A PIECE OF FUTURE

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未読日記1238 『山水思想―「負」の想像力 』

2016-10-15 23:57:27 | 書物
タイトル:山水思想―「負」の想像力 (ちくま学芸文庫)
著者:松岡正剛
カバーデザイン:戸田ツトム
発行:東京 : 筑摩書房
発行日:2009.10第2刷(2008.4第1刷)
形態:502p ; 15cm
注記:本書は2003年6月10日、五月書房より刊行された。
内容:
日本の水墨画は中国から渡来後、いつ独自の画風を備えたか。我々は画のどこに日本的なものを見出すか。そもそも日本画とは何か。著者の叔父は日本画家、横山操と親交があった。その縁を契機に著者は中世から現代までの日本画の道程をたどる。日本庭園にみる、水を用いずに水の流れを想像させる枯山水の手法を「負の山水」と名づけ、その手法が展開される水墨山水画に日本文化独自の「方法」を見出す。本書では雪舟『四季山水図巻』や、等伯『松林図』などの有名な作品を多数取り上げ、それら画人について解説を付す。画期的な日本文化論にして、精緻な絵画論考。

[目次]
第一部
1 日本画の将来―独断する水墨画
2 可翁から雪舟―画僧の時代
3 真形山水図―雪舟自立

第二部
4 組織絵画―狩野派の冒険
5 天下の画工―屏風と画体
6 天文法華の騒乱―禅林から法華へ
7 桃山世界史―意匠という様式
8 雪舟・永徳・等伯―三人の老梅

第三部
9 ロマンティシズム―対立と相互作用
10 ディマケーション―余白の発見
11 等伯画説―松林図の背景
12 トポスの意味―水暈が墨章する
13 メトリックの謎―気の振舞

第四部
14 山水タオイズム―逸民として
15 全景と文景―北の三遠・南の辺角
16 写山水訣―雲遊する画人
17 場面の山水―中国風から日本流へ

第五部
18 而今の山水―山水一如
19 和様の発想―無常と山水
20 明治の問題―日本画の誕生
21 遊弋する山水―山水的に日本

あとがき
解説 内藤廣

購入日:2016年10月15日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 寺脇扶美 個展「紫水晶からの往復書簡」のテキスト&トークの参考文献として購入。松岡正剛の本は自慢話や内輪話が多いのが鼻につき辟易するのだが、本書も叔父の日本画家の話から始まり、またかと思う。その「叔父の日本画家」とやらの名前は明記されないし、参考文献や引用文献も付されないので、批評、研究姿勢に疑問を感じるところもあるが、本書の論点、構成は日本画・日本文化史を貫通するような視野があり、読み物としておもしろかった。なかでも「13 メトリックの謎―気の振舞」は、中国の水墨画の歴史や概念をコンパクトにまとめていて、分かりやすい。専門家は異論があるかもしれないが、初心者、入門者としては読みやすかった。


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