スウェーデン生活+その後

2010-2013年スウェーデンに在住し帰国。雑記、鳥・植物の写真
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移民論

2011-07-03 16:08:10 | 考えてみたこと
日本では移民の受け入れ論が社会の争点の一つとされる。確かに、今後全人口の40%が65歳以上になる、という状況が予測されているのであるから、議論になるのは当然かも知れぬ。こちらスウェーデンで見聞きした話と自分の感想を並べてみた。
2010年10月26日の「移民」2010年5月15日「クリケット」2011年1月17日「通訳いろいろ」などを参照されたし。

1)現在スウェーデンが受け入れている移民の総数は年間約10万人。出身国は主にイラクとソマリアだそうである。昨年12月にストックホルムで自爆テロを起こしたとされる犯人はイラク出身である(「ストックホルム自爆テロその2」2010年12月15日)。出身国における教育の水準がバラバラであり、これがしばしば問題を起こしていると聞く。周囲でも移民が絡んだ詐欺まがいの話は残念ながら何件か聞いた経験があるし、移民街でマンションの内部にチェーンをかけて置いておいた乳母車を、チェーンを切られた揚句に盗難された話も聞いた。昨年の総選挙で、移民排斥を訴えるスウェーデン民主党(Sverigedemokraterna)が躍進したのも、これらの因子による部分が多いと思われる。しかもなまじ社会保障制度が整っているだけに、勤労意欲なし、犯罪歴ありの移民であっても生活の保障はある。先の総選挙でのスウェーデン民主党の主張の一つは「社会保障のただ乗りを許すな」であった。

2)しかしながら、移民全員がそうかと言うと、それもまた違うかも知れない。特にイラン革命の際に亡命してきた貴族階級の子弟などはおおむね評判が良い。バスの中でも、必死に教科書を読んで勉強しているのは大体頭にへジャブを巻いたイスラム教徒らしき女子学生であり、スウェーデンの学生は大体友人とおしゃべりをして時間を過ごしている。薬局などに行っても頭にへジャブを巻いた薬剤師さんは目にするし、むしろ彼らの方がスウェーデン人よりも丁寧に接してきてくれる印象さえある。正直ハングリー精神という点ではしばしば彼らの方が上なのではないかと感じる。簡単に言えば、極めて個人差の大きい集団、と言って良いのではないか。

3)外国人参政権が認められており、3年スウェーデンに居れば地方選挙に立候補する事は可能となる。実際、移民出身の国会議員も複数いるし、大臣経験者もいる。

4)スウェーデンの人口予測について。日本ほどではないが、将来的には全人口の25%が65歳以上になると予測されている。

5)無料のスウェーデン語教室があり、スウェーデン語を体系的に学び、会話のレッスンをするシステムが確立されている。何もない状況でスウェーデンに来たとしても、一からスウェーデン語を学んで就職、立身出世を目指す事は理論的には可能である。
ただ、これには仕事が簡単に見つかれば、という条件がつく。日本人も含めて、国外から移住してきた人がスウェーデン国内で仕事を見つけ出すのはしばしば困難なのだ(スウェーデン人と移民でここに差があるか否かは断言できない。念のため)。

6)さて、日本はどうするか?という問題である。4)については圧倒的に日本の方が深刻な状況である。補足であるが、人口予測というものは非常に精度の高いものであり、大きく外れる事はまずないと見て良い。人類の歴史で、全人口の40%が65歳以上という社会は、未だ存在した事がない社会である。なので一体どういう状況が到来するのか、正確な予測は誰にも不可能である。現在は上手くいくシナリオを考えていても、いざ状況が到来すれば「あれが足りない、これが足りない」という事が発生しそうに感じる。世界初の経験である以上、試行錯誤の連続になるのではないか。

7)結論から見ると、「日本が移民を受け入れるか否か」は「他国の状況をある程度参考に出来る道をとる(受け入れ)」か、「全く未知の領域に踏み出す(受け入れない)」の選択、という事になる。個人的には前者の方が日本人はまだ得意な印象はある。全てをスウェーデンからコピーする必要性は感じないが、取捨選択して取り入れる、という事は可能かも知れない。

まだ賛否両論ある議論なので、この辺にしておきたい。あくまで個人的意見、ということで。
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