private noble

寝る前にちょっと読みたくなるお話し

a day in the life 9

2017-03-04 10:02:42 | 連続小説

 テレビは緊急報道番組を映し出していた。レギュラーの情報番組を差し替えしているらしく、しきりにお詫びのテロップが流されている。世間を騒がしていた連続殺人事件の犯人が捕まったと、よくテレビで見かける男性アナウンサーが何度も繰り返し同じコメントを連呼している。
「バカのひとつ覚えみたいに、ほかに言うことないのか… 」
 とにかく大事件だと、いまテレビを付けた人が、ほかのチャンネルに変えないように。スイッチを消さないように。考える暇を与えず、思考停止にさせるための作戦とでも思えるような演出だ。
 マサノリの隣には、下着姿のオンナが、あぐらをかいた膝のうえに頬杖をついて、その番組を細めた目でつまらなそうに見ている。わざわざテレビを見るためにここまで来たわけじゃないはずだと言わんばかりに。
 窓のない部屋は、イメージライトが幾つか灯っているだけで薄暗く。お互い匿名を守るには丁度いい。化粧映えしない顔でも、素顔が見れたものでなくとも、肉体がそうであればすべての問題を吸収してくれる。
「ねえ、しないのお?」
 何度目の問いかけだっただろうか。マサノリが払うように手を動かすと、もうおっ! と声を荒げベッドの中にもぐり込んだ。少しだけ目線をそちらに向けたマサノリは、すぐにテレビに向きなおり、番組を凝視しはじめた。
 犯人は母親が住む実家に戻って来る途中に寄った、コンビニの駐車場で取り押さえられた。手に持っていた紙袋の中には、これまで亡きものにしてきた人間達の遺留品が、戦利品のように入っており、生々しさを強調していた。なによりも最後の事件となった幼児殺害は世間に大きな衝撃を与えており、それがここまで大々的に臨時番組を打つ要因になっている。
 コマーシャルあけに、殺された幼児の父親が沈痛な面持ちで画面の前に立っていた。報道陣からは、矢継ぎ早に質問を投げかけられる。この世のすべての悲劇を背負い込んだ面持ちの父親は、なにを聞かれても、はい、はいと、泣き入りそうな声で答えるだけだ。そうすると報道陣も心得たもので、今度はそれにあわせて質問をかぶせてくる。
「お父さんにとっては、本当につらい日々となりましたね」「はい」
「犯人が逮捕されて、本当に良かったですね」「はい」
「これで、お子さんも無事に成仏できますね」「はい」
 子供のことを言われたところで泣き崩れる父親。それを見たマサノリはあたまの後ろで手を組んで、苦々しく笑みをこぼす。なんだよ、よくできてやがる。ひと通りリハーサル済なんじゃないのか、と毒づいていた。肩を大きく震わせて泣いた父親は袖で涙をぬぐい、嗚咽交じりになにかを言おうとし始めるのに気づいた各放送局のマイクが一斉に父親の口のそばに寄った。
「今日はぁ、みなさん、本当にぃ、ありがとうぅございましたぁ。うちの子はぁ、わずかぁ、5年しかぁ、生きられませんでしたがあぁ、これも運命とぉしてぇ受け止めぇたいと思いますぅ。犯人にはぁ、ぜひぃ、事件のぉ重大性をぉ認識してもらいぃ、更生してぇくれればぁとぉ思いますぅぅー。うううぅ」
 そして、画面はふたたび泣き崩れる父親を映し出し、無音のまま画面が引いて行く。それを見てマサルはゆっくりと柏手を打ち始めた。
「すごいじゃないのか、完璧だ。ホントに素人なのか?」
 突然の拍手に、オンナはフトンをめくって、テレビに目をやった。
「なに、なにがあったの?」
 オンナの言葉は無視して、マサノリはあごに手を置き前のめりになる。まったく被害者の親という者は、生まれながらにして聖者なのか、それともこの状況が彼らをそうしてしまうのか。もし自分があの父親の立場だったなら、考えうる限りの悪態をつきまくり、犯人を罵り、自分の置かれた状況に神をも呪う発言をするだろう。だとすればテレビで放送することはできないわけで、逆説的にいえば、それが被害者を選ぶ法則なのだろうか。
