保健福祉の現場から

感じるままに

医療事故調査制度と司法

2015年09月24日 | Weblog
M3「医療事故調発足受け相談窓口 被害者らの会、遺族側の懸念に対応」(http://www.m3.com/news/general/363183)。<以下引用>
<医療事故の被害者らでつくる「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」(永井裕之代表)は2日、医療事故調査制度が1日から始まったことを受け、相談窓口を設置したと発表した。制度には「適正に運営されるのか」と遺族側から懸念の声が相次いでいる。制度は「予期せぬ死亡事例」が起きたら、医療機関が自ら原因を調べ、遺族や厚生労働省が指定した第三者機関に報告する。だが、調査するかどうかの判断は医療機関側に委ねられ、医療機関が調査しない事故について遺族から第三者機関に調査を依頼できない。遺族の求めに医療機関が応じない事態も想定されるとして、協議会は遺族からの相談に応じる窓口を設けるよう厚労省などに要望してきた。要望が認められるまでの間、協議会が電子メール(info@genkoku.net)などで相談を受け付ける。自身の体験をもとに、医療機関側との交渉の方法などを助言するという。医療機関の対応に疑問を抱く医療者から情報提供を受け付ける窓口(kan-iren-info@yahoogroups.jp)も設けた。永井さんは「本来は第三者機関に窓口が設置されるべきだ」と訴える。また、この制度は、事故が起きた医療機関での院内調査が基本となる。東京女子医大病院で昨年2月、原則禁止の鎮静剤を大量に使われ、当時2歳の長男を亡くした父親は2日、朝日新聞の取材に「院内調査では身内をかばいあい、真相が明らかにならない」と語った。>

厚労省「医療事故調査制度について(再周知)」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20150917_01.pdf)。

M3「全国7ブロックに地域担当を配置、“事故調” 日本医療安全調査機構、新制度前に第1回運営委員会」(http://www.m3.com/news/iryoishin/361772)。<以下引用>
<10月から始まる医療事故調査制度の「医療事故調査・支援センター」に指定されている一般社団法人日本医療安全調査機構は9月28日、医療事故調査・支援事業運営委員会(委員長:樋口範雄・東京大学法学部教授)の第1回会合を開催。全国7ブロックに地域担当を配置するなどの人員配置や医療事故調査・支援センターが行う調査は、年300件程度と見込まれ、その費用は、医療機関からの依頼では10万円、遺族からは2万円とすることなどが説明された。同機構は厚生労働省から指定された「医療事故調査・支援センター」として、医療事故の報告を受け、事故情報の整理・分析、再発防止策を検討するほか、自ら調査を行うなどの役割を担う(『“事故調”、第三者機関は日本医療安全調査機構』を参照)。運営委員会は同機構理事会の諮問機関として、活動内容の評価などを行う。委員会の冒頭、機構代表理事の高久史麿氏が「医療事故の原因を明らかにし、再発防止に結び付けことを基本的な考えとし、院内事故調査を主体とした新制度を確実に実施するために、医療法で規定された支援事業を実施していきたい」とあいさつ。高久氏の推薦で、これまでも機構の運営委員会の座長を務めてきた樋口氏が引き続き委員長に選任された。センター事業、当初は50人態勢でスタート 28日の運営委員会では、事務局が医療事故調査・支援センターとしての調査業務や今年度の収支予算を説明した。日本医療安全調査機構には、調査等業務の活動方針の検討や活動内容の評価などを行う本運営委員会のほか、総合調査委員会、再発防止委員会の計3つの委員会を設置する。 人員配置計画として10月1日時点で、医療事故調査・支援事業部に非常勤医師5人、看護師28人、事務17人の計50人を予定。2016年4月には常勤医師1人、非常勤医師7人、看護師47人、事務28人の計83人に増員する計画だ。同部には地域ブロック担当として、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、福岡の全国7地域に担当者を配置し、ブロック内で起きた医療事故調査を担当する。今年度の収支予算は経常収益が約6億2000万円、経常費用が約6億1000万円となっている。