『エネルギー基本計画案を考える』
4/11NHKラジオ 諸富 徹さんのお話の要約です。
相変わらず原発依存の計画案
去る 4月3日、自民党と公明党はエネルギー基本計画案について合意に達した。
このエネルギー基本計画案では、、
再生可能エネルギーを加速させると言いつつも、
原発をあくまでも基礎的な電源(ベースロード電源)として位置付けている。
また、事業として完全に破たんしている高速増殖炉もんじゅの延命を図るために
核廃棄物の減容量化を新たな目的として附け加えている。
結局、これまでの原子力政策と何ら変わりはない。
本来ならば、福島第一原発事故の深い反省に基づいて
エネルギー政策の大転換を打ち出すべきだ、と誰もが考えていたはずだ。
だから基本計画案では、
まず、徹底した福島原発事故の原因究明に基づく事故の再発防止と、被害者救済、
そして福島の復興というものが掲げられるべきであった。
そして、原発依存の段階的逓減や、省エネ・再エネ、
更には水素などの革新的エネルギー源による原発代替方策が議論されるべきであった。
しかし、この計画案では、
当初、冒頭にあった事故への反省というものを削除してまで、
もう一度、原発依存の世界へ戻そうとしている、と見ることができる。
貿易赤字は化石燃料輸入が理由か?
原発依存から離れられない理由として、
原発停止中の今、化石燃料の輸入で貿易赤字が増え、
電力料金が値上げされるからとしているが、これは国民をミスリードしている。
近年の貿易赤字の原因として、
原発停止による化石燃料輸入費の増加が挙げられるが、
実際には、貿易赤字の第一の原因は
日本企業の輸出競争力低下と海外生産の増加で、輸出が伸びていないのに対し、
輸入のほうは、一貫して増加が見られることにある。
化石燃料の輸入について詳しく見てみると、
原油については、輸入量は原発事故後も微減で推移しているが、
価格の高騰が著しく、また為替レートもアベノミクスによる円安で、
この両方の価格効果が相まって、化石燃料の輸入額を増加させているのが実際である。
たた、天然ガスの輸入については、数量は微増で推移しているが、
輸入価額としては、円安による高騰によること方がはるかに影響は大きい。
電力会社にコスト意識はあるのか?
つい最近、東電と関電において、
送電工事の発注に当たり、グループ企業内で談合をしたりして、独占禁止法違反を指摘された。
一般の企業なら、必死のコスト削減に努めるところであるが、
電力会社は地域独占の殿様商売で、談合して高コストであっても、
それを電気料金に上乗せできるのでいい、というわけである。
このように高コスト経営志向の電力会社のために、
高い化石燃料はやめて、安いと偽って原発を進める、政府や与党はアホか。
化石燃料の輸入費用云々の前に、こうした電力業界の体質を徹底的に改革をして
まっとうな市場競争を導入することがコスト削減には先決ではないだろうか。
いやいや、そんな事ぐらいは、自民も公明も、充分承知している。
しかし、ほおっかむりで、まず原発ありきだ。
エネルギー基本計画案の行方
そういうことで、こうした問題点があるにも拘わらず、エネルギー基本計画案は合意された。
多分、原発再稼働が始まることになるだろう。
しかし、そう容易には進められないだろう。
それは.
1.原子力規制委員会の安全基準のハードルが高くなった。
2.電力システム改革が進展すれば、価格競争が激しくなる。
そこで、事故時の費用や廃炉費用なども考え合わせて、
原子力発電が競争優位な電源でないことが明らかになる。
3.原発立地周辺自治体の反発が、事故前よりはるかに強く広くなっている。
また、大分薄れてしまったかもしれないが、国民の原発事故への恐怖は依然強いはずである。
多少の再稼働は実現されるかもしれないが、
このエネルギー基本計画案は、机上の空論で終わってしまうだろう。
原子力発電が旧に復することは決して無い。
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