 神という言葉で、これまで見た被害者の親近者がおこなった一番傑作だった記者会見を思い出していた。ある宗教団体が引き取って養育していた子供が殺害された事件で、そこの責任者は涙ながらに語ったのは、あの子は神に選ばれたのだ。悲しい事件だったが、少しでも早く母なる神の元に行くことができて幸せである。信心深いあの子はきっと天国で永遠に幸せに過ごせるのだと。まるで宗教団体の広報会見を見ているようで、そのあとのCMで宗教団体のコマーシャルが流れてもおかしくないと思えるものだった。
 いくら悲劇の主人公であっても、それを前面に押し出せば視聴者の同情は得られない。自分の気持ちを押し殺し、冷静に相手を思いやるところに誰もが共感して涙するのだ。だとすれば今日の父親は100点満点の出来で、テレビ局受けすること間違いなしのキャラクターを演じていた。
「そう、ここまで完璧に演じられるとは、まったく恐れ入る。もしかしたら、構成作家でも雇って、台本を書いた上での中継だったりしてな。まったく、だからマスコミってやつは視聴率取れればなんだってやりかねないなんて言われるんだ… 」
「なあにぃ、これってヤラセなのお?」
 オンナは初めてマサノリが返答したくなりそうなセリフを吐いた。コイツに言ってわかるのかと疑心暗鬼ながら、自分の考えを聞いて欲しい気持ちがなくもない。
「まあ、どうだろな。この世の中の報道で、作り込まれた部分が全く皆無だなんてものはあり得ないじゃないのか。誰だって自分の得を第一に考え、損失を拒む。それがある程度の力を持った人間や、会社が絡んでいればそうなるのがあたりまえなんだよ」
「力を持った人間とか、会社って誰のことよぉ?」
 まあ、その程度のもんだろ。特に期待もせずに言ってみたら案の定の回答で、あきらめてマサノリはテレビに向きなおる。コマーシャルがはさまり、アナウンサーは事件の悲劇性を繰り返し強調し、次はこの犯行の背景になにがあったのか、取材結果をお伝えしますと言い残し、そしてまた異常にお気楽なラーメンのコマーシャルがはじまる。人の心理として、悲惨なものを見せられたあとに、気の休まるものを見ると、安心したい欲求からその商品に興味を持ち、購入意欲につながるらしい。
「あっ、わかった。番組のスポンサーでしょ。だってさ、タダでテレビ見れるのって、スポンサー様のおかげでしょ。だったら、スポンサー様がいなればどんな番組も流せないもんねー。せーかーい。ハハッ」
 オンナは指先で大きな丸を空に描いた。マサノリはそれで正解と言ったのだとわかった。遠からず、近からず。まったく外れというわけでもない。少しは手ごたえが出てきたというのはマサノリの都合で、本当は自分の考えの続きを話したい欲求に勝てなかっただけだ。それは人間であれば誰でもよかったというそれだけの理由でしかない。
「簡単に言えば、そういうことだな。世論に一番敏感なのはマスコミだ。自分たちが常に時代を先導していると自負している。そうじゃなければ、だれも新聞を取らなくなる。世の中の関心がどちらに向いているか、素早く察知して、それをいかにも自分たちの見解であるようにして流していく。それを見た人々はやっぱり自分たちの考えは正しい。だってテレビで言ってるんだから。それがこの国のルールで、大企業がスポンサーしているテレビ番組が間違ったことを言うわけがない。だからこれが正しいものの考え方だと、脳停止状態になっていく。戦前、戦中となんら変わってないんだから困ったもんだよな」