医療事故調査は院内調査が原則だが、医療事故が発生した医療機関、または遺族から機構に調査依頼があった場合は、機構自らが調査を行う。その役割を担うのが、総合調査委員会だ。依頼を受けるパターンとしては、院内調査の終了後、もしくは終了前(3カ月程度で結果が得られることが見込まれる場合)の2パターンがあると想定。樋口氏は「医療機関が最初から、『自分ではできない』ということはない」と述べ、まず院内調査が前提であることを強調した。調査費用は医療機関からの依頼では10万円、遺族からは2万円となる。機構に報告された医療機関調査報告は、再発防止委員会に設置された専門分析部会で、事例の匿名化、一般化を行った上データベース化するなどして類似事例を集積。再発防止委員会で、専門分析部会の検討結果を分析し、再発防止に関する審議をする。機構は分析結果を一般化、普遍化した上で、医療機関の管理者に再発防止策を含む結果を報告する。センター調査は年間300例を想定 28日の運営委員会で議論になったのが、機構が行う調査の在り方だ。調査は、個別調査部会がまず担い、上部機関に当たる総合調査委員会が、調査結果を分析する。 想定する調査件数については、事務局は「(センターに報告されるのは)年間1500例ぐらいの医療事故を念頭に置いている。そのうち300例ぐらいがセンターに調査依頼されると想定しており、現在の10倍ぐらいになる」と説明した。福岡県医師会副会長の上野道雄氏からは「(配置予定の)医師5-8人で年間300件の調査を担当できるのか」と質問すると、「調査は0から行うのではなく、院内調査の結果を見て、抜けている点を指摘する。まとまった結果を総合調査委員会で判断していく。今までやっていたモデル事業のように細部までは見られないが、個別、総合の2段階でやっていく」(事務局)と説明した。機構では、医療事故報告の手続きや、調査依頼に関する相談専用ダイヤル(03-3434-1110)を開設する。機構のホームページにも掲載することから、医療機関だけでなく遺族や患者から電話がかかってくることも想定される。機構常務理事の木村壮介氏が「事故の判断について意見を述べることができない。以前は問い合わせをそのまま医療機関に伝えることをしていたが、今の制度でできることは『医療機関と話し合ってください』と伝えること」と説明すると、「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」代表の永井裕之氏は「医療界として何らかの検討をしていただきたい。遺族の思いを、どこかで受け止めないと、ぐるぐる回されて、被害者団体に来て初めて話を聞いてもらえたということもある。私どもとしても話を聞いてほしいという遺族をサポートしたい」と話した。費用負担の在り方巡って議論 院内調査の費用に関連して、日本医師会常任理事の今村定臣氏は、日医が損害保険会社に依頼して設計した保険制度について説明した。院内調査費用は医療機関が負担することになっており、日医は100万-150万円になると試算している。その説明に対し、全日本病院協会常任理事の飯田修平氏は「保険が必要という理屈が分からない。剖検をやっても何百万円も関わるわけではない。作っていけないとは言わないが、運営委員会で、保険、保険と言ってほしくない」と不快感を示した。昭和大学病院病院長の有賀徹氏は「東京都医師会では、(医療安全の向上のためという)ルールの趣旨から、東京都医師会をプラットフォームとする場合は、医師会が負担するべきだろうと考えていた。その後に、日医の保険の話が出てきた」と話した。永井氏は「私どもは公的な費用でやるべきだと言い続けていた。小さな病院で事故が起きた時にお金がないから事故ではないと主張することもあり得る。保険が良いかどうかは別として財源はどうするかという点で、全国民が何らかの負担をすることも必要では」と主張。上野氏は「福岡県医師会の場合は、ある部分は医師会が負担し、ある部分は専門医が負担している。専門医は極めて安く報告書を作成してくれたが、ボランタリーな形では続かない。保険で支援してくれるのはありがたい」と話した。次回の運営委員会は来年初頭を予定している。>

キャリアブレイン「事故調センター調査、医療機関負担10万円- 支援事業運営委が初会合」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46828.html)。<以下引用>
