竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

菊の香や月夜ながらに冬に入る  子規

2017-01-21 | 子規鑑賞
菊の香や月夜ながらに冬に入る



この句の中には,三つの季語が含まれています.
『菊』(秋の季語),
『月』(秋の季語),
『冬に入る』(『立冬』と同じ意で,初冬の季語).

【菊の香りが漂っている月光が明るい夜なのだが(感じられる季節感は秋なのだが),もう時節は立冬を迎えたのだ.】

正岡子規は,『菊』も『月』も「秋の季語」である事を意識した上で,「,感じられる季節感は『菊の香りが漂う月夜』,つまり『秋』だけれども,時期はもう冬に入ったのだ」という感慨を詠んだものと思われます.

所謂,『季重ね』ですが,不自然さを感じさせない,作者の力量を感じられるように思われます.

尚,句の意味から,三つの季語のうち,主たる季語は『冬に入る』で,『菊』,『月』は従たるものであると考えられます.

edelweiss_edelweiss87 参照
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乏しからぬ冬の松魚や日本橋   子規

2017-01-19 | 子規鑑賞
乏しからぬ冬の松魚や日本橋



松魚は「ショウギョ」と読む
カツオの異名だそうだ

乏しからぬ が子規の生活状況だったのだと分かる
日本橋には魚市場があった
カツオを一本買い求めて気持ちの高ぶりが感じられてくる
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筆ちびてかすれし冬の日記哉  子規

2017-01-16 | 子規鑑賞
筆ちびてかすれし冬の日記哉



明治33年 子規33才

子規は「墨汁一滴」につづいて「仰臥漫録」の日記を残している
下記は「墨汁一滴」の実録


一月七日の会に麓ふもとのもて来こしつとこそいとやさしく興あるものなれ。長き手つけたる竹の籠かごの小く浅きに木の葉にやあらん敷きなして土を盛り七草をいささかばかりづつぞ植ゑたる。一草ごとに三、四寸ばかりの札を立て添へたり。正面に亀野座かめのざといふ札あるは菫すみれの如ごとき草なり。こは仏ほとけの座ざとあるべきを縁喜物えんぎものなれば仏の字を忌みたる植木師のわざなるべし。その左に五行ごぎょうとあるは厚き細長き葉のやや白みを帯びたる、こは春になれば黄なる花の咲く草なり、これら皆寸にも足らず。その後に植ゑたるには田平子たびらこの札あり。はこべらの事か。真後まうしろに芹せりと薺なずなとあり。薺は二寸ばかりも伸びてはや蕾つぼみのふふみたるもゆかし。右側に植ゑて鈴菜すずなとあるは丈たけ三寸ばかり小松菜のたぐひならん。真中に鈴白すずしろの札立てたるは葉五、六寸ばかりの赤蕪あかかぶらにて紅くれないの根を半ば土の上にあらはしたるさま殊ことにきはだちて目もさめなん心地する。『源語げんご』『枕草子まくらのそうし』などにもあるべき趣おもむきなりかし。

あら玉の年のはじめの七くさを籠に植ゑて来こし病めるわがため
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のら猫の糞して居るや冬の庭 子規

2017-01-14 | 子規鑑賞
のら猫の糞して居るや冬の庭



荒れた冬の庭にはには
見るべくものは何もない
ふと何かが動く
のら猫が糞をしているのだった
それだけの報告句のようだが

なにもない これを切り取ったのだろう

余談だが「糞」は俳句では相当に嫌われる言葉のようだ
「まり」と読ませることもあるようだ

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青山や弔砲鳴って冬の行く  子規

2017-01-13 | 子規鑑賞
青山や弔砲鳴って冬の行く



青山とは樹木の茂った元気の良い山のはず
その山にとどろく弔砲
その轟音に冬が通り過ぎたというのだろうか

青山の勢いは弔砲を呑み込んでなにも変わらない
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冬や今年我病めり古書二百卷 子規

2017-01-11 | 子規鑑賞
冬や今年我病めり古書二百卷



子規28才
冬に病む
挫け心は子規には微塵もない
古書300巻を我が物にせんとの気概さへ感じる
病床だからこその読書三昧
そして知識の集積と研鑽
密度の濃い時間はゆるぎない
(丈士)
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音もなし冬の小村の八九軒  子規

