岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

斎藤茂吉の短歌の魅力

2022年10月14日 22時20分06秒 | 茂吉:佐太郎総論
「斉藤茂吉なしに近代短歌は語れない」といったのは国文学者の故・今西幹一。近代短歌の「巨人」だ。巨人といえば大西巨人「大概の歌人は10首詠んであたりは半分くらい。斎藤茂吉はあたりが八割はある」といった。

 このことは余人の及ばないところ。「知っている歌人は、斎藤茂吉と俵万智」といったのは僕の知人だ。それだけ存在感がある。

 加えて表現が多彩だ。

・隣室に人は死ねれどひたぶるに箒ぐさの実食いたかりけり
 「赤光」
 幼児期の望郷の歌。

・しろがねの雪ふる山に細ぼそとして路みゆるかな
  「赤光」
 寂しさの漂う叙景歌。

・赤茄子の腐れてゐたるところより幾程もなき歩みなりけり
 「赤光」
  幻想的な歌。

・死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞こゆる
 「赤光」
  母恋の歌。

・あはれあはれここは肥前の長崎か唐寺の甍にふる寒き雨
 「あらたま」
  音楽性の高い歌。

・電信隊浄水池女子大学刑務所射撃場塹壕赤羽の鉄橋隅田川品川湾
  「たかはら」
 見えたものを漢語で並べた歌

・沈黙のわれに見よとぞ百房の黒き葡萄に雨降りそそぐ
     「小園」
 意気消沈した歌

・最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにせるかも
 「白き山」
 哀愁感の漂う雄大な叙景歌

・暁の薄明に死を思うことあり除外例なき死といへるもの
 「つきかげ」
 寂しさの漂う境涯詠。

 割愛したが人口に膾炙した作品が最も多いのは斎藤茂吉だろう。評価するにしても多くの書籍が刊行されている。

 「星座α」の尾崎左永子は「明治の『前衛短歌』だった。」という。





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