「孤宿の人」(上・下、宮部みゆき著、新潮文庫)を読み終わった。ラストは不覚にも涙である。氏の作品は「理由」と「火車」の二つしか読んだことがなく、これが三作目、時代ものとしては初めてである。女性が主人公の時代ものというのも良い。突然のトラブルの中、人々が藩を「本音」と「建前」で必死に運営していく姿もいかにもありそうな話である。後書きで宮部みゆき氏自身が舞台の「丸海藩」は讃岐・丸亀藩であり、「加賀様」のモデルは実際に丸亀藩に流刑となった鳥居耀蔵である、と明かしている。しかし小説を読む限り、恐らく鳥居のほかに田沼意次や柳沢吉保などをうまく混ぜ合わせて作った人物と思うのだが如何であろうか(いずれも低い身分から大抜擢を受けた人物だが、経済政策に才を示したのは田沼、また将軍と関係のあった女性を妻に娶ったという噂があったのは柳沢である)。おそらくはこの小説に出てくる中で最も男らしい、ある意味筆者の理想とでも言うべき男性像の様にも思われる。一読をお勧めしたい。
Wikipedia「宮部みゆき」
Wikipedia「鳥居耀蔵」
Wikipedia「田沼意次」
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