ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

『揺れる社会的公器の理念』  6/4 NHKラジオ 内橋克人さんのお話

2013年06月04日 | ラジオ番組

『揺れる社会的公器の理念  6/4 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。 

最近話題になったことであるが、
米国の投資ファンドである、サーベラスが
西武HDに対して、TOBによる株式の公開買い付けを目論んだ。
しかしながら、
サーベラス側の目標まで、株式を買い増す事が出来なかった、ということで
西武鉄道の沿線の住民の方々は、ひとまず、ほっとされているようである。

米国のニューヨークに本社を置く、巨大投資会社『サーベラス・キャピタル・マネージメント』は
日本の企業、特に経営危機に陥ったような企業に対して、
大口の資本を出資して、再生を助け、そして上場させるなどする事で、利益を稼ぐという、
マネービジネスを展開してきた会社である。
かつて、2000年代の初めごろの、青空銀行なども、同社が手掛けたものである。

今回話題となった西武も、2005年の秋、サーベラスから約1千億円の出資を受けた。
当時、西武鉄道は「有価証券報告書の虚偽記載」というものが明らかになって、
上場廃止の危機に、追い込まれていたのである。
その時に、筆頭株主になったのがサーベラスで、およそ32%の株式を取得した。
西武は、鉄道やホテル事業を再編して、西武HDに生まれ変わった、という経緯がある。

しかし、その後、両社の関係がこじれて、
サーベラスは、TOB(敵対的公開買い付け)により、
持ち株比率を、それまでの32%台から一挙に44%台へと引き上げを狙って来た。
経営の主導権を獲得しようと考えたわけである。

ここで問題となったのが、サーベラスが、西武HD側に突き付けた要求の中身であった。
サーベラスは、公式には認めていないのであるが、
実際には、文書によって 、47項目にわたる経営改善要求を突き付けた、ようである。

その中身を見てみると
1.採算の悪い路線(不採算路線)の廃止、
   西武秩父線、山口線、多摩川線、国分寺線、多摩湖線の5つ。
2.特急料金の25%値上げ、
3.西武ライオンズ球団の売却  等々であった。

これには、沿線の自治体、地元の財界や住民などが、反対の署名を集めて、
政府も含む関係筋に提出する、という争議に広がった。

しかし結果から言うと、
サーベラスが目論んだ44.67%の目標には及ばず、
結局、現在の32.44%から35.48%へ、わずか3.04%の引き上げにとどまった。

これにより、サーベラスの、経営への影響力が、限定的な範囲にとどまったことで
住民や球団のファンは、ほっとした、というわけである。

サーベラスは、
元々、米国の機関投資家や年金基金から資金を集めて、
投資信託を組成し、
世界中で運用してきたファンドの一つである。

米国政府と経済界の関係というのは、よく『回転ドア』と言われが、
サーベラスのトップも、元副大統領とか、ブッシュ政権下の財務長官といった具合に
大物がずらり名前を連ねている。

日本へのグローバル化の波が一層高まった2000年代に入って、
日本企業、特に、経営不振に陥った金融機関や企業に、大口出資を行うようになってきた。
今回の西武騒動では、
これまでの様な、短期の投資資金回収による利益追求だけではなく、

株式会社の支配を意図しているのではないか、
と思われても不思議ではない言動を取っている。

そういうことで、
『株式会社とは、いったい何なのか』と、深く問われる事にもなった、といういきさつがある。

資本主義社会で『企業』といえば、
株主(資本の出し手)による私的所有の存在である、という考え方が通用している
しかし、規模の大小を問わず、『企業』の活動は、
社会と深い結び付きを持っており、一般の人々の生活、生存の条件に強い影響を与えている。

また『企業』というのは、資本の所有者だけではなくて、、
『ステークホルダー』という言葉がよく使われるように
そこの経営者も、勤労者も、さらに企業が存在する市民社会そのものも
共に、『企業』の利害の当事者である。
そこから、企業の社会的責任、という考え方が生まれてくる。

振り返ってみると、
企業による公害被害が相次いだ時代には、
『企業も、まだ、市民社会の一員である』、という認識が強く企業に求められた時代があった。

今は、そのような考え方が、どうやら希薄になってきて、
『今さら、何を!』といった具合に、時代遅れのような扱われ方で、片付けられてしまう。
そういう風に感じさせられる出来事が、当たり前のように増えている。

総じて
道路、鉄道、水、さらに美しい自然や風景、これらは社会的共通資本である。
宇沢弘文先生が築かれた、宇沢経済学の基軸概念になっているものである。
誰のものでもない、皆のものである。

言葉を変えていえば、
企業の行動や活動というものは、人間の生存基盤に深く関わっている。
それだからこそ、『企業は社会的公器だ』という認識が、
再び強く求められるようになって来ているのである。

特に民営化の名前で進められる、
公共の企業化(民営化)には、慎重の上にも慎重な姿勢が求められる。
今一度、企業とは何か、今こそ、そう問い直す時が来ている、と強く思う。  

★★お読み頂きましてありがとうございます ★★★

##この要約文章と画像の無断転載は一切お断りします##
## 私(いまさきもり)への応援拍手とメッセージはこちらからお願いします ##
## この文章は私の覚えとして放送を要約したものです ##

   今週金曜午後から、NHKホームページで放送が聴けます。
   右上のブックマークから入って下さい.