<10月からスタートする医療事故調査制度(事故調)で、第三者機関となる医療事故調査・支援センター(センター)に指定された日本医療安全調査機構(理事長=高久史麿・日本医学会長)は28日、センターの運営方針を検討したり、評価したりする「医療事故調査・支援事業運営委員会」の初会合を開いた。この中で、医療機関がセンターに依頼する調査の費用は、10万円とすることが報告された。センターに遺族が調査依頼する場合の負担については、制度設計段階から、所得の多寡にかかわらず、負担が可能な範囲の額にするとして、低額に抑える方向が決まっていた。事故調を規定する改正医療法の参院厚生労働委員会の附帯決議には、「遺族による申請を妨げることにならないよう最大限の配慮を行うこと」とされたことから、2万円となった。調査費用については、毎年度の調査の状況を検証した上で見直す。この日の会合では、調査業務に関する秘密保持についての説明もあり、役員や職員は、知り得た情報を漏らしてはならないなどとする規則も示された。またセンターは、医療事故の起きた医療機関がセンターに報告すべきかどうかの相談に応じ、対応者は相談内容を記録・保存することになるが、その際は秘匿性を担保することなども報告された。>

朝日新聞「新設の医療版事故調「公正な運用を」 被害者ら署名活動」(http://www.asahi.com/articles/ASH9V5T3YH9VULBJ00D.html)。<以下引用>
<医療事故の被害者や弁護士らでつくる市民団体「医療版事故調推進フォーラム」は26日、10月から始まる医療事故調査制度の公正な運用を求め、東京都内で署名活動をした。医療事故調査制度は、「予期せぬ死亡事故」が対象となる。調査するかどうかの判断は医療機関に任され、調査結果をまとめた報告書を遺族に提出することも義務づけられていない。フォーラムのメンバー約10人が、午前11時に東京都豊島区の巣鴨駅前に集合。約1時間にわたって「公正で信頼される制度になるよう監視していかなくてはならない」などと訴えながら通行人に署名を求め、ビラを手渡した。参加した医療過誤原告の会会長の宮脇正和さん(65)は「制度が始まることと、制度には課題があることを知ってもらいたい。医療事故の再発防止に役立つ制度になるよう、調査の結果は公表されるべきだ」と話した。>

M3「事故調、理念だけでは訴訟懸念消えず 問われる司法関係者の良識、10月開始」(http://www.m3.com/news/iryoishin/358255)。<以下引用>
<1 医療事故調査制度の発足 医療事故調査制度を盛り込んだ改正医療法が平成26年6月18日に成立し,平成27年10月1日から施行されることになった。医療事故調査制度は,医療安全の確保を目的として,国内のすべての医療機関に,医療事故の調査を義務付けるもので,そのインパクトには非常に大きなものがある。以下,医療事故調査制度の内容と問題点について解説する。2 医療事故調査制度の目的 医療事故調査制度が導入される過程では,医療事故調査制度は医療事故に関する医療機関の説明責任を果たすもの(過失の認定につながる)にすべきとの主張と,医療安全を目的とする制度とすべきとの主張との間で,激しい議論の対立があった。しかし,厚生労働省は,制度の施行に当たり,医療事故調査制度は医療機関や医療従事者が医療安全のための学習を行うことを目的とした非懲罰性,秘匿性,独立性を確保した制度であると宣言した。ただし,後述するように,理念がそうであっても,実質的な効果として民事・刑事の司法責任追及に利用されるリスクが完全に払拭されているわけではないので,これからの運用方法のあり方が注目される。3 医療事故とは?(1)医療事故の要件  まず医療事故調査制度の対象となる「医療事故」とはいかなるものかが問題となるが,改正医療法6条の10第1項では,以下の3つの要件をすべて充足したものであるとされている。① 医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われることかつ ② 死亡又は死産であることかつ ③ 病院等の管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定める場合に該当すること (2)管理者が予期しなかったとは?  