 自説をぶちあげて、得意顔でふりむくと女はいつのまにか布団の中に再びもぐりこんでいた。やれやれ、いったいどこまで聞いていたのか。聞いていたとしても、どこまで理解できたのか。どうせなにもわかってるはずはないと、マサノリは決めつけていた。
「せーかーい」
 女は満面の笑みで、布団の中から上半身を起こしてそう言った。やけにタイミングのいい返答に、マサノリも少々たじろいでしまった。とはいえ肯定されれば嫌な気はしない。しかたなくといった体裁を保ちながらマサノリは続けた。
「時の権力者に対して、無策だとか、今の政策は間違った方向に舵を切っている。というデバイスを与えるのがいまの報道のありかただ。有識者なるものを巻き込んで、いかにも真実味を帯びさせ、一般人に不安を押し付けるとともに、無知であると危惧させることで成り立っている。泥棒の犯罪を防ぐ手立てを考えるより、泥棒が入りやすい環境を作って、泥棒をおびき寄せ、そのうえで捕まえた方が注目度も高いし、世間受けもいい。事件が解決するとか、しないとか、そんなものはどうだっていいんだ。ようは、その事象によってどれだけの利益を誰が手にすることができるか。そこにしか興味はないんだ」
「なんだか、ずいぶんややこしいはねえ。別にいいじゃない。事件は事件なんだからさ、どうやって解決したって。だってさあ、泥棒に入られるような不用心にしてる家が悪いんじゃないのお」
 マサノリは嬉しそうに、女に向けて指を差した。見当違いの回答も、たとえばなしの領域ならつじつまも合ってしまう。
「そう、そうだろ、そう思うのが普通だ。そこに逃げ道がつくられている。自分が被害にでも遭わない限り、誰だってマヌケな被害者を笑える立場にいる。それと同じなんだよ。政府や大企業の不正や、誤った政策や、施策をあげつらうことはしても、その時点で打つべき手も、問題点を修正に向かわせる提言もない。それこそ有識者を集めて世論を動すことだってできるのに、その時点で声をあげれば防げたことだって多くあるはずなのに、そうはしない。事態が決定づけられなんともならなくなったら、最後通牒のようにとどめの報道をする。あのときこうしてれば良かっただの、実は破滅への分岐点はここにあっただの、権力者の横暴はこの時点から始まっていただの。後出しジャンケンで負けることはないからな。国民は対岸の火事でも見ている気分で、困ったもんねと言うぐらいのもんだ」
 女は、ポカンと口を開けたままだった。せめて困ったもんねぐらいは言えばいいのに。まあそれでいい。別にわかってもらわなくても、言いたいことが言えただけで、これまでの鬱憤を排出できただけで。
 オンナはベッドを抜け出し冷蔵庫の方に向かい、扉を開いてビールを取り出してプルトップを開ける。プシュッと炭酸が抜ける音とともに、やおら口にして喉を鳴らしながら、一気に半分ぐらいを開けたようだ。これだから教養のないオンナは、とぼやいてみる。
「ねえーえ、ほんとにしなくていいの」
 勝手に自分だけビールを飲んでおいてよく言う。
「いいんだよ、そのままで。このまま、そこにいるだけで。心配するな、お金はちゃんと払うから… 」
 言い終わるが早いか、風呂上がりのように腰に手をあてたまま、残りのビールを飲み干していた。
「ふーん、別にわたしはいいんだけどねえ。お金さえもらえれば。そのほうがラクでいいしぃ。あっ、そうか。お金さえもらえれば誰だっていいんだ。ラクな方が誰だっていいもんね」
 得意顔で言うオンナをハスに見ながら、返答を真似てみた。
「はははっ、そう、その通り。正解だ」
 マサノリはこの女と話すのが楽しくなってきた。余計な口をはさまない、自分以上に知ったかぶって語ることもない。それでいて、いい感じで、ノッかってくる。
 ベッドに戻ったオンナは手をのばしてテレビのリモコンを手にする。薄手の肌着の下から派手な色のブラジャーが目に入っても、そこに何の色気も色欲も感じない。断りもなく次々とチャンネルを替えていき、歌番組にヒットしたところで手を止めた。好みのグループらしく、メロディに合わせて口ずさみはじめた。
