっ!?まさかわれわれが遭難…!?その2

2012-06-04 19:55:50 | 自然・季節
「われわれは、道を間違えているのではないか!?」

…眼下に広がる雪渓の急斜面、そしてさらに急になる頭上の雪渓が、その考えを確定してくれた。
このままでは、われわれには滑り落ちる運命が待っている。
「道を間違えたらしいぞ。」
妻に言った。
妻は、驚きながらも、その事実を認めた。
「やがて右に折れる道が現れるはずだと思っていたけど、なかなかないのでおかしいと思っていた。でも、どこで間違えたのだろう?」
と、答えた。

まずは、この急斜面の雪渓から脱出するしかない。
倒木の多いやや傾斜が緩やかな場所を見つけ、必死に木にしがみついて、雪渓から脱出、やぶの中に入っていった。

生えている低いやぶの木々の隙間をぬうようにして、つかまりながら、尾根と思われる場所にたどり着いた。

道があるかと思ったが、林の中に道はなかった。
下りていけば道があるのではないか、と考え、雪渓とは反対側に下りていくことにした。

ところが、いくら下りて行っても、道は、ない。
見えたのは、新たな雪渓だけ。

ここで、完全に道に迷ったことが判明した。
ひと口ずつ水を飲み、山頂を目指すどころではなく、無事に下山することを第一の目的にすることを確認し合った。
「まずは、沢に下りていくよりも、尾根伝いに行こう。まずは、さっきの尾根まで登ろう。」
疲れてきた足腰だが、懸命に高い木々の立つ尾根まで登って行った。

尾根と思われるところを歩き始めたが、何せそこは道ではない。
生えている低木をかき分けかき分け、歩いて行く。
そして、少しずつ下って行く。
何度もすべって転びながらも、前へ進んだ。


…ところが―。
途中で、下り方が急になっていき、なんとか歩いて下って行ったものの、尾根がなくなってしまった。
あるのは、雪渓と低木のやぶばかり。
途方に暮れた。

「おにぎりを少し食べて栄養補給しよう。」
妻の話に合意し、曲がって生えた幹に座り、仮の昼食をとることにした。
「お茶ちょうだい。」
そう言われて、リュックの横に差しておいた水筒を出そうとしたら、…ない!
転んだり、やぶの中を通ってきたりした時に、落としてきたに違いない。
ペットボトルはまだ2本あるが、それまで飲んでいた水筒をどこかに落としてきてしまったようだ。
もう戻ることはできない。
仕方なくあきらめることにした。

おにぎりを食べながら、持ってきた簡単なガイドブックで、方角を確認した。
今、ちょうどお昼時だから、太陽があるのは南。
われわれの背後に太陽があるから、今見ているのは、北。
上越・直江津の港が見える。

思ったより西に来ているようだ。
目指すべき方向は、もっと東、つまり右へ右へと行く必要がある。
そういう結論を出し、再び歩き始めた。

やぶの中には、いくつもいくつも雪渓が残っていた。
しかし知っている、あの間違って歩いたあの長い雪渓ではない。
雪のとけ残った小雪渓ばかりだ。
斜面に生えるやぶとまだ残る雪渓を、滑ったり転んだりしながら、やぶに生えている笹やアジサイの類の茎を頼りに、必死でつかまって、右へ右へ、東へ東へと進んで行った。

時折見つけるシラネアオイや

サンカヨウ、

ヤマツツジに、「何も、こんな誰も見ていないところで咲かなくてもいいじゃないか。」と思いながら…、

ある場所(何せ位置がわからないからこう言うしかない)では、下の方から、ガサゴソ音がして、パキポキッと枝の折れるような音がした。
声を出してみたが、反応がない。
リュックに付けていた「牛追いの熊鈴」(カウベル)を、いっそう鳴らしながら進むことにした。

それなのに、鳴らしたばかりの鈴が、無くなっていたのに気づいたのは、その数分後だった。
鈴をつなげていた、革製のように見えたひもが、劣化して切れていた。
思わず、妻と顔を見合わせた。
熊よけの鈴までも無くしてしまうとは…。
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えっ!?まさかわれわれが遭難…!?その1

2012-06-04 18:58:38 | 自然・季節
「遭難」という言葉を辞書で引くと、「登山や航海で災難にあうこと。災難にあって死ぬこと。」と2つの意味がある。
土曜日、巡りあった災難が、後者の意味でなくてよかった。
しかし、間違いなく前者の意味のはめに陥ったわが夫婦であった。

花好きのわれらは、去年とても楽しい思いをした青田南葉山に、今年も登ることにした。
この時期、青田南葉山には沢や頂上付近に残雪もある。
そのせいで、早春から初夏までの山野草が一気に楽しめる。
そのことを昨年の今頃登って知ったわれわれ夫婦は、今年もまたこの山に登ろうと思ったのであった。

去年は、「木落沢コース」から登っていった。
山頂を目指すには、最短のコースである。
しかし、昨年下山コースに選んだ「明神沢コース」が、われわれ夫婦には気に入ったのである。
雪渓も残る場所もあるこのコースは、キクザキイチゲやミヤマカタバミなど早春の草花、そしてシラネアオイやサンカヨウなどの初夏の草花も見られたのだ。

今年は、明神沢コースから草花を見ながらゆっくり登っていこう。
そう決めて、登り始めた。

ほどなく、オオイワカガミやチゴユリ、カタクリ

など春の花々、

マイヅルソウやユキザサに

サンカヨウ、シラネアオイなどを見つけ、満足しながら次々にシャッターを切ったのであった。

ふと気づくと、先行する妻と少し離れてしまった。
目の前には、雪渓も見られた。
妻に追いつこうと、急いで後を追った。

妻は、残雪の上を歩いていた。
「今年は、まだこんなに雪が残っているのだなあ。」
そう感心しながら、厳しかったこの冬の寒さを思った。

道の両側は、崖になっていた。
崖には、

キクザキイチゲや

シラネアオイ、
ショウジョウバカマなどが咲いていた。
根づいてしまった場所で花を開かせるそのたくましさに感心した。
足元の残雪には、木の実や折れた小枝、うさぎのフン、落石などいろいろなものが散らばっていた。
われわれは、倒木の上で、時折休みながら、延々と続く雪渓の上を登っていった。

だんだん傾斜がきつくなってきた。
よく晴れた日なので残雪の表面は、靴で削ると、足場ができる。
折れた枝を杖の代わりにして突き刺しながら、歩いた。
そんな工夫をしながら、一歩一歩登っていった。


それにしても、こんな急な坂では、滑ってしまってもう下りられない。
ひたすら登っていくしかない。
しかし、何かがおかしい。
そもそも、このルートは、こんなにきつい坂だったか?
去年通った時、雪渓の上は通ったが、こんなにきつい急坂を降りた覚えはない。
こんなに雪の残った急坂では、引き返そうと思っても、滑落するしかないじゃないか―。
そう思った時、今まで思い浮かばなかった考えが浮かんだ。
「われわれは、道を間違えているのではないか!?」
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