上記の「病院等の管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定める場合」とは,改正医療法施行規則1条の10の2によると,以下の3つのいずれにも該当しない場合であるとされている。③-1 当該医療が提供される前に当該医療従事者等が当該医療の提供を受ける者又はその家族に対して当該死亡又は死産が予期されることを説明していた ③-2 当該医療が提供される前に当該医療従事者等が当該死亡又は死産が予期されることを当該医療の提供を受ける者に係る診療録その他の文書等に記録していた ③-3 病院等の管理者が、当該医療を提供した医療従事者等からの事情の聴取(略)を行つた上で、当該医療が提供される前に当該医療従事者等が当該死亡又は死産を予期していたと認めた (3)以上から,医療事故調査制度の対象となる医療事故とならないようにするためには,死亡や死産が予期されることを,予め患者又は家族に説明したり,カルテに記載したりしておくことが重要となる。ただし,患者の病状等を踏まえない一般的な死亡可能性についてのみの説明又は記録では,「死亡又は死産の予期」に該当しないとされているので,注意が必要である。4 医療事故調査の流れ 不幸にして医療事故調査の対象となる医療事故が発生してしまった場合,以下のような手順で医療事故調査を行うこととなる。① 遺族に対し,医療事故が発生した日時、場所及びその状況,医療事故調査の実施計画の概要,解剖又は死亡時画像診断を行う必要がある場合には、その同意の取得に関する事項などを説明。② 医療事故調査・支援センターに対し,医療事故の日時、場所及び状況,患者の性別・年齢等,医療事故調査の実施計画等を報告。③ 医療事故調査を実施。④ 遺族への結果説明 ⑤ 医療事故調査・支援センターへの結果報告 5 医療事故調査の内容 医療事故調査に当たっては,下記の様な内容の調査を適宜選択して実施することが求められている(改正医療法施行規則1条の10の4第1項)。医療事故調査は,規模の大小にかかわらずすべての医療機関に義務付けられるので,規模の小さな医療機関にとっては大きな負担となる。① 診療録その他の診療に関する記録の確認 ② 医療従事者・関係者からの事情の聴取 ③ 死亡した者又は死産した胎児の解剖 ④ 死亡した者又は死産した胎児の死亡時画像診断 ⑤ 使用された医薬品、医療機器、設備その他の物の確認 ⑥ 死亡した者又は死産した胎児に関する血液又は尿その他の物についての検査 6 医療事故調査等支援団体 医療機関は,医療事故調査等支援団体に対して医療事故調査を行う上での支援を求めることができる(改正医療法6条の11第2項)。医療事故調査等支援団体とは,医学医術に関する学術団体その他の厚生労働大臣が定める団体である。厚労省告示で,職能団体(日本医師会,日本歯科医師会,日本薬剤師会,日本看護協会などとそれらの都道府県の各団体),病院団体(日本病院会,全日本病院協会,日本医療法人協会など),病院事業者(国立病院機構,国立がん研究センター,国立循環器病研究センター,日本赤十字社など)及び学術団体(日本医学界に属する81学会,日本歯科医学会など)が医療事故調査等支援団体として指定されている。遺族も,医療事故調査・支援センターに対して,医療事故の調査を依頼することができる(改正医療法6条の17第1項)。この場合,遺族は調査費用を負担する必要があるが,その費用は数万円程度とされている。7 医療事故報告書 院内事故調査の結果は,事故調査報告書にまとめられることになる。ただし,院内事故調査は,医療安全を目的として,医療機関や医療従事者の学習のために行われるものであり,説明責任を果たすために行われるものではない。したがって,事故調査報告書に医療従事者や医療機関の過失の有無やその検討経過を記載する必要はないし,また,すべきでもない。なお,医療事故報告書を医療事故調査・支援センターや遺族に提出する場合や,その内容について説明する場合には,医療事故に係る医療従事者の識別ができないように加工しなければならないとされている(改正医療法施行規則第1条の10の4第2項)。8 司法制度との関係 最初に述べたとおり,医療事故調査制度の目的は医療安全の確立であって,医療従事者や医療機関の責任追及ではない。厚労省のホームページでもそのように述べられているし,それを裏付けるための規定も存在する。しかし,医療事故調査の実施が義務付けられているので,その結果が何らかの形で保存されていることが関係者には自明の事実となる。