 マサノリもオンナを抱きたくないわけではない。そこになんの恥じらいもなければ、なんの色情も感じず、行為におよぶ状況にならなかった。恋愛感情もないオンナにそれを求めるのはお門違いなはずなに、いったいなにを期待しているのか自分でもおかしくなってくる。
「でもさあ、どうなんだろうねえ。テレビに踊らされてるのか、テレビ見てる人たちに踊らされてるか。その関係性ってビミョーよねえ」
 そのグループの唄が終わると、オンナはMCのコメントには興味はないらしく、ぼそっとつぶやいた。そのわりには挑発的な言葉で、マサノリの瞼は神経質に震えた。
「だあって、そうでしょ。どんなにマスコミがこうしたいって報道しても、誰も関心を示さなきゃ、誰も見ない。ってことはシチョーリツ取れないよねえ」
「だからっ! それは最初に言ったように、ちゃんと求めるものをリサーチした結果っ… ?!」
 マサノリはムキになって、おもわず失言をしていることに気付く。こんなオンナにと、ほぞをかむ。
「だからあ、求めてないことはしないんでしょー」と、スルーしてもらえなかった。
「誰も求めてないような放送してもしょうがないもんねえ。いわゆるう自慰行為。あなたとおんなじね」
「なっ! なに言ってんだ!?」
 マサノリの顔色がみるみる変わってきた。従順だと思って油断していた犬に、まさかの牙を剥かれ、餌を与えた手に噛みつかれた気分だ。どこまでわかって言っているのかわからないとも、ここは言い返さなければならないだろう。
「下衆な言い方してオレを怒らせようというつもりか? オレをどうしたいんだ。オマエなんかに言ってもしかたないが、古今東西、大衆によって革命が成功した史実はあっても、結局、最終的には新しい権力者が生まれただけだ。情報を操作され、操り人形のように動かされる。大衆には組織も、統率もない烏合の衆だ。せいぜい集団略奪で金品を与えられて満足している。一般人の心理として人より良い目はみたいし、人より悪い思いはしたくない。だからみんなバスに乗り遅れるわけにはいかない。たまにはへそまがりや、つまみ出されるヤツもいるだろうがな」
 それはオンナに対する精一杯の皮肉を込めたつもりだ。それなのにサイレンはいっそう高まるばかりだった。
「だとしてもぉ、権力者に都合のいいことばっかり起きたとは言い切れないんじゃないの。ほらあ、西洋の島国で、共栄圏の離脱が決まったのって、意図しない方向に行っちゃったしね。あれってさ、ほら、学級委員決めるときに、どうせ成績が良くて、まじめなコになるからって、面白半分でクラスのお笑い担当に入れちゃえばって言ってたら、本当になっちゃったみたいな。へへへっ。なにもすべてが決められたまんまで動いてるわけじゃないわよねえ。あんまり良く考えてない人間が、自分の一票をカルーく考えて、その場の空気になじんでいった。それを神のしわざだと言うのはテイのいい言い訳でしょ。最終手段。話題になった大統領ってまさにそれだよねえ。お笑い担当がまさかの当選って感じで、マジ、ウケる。でもねえ、その年のクラスは面白かったわあ。お笑い委員長って、やっぱり、ふまじめでいいかげんだったけど、イベントごとは好きみたいで、そんときは力入れるんだけど不器用だからうまくいかなくて。そのぶんみんなで何とかしてあげなきゃって、クラスの結束力が高まっちゃって。運動会も、学芸会も、音楽発表もいい成績取っちゃったのよねえ。なんか他のクラスからも羨ましがられたし。先生も面白がって、好きにやらせてたから。だからさあ、けっこうその大統領もうまくまわっちゃったりするんじゃないのお」
