竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

スコールの波窪くぼまして進み来る  虚子

2017-02-17 | 虚子鑑賞
スコールの波窪くぼまして進み来る






高浜虚子 「五百五十句」第5回 昭和十一年五月

躄あしなえの妻を車に花に曳ひく
五月二日 キユーガーデン吟行。同行者八田一朗、十時とどき春雄、伊藤東籬とうり、有吉瓦楼ありよしがろう、森脇襄治じょうじ、大林、古垣鉄郎、池田徳真、槙原夫人、保柳夫人、小野龍人、保柳才喜、小野静女、友次郎、章子。夕刻日本人会に戻り食後披講。

日本にっぽんの花の提灯ちょうちんともるもと
五月六日 朝九時、川村、伊藤、松本、河西夫人、八田、岩崎に見送られヴイクトリア・ステーシヨン発、正午頃ドーヴアー駅著。英吉利イギリス船にて海峡を渡り午後一時半頃仏蘭西フランスのカレー駅より乗車、五時頃巴里パリ著。上野に迎へられ直ちにマゼスチツク・ホテルに入る。アルフレツド・スムーラを帯同して松尾邦之助来訪、うち連れて佐藤醇造を誘ひヂユリアン・ヴオカンス訪問。晩餐。席にアルベール・ポンザンありて一同と共に仏蘭西のはいかい談に花を咲かせ記念撮影。ヴオカンス邸即興。

ハンカチの蝶と細りて尚なお振れる
五月八日 午前十時、馬耳塞マルセイユ著。郵船会社に立寄り箱根丸乗船。山下馬耳塞領事来船。四時出帆。友次郎は山下領事等と共に波止場に立ち長く見送る。港内にて清三郎乗船の筥崎丸はこざきまると行違ふ。

紅海に船早はや浮ぶ帰帆疾とし
五月十四日 スヱズ運河通過、紅海に入る。

熱帯の海は日を呑のみ終りたる

この暑さ火夫や狂はん船やとまらん
五月十七日 紅海航行。暑さいよ/\劇はげし。

スコールの波窪くぼまして進み来る
五月二十一日 初めてスコールに遇あふ。

亘わたりたるリオ群島は屏風びょうぶなす

鰐わにの居る夕汐ゆうしおみちぬ椰子やしの浜

扇風機まはり熱風吹き起る
五月三十日 朝、新嘉坡入港。奥田彩坡、古根勲、森野熹由、山口勝、宮地義雄、志村空葉夫妻、玉木北浪来船。玉川園に行き日本人会に於ける俳句会に赴き、転じて森野の招宴に列し再び日本人会に赴く。深更帰船。


再び船上の旅人となった虚子
火夫、スコール、熱風、帆布などしっかりと観察している(丈士)
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