とすると,医療事故調査制度の理念とは関係なく,医療従事者や医療機関の責任を追及しようとする当事者(患者,家族,捜査機関)にとっては,その資料が貴重な証拠であることには変わりがない。とすると,理念をいかに設定しようと,実質的な効果として医療事故調査の結果が司法的な手続きで利用される懸念は払拭できない。厚労省も,「報告書を訴訟に使用することについて、刑事訴訟法、民事訴訟法上の規定を制限することはできません」と述べている。したがって,司法制度の中で医療事故調査制度をどのように位置づけていくのか,司法関係者の良識が問われることになる。事故調査報告書は医療機関自体が作成名義人であるから,刑事司法の領域では自己負罪拒否特権との関係を整理する必要がある。民事司法の領域では文書提出命令の例外である自己利用文書(民事訴訟法220条4号ニ)との関係を整理する必要がある。医療安全のために創設された制度が,結果として司法責任の追及のために用いられたのでは,医療事故調査の過程で真実を語ることが抑制され,制度として機能しなくなることは火を見るより明らかである。そうなると,医療安全の面では従来よりも後退した事態も生じかねない。医療安全を確立し,国民が安心して医療を受けられるようにするためには,医療事故調査制度がその理念どおり医療安全のための学習を行うことを目的とした非懲罰性,秘匿性,独立性を確保した制度として運用されることが必要である。>

キャリアブレイン「医療事故の現場保全・記録に詳しい手順- 日看協が事故調マニュアル」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/46791.html)。<以下引用>
<日本看護協会(日看協)は、10月にスタートする医療事故調査制度(事故調)の運用マニュアルとなる「医療に起因する予期せぬ死亡又は死産が発生した際の対応」と題した冊子をまとめた。医療事故が起きた医療機関が実施する院内事故調査では、現場保全や事実経過の記録が重要になるとの考えから、保全方法や記録の手順をイラストを用いるなどして詳細に説明している。この冊子では、医療機関で起きた死亡または死産の事例が、第三者機関である医療事故調査・支援センター(センター)に報告する医療事故と判断された場合に現場保全と事実経過の記録を残すとし、遺体については、事故発生後の治療・処置をした状況のまま保全するために、▽指示があるまで更衣や死後の処置はしない▽気管チューブ、静脈留置針、尿道カテーテル等は体に挿入されたままの状態にする-などとしている。事実経過の記録については、事実のみを客観的かつ簡潔、明瞭、正確に記録するようにし、具体的には根拠が明確でない記載はしない、推測や予測の記載はしない、感情的表現の記載はしない、などと注意事項を挙げている。一方、院内事故調査やセンター調査の終了までに関係者に対して複数回のヒアリングが実施されるため、関係者が落ち着いて過ごすことができる環境を提供したり、精神的な安定が図れるまでは帰宅後も友人や家族、同僚と過ごせるよう調整したりすることなどを提案している。また、新たに始まる事故調が、診療所や病院のほかに助産所も対象にしていることから、管理者が助産師である助産所のマニュアルも盛り込んだ。この中では初期対応の項目として、嘱託医や嘱託医療機関への連絡を挙げている。このため、嘱託医と嘱託医療機関との日ごろからの「顔の見える関係」の構築が重要だと指摘し、定期的なカンファレンスを開催することなどを促している。>

M3「センター事故報告、「義務」ではなく「権利」-上野道雄・福岡県医師会副会長に聞く◆Vol.3 報告書、「病院としては遺族に渡したい」」(https://www.m3.com/news/iryoishin/356957?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150924&dcf_doctor=true&mc.l=123779516&eml=3f492a08f1681d66441569ec02c0b51e)。<以下引用>