2017-01-10 | 子規鑑賞
音もなし冬の小村の八九軒



子規28才
余分な言葉、説明の一切ない描写だ
「冬の小村」ですべてが足りる
冬という一文字ひと言が重い
座語の八九軒もいらないくらいだ
(丈士)
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冬の野ら犬も喰はさる牛の骨 子規

2017-01-08 | 子規鑑賞
冬の野ら犬も喰はさる牛の骨



子規27才の作

冬の野ら犬も で八音
喰わざる で四音
牛の骨 で五音

私の知っている子規の句にはなかなかない発見だ
この破調が野良犬と冬ざれの荒野に相応しいのだろうか

また犬にも食わrw内牛の骨
おそらくは肉片の欠片もないのだ
この骨もまた寂しく悲しい

子規の心根を覗いてみたい
(丈士)
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嶋原や笛も太鼓も冬の音 子規

2017-01-07 | 子規鑑賞
嶋原や笛も太鼓も冬の音




嶋原は幕末の騒乱期にあった京都の遊郭地のこと
笛や太鼓は本来にぎやかしいものだが
冬ざるる空気にふるえる音は
遊女の心根もあり
虎落笛のように子規はとらえたのだろう
一切を省略して「冬の音」と断定している
(丈士)
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青々と冬を根岸の一つ松  子規

2017-01-06 | 子規鑑賞
青々と冬を根岸の一つ松





子規27才
寒風のなかに青々と松の木が一本
冬の厳しさをなんともしない力強さを詠んだのか
このころの子規の青年の意気を感じさせる

一本松では口語になるのを嫌ったようだ

東日本大震災の松は青くはないが

(丈士)
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都にも冬ありされど酒もあり  子規

2017-01-05 | 子規鑑賞
都にも冬ありされど酒もあり




子規26才
松山生まれの子規は東京育ちの漱石の刺激もあって
東京へは青年期の渇望があったことは容易に想像Ⓢれる
憧れや羨望は近くになれば薄らいで
その只中に入れば現実に覚まされる

子規は冬の寒さをひとしお強く感じたのだろう
故郷の酒には適わないまでも酒はあるとした
寂しさの中での若い子規の激しさを感じる句ではないか
(丈士)
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きぬぎぬの鴉見にけり嵯峨の冬 子規

2017-01-04 | 子規鑑賞
きぬぎぬの鴉見にけり嵯峨の冬





子規26才の作
26歳の子規の恋人を思わずにはこの句は読めない
明鴉の取り合わせには苦笑を禁じ得ないが
(丈士)


きぬぎぬを調べると下記の解説である

きぬ ぎぬ 【衣▽ 衣▽・〈後朝〉】
① 男女が互いに衣を重ねて共寝した翌朝,
別れるときに身につける,それぞれの衣服。
「しののめのほがらほがらとあけゆけばおのが-なるぞかなしき/古今 恋三」
② 相会った男女が一夜をともにした翌朝。また,その朝の別れ
。ごちょう。こうちょう。 「 -の濡れて別れし東雲ぞ/宇津保 国譲上」
③ 夫婦の離別。
「この如くに-になるとても,
たがひにあきあかれぬ中ぢやほどに/狂言記・箕かづき」

こう ちょう -てう 【後朝】
① その翌朝。明くる朝。ごちょう。
② 男女がともに寝た翌朝。ごちょう。きぬぎぬ。 「 -の心をよめる/金葉 恋上詞」

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はげそめてやゝ寒げ也冬紅葉  子規

2017-01-03 | 子規鑑賞
はげそめてやゝ寒げ也冬紅葉




子規25才 明治24年の作

若年期らしい言葉をかざらないところが好ましい
はげそめる この通常では用いることのない言葉が効いている
この冬紅葉のはじまり以外にそぐう選択は思いつかない
(丈士)

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のら猫の糞して居るや冬の庭 子規

2017-01-02 | 子規鑑賞
のら猫の糞して居るや冬の庭




明治32年 子規33才

『俳諧大要』刊行。
子規庵で歌会再開,以後定期的に開催する。
病状悪化
『俳人蕪村』刊,病室の障子をガラス張りにする。
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山茶花に新聞遅き場末哉  子規

2017-01-01 | 子規鑑賞
山茶花に新聞遅き場末哉





明治31年 子規32才

子規庵で蕪第一回村句集輪講会を開催
『歌よみに与ふる書』連載開始
「百中十首」を発表
子規庵ではじめての歌会。
『新俳句』刊。
「ほとヽぎす」を東京発行に切り替える。

第ニ回の蕪村忌を子規庵で開催
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