 肌着の肩ひもが両肩かたら落ちて、二の腕の部分にかろうじて引っかかっている。オンナのたあいもない例えばなしになんの反論もできない。それどころか感心して聞き入っていた。マサノリは主導権をオンナにしっかりと握られてあせりを感じていた。自分の意に反して膨張するオモイは抑えられない。
「いや、あれは、大手メディアがヘイト番組ばかりやっていたから、逆にいい宣伝効果になって… 」
「それってさ、ふつうに報道されてる情報だよね。誰かの考えではなく、みんなの考えにすり替えられていてもミンナ気づかないまんま。後出しジャンケンで負けないようにしてるのは、そんな意思のない人たちなんじゃないの? 別にさ、みんながマスコミを動かそうが、マスコミがみんなに影響を与えようが、どーだっていいんじゃない。どうせ未来はひとつしかないんだから。そうなった方にノっかってた人たちが勝組になって、そうでなければ敗組になる。そんだけのハナシでしょ。大げさに世の中を動かしてるってヒガンでてもしょうがないんじゃないの。だってさ、現状にどれだけ不満があったって食べ物があるうちはボードーは起きないんだから。だからさあ、口に出しづらい不満を自分になり代わって手っ取り早く言ってくれる人って重宝するわよね。それがイケメンとかキレイな女子アナが言うとウソ臭いけど。キワモノタレントなんかがいうと面白がっちゃうのって、あるいみ人のダークサイドだわあ。アナタが言うように、自分が人より良い目をみれないのは誰のせい? とかって独裁者がつけ込むスキなんだよねえ」
 オンナはマサノリをじわじわと包み込みはじめていた。それを拒否する意思は徐々にそぎ落とされる中で、また少しだけ抵抗を試みた。
「オレはただ、マスコミが弱腰で倫理感もなく、この国を堕落させていると… 」
「それって週刊誌とかがよくやるヤツだわ。先週まではアッチ側だったけど、今週はコッチ目線でいってみましょうって。そうするとさ、反対意見を言いたかったけど、言えなかった人だったり、アッチ側にいたけど、早めに乗り換えることで、自分の存在を強く打ち出そうって考える目立ちたがりとかがね、これまでの支持層の上にのっかって、おもわぬ反響を呼んじゃったりね。あーっ、それって大統領選挙と同じだー。なによ、学級委員も、大統領も同じことやってんじゃないの。やっぱ、人間の学習能力なんてそれぐらいのもんなんじゃないの」
 オンナの舌先は止まることなく、マサノリの人生観を舐めまわしてマヒさせていった。そのたびに中枢をよじり、漏れそうな意思を抑える。唇を這わされただけで、たえがたい羞恥の種が一気に噴射しそうだった。
「オマエ… 」
「なに? ヤリたくなってきた? 別にいいわよ。お金さえもらえれば、二時間延長でお願いしまーす」
 見透かされたように言われても、マサノリは無言で押し倒していた。
 緊急報道番組は暗い表情のアナウンサーが、われわれはこのような犯行を生んだ現代社会のひずみにも、もう一度目を向ける必要があるのではないでしょうか、などともっともらしい問題定義をして終了していった。ディレクターはしてやったりと親指を立てているに違いない。次に始まった情報バラエティ番組は、そんな凶悪な犯罪が起きた同じ国と思えないほど、能天気なノリで始まった。空港に降り立つ一人の外国人に、いきなりぶしつけな質問をはじめる。
 カメラを向けていれば何をしても正当化されるとでも言わんばかりの行為を、偽善者態度であげつらえば、またこのオンナに一蹴されるだろうし、自分のしている行為が正当化されると思うのは自分の勝手でしかなく、それではいったいこの世の中は誰かが回しているのかと、安易な逃げ場所にもぐりこむしかなかった。
 そして、このオンナはこともなさげに言うのだ。「せーかーい」
 それがこのオンナの人生の一日。
 それがマサノリの
人生の一日。
 これもまた人生の一日。