<――改めてお聞きしますが、10月から始まる医療事故調査制度の目的は何だとお考えですか。医療法には、医療安全が目的であると明記されています。 先ほども言いましたが、遺族と当該医療者の疑問に答えることです。「想定外」の事態が起きた時、皆が傷つく。遺族は、「誤診されたのではないか」「間違った治療をされたのではないか」と思う。不信を持つ人は、実際に訴訟等に至る何倍もあるでしょう。医療不信を抱くと、将来病気をした時、安心して医療機関を受診できない。医療に不信を持っていたら、病の痛みは増強する。医療不信をなくしたいと思うのです。日医医療安全対策委員会の第2次中間答申、「医療事故調査制度における医師会の役割についてII」では、院内事故調査の基本的な視点として、(1)当該医療機関と外部の委員が協力して客観的に原因を明らかにするように努める、(2)原因と結果が一見、明らかな事例においても、即断することなく、事例の背景を幅広く収集し、審議を尽くすことが、遺族や関係者の疑問に答え、事故防止策を導く――と記載しています。この基本的な部分の認識がまだ浸透していないように思います。――「福岡県医師会方式」の場合、これまでは希望医療機関への対応でしたが、10月以降、福岡県内で対応すべき件数はどのくらいになると見込んでおられますか。 センターへの報告を「権利」と「義務」、そのどちらとして捉えるかにより、報告件数は変わってくると思います。今、多くの病院は「義務」と考えているでしょう。しかし、私は想定外の事態が発生した際に院外の専門医も加わって病態を究明して、当事者の疑問に答えていただく。これはまさに「権利」と捉えています。病院が「権利」と考えるようになると増加するのでは、と思います。――センターに対して、報告するか否かは、遺族の意向とは関係がありません。 報告の多くは、遺族側のクレームもきっかけになるかもしれません。――今回の制度は、警察の取り調べ等とは関係がありませんが、警察は謙抑的になるとお考えなのでしょうか。 そうです。例えば、遺族が警察に行っても、医療事故調査制度を勧めていただきたいと思います。今後、この制度が信頼されれば、警察も変わってくるのではないでしょうか。――院内事故調査の報告書の取り扱いについては、どうお考えですか。 「遺族の希望に応じて」ですが、「福岡県医師会方式」の経験では、医療機関としては、報告書を渡したいと考えるようです。医療事故調査制度でも、医療機関は、支援団体と協同でまとめた報告書を渡したいと思うのではないでしょうか。遺族側も「これだけの人が関与しているなら」と納得する確率が高い。――医療事故調査制度では、報告書の医療従事者の記載は「匿名化」「非識別化」を求めています。「事実上、難しいので、報告書は渡すことはできないのでは」との見方もあります。 匿名化については、ルールを作ればいいと思います。完全な実施には問題も多い。私は、遺族や医療者の疑問に答えるという、制度の本来の目的の遂行が大事と思います。――医療事故調査・支援センターが、事故事例を収集して、分析することの意味をどうお考えでしょうか。 実際、動くのは支援団体だと思います。当該医療機関が行う事故の分析や再発防止策が最も大切と思います。個別の事例の分析を積み上げる、そして、統計的な分析結果をフィードバックして、全体的な医療安全を実現したいと思います。私たちが事故対策を考える場合、自院の設備、システム、職員の意識や資質など、どこに問題があるかを検討します。これら自ら検討して、自らで結論を出していきたいと思います。――再発防止策は、医療機関による個別性が高いということですか。 その通りだと思います。病態や死因、また診療の一般的な妥当性についての評価を管理者に伝える。管理者側は、院内の体制、職員の数やその性格などを踏まえて、総合的に事故の原因や再発防止策を検討する。「あの壁に注意書きを張っているけれど、見えにくい場所にある」「この古い器具を使っているから、問題があった」「職員が忙しすぎるから、確認を怠ってしまった」。こうした個別事情も考慮して再発防止策を立案する。その際、審議の内容、防止策立案に至った過程を全職員で共有することが根幹と思います。一番の再発防止策は、皆が仲間意識を持ち、お互いを信頼し、助け合うこと。何か判断に迷い、不安そうな職員がいても、信頼があれば、「何、困っているのか」と声をかけることが可能です。ところが、現場が忙しすぎて、それと反対に動くようになると、事故は起きる。――職員間の信頼関係の構築には、医療機関の管理者への信頼も重要であり、そのため事故対応が責任追及の場になっては問題です。この点についてはどうお考えですか。 当事者の責任追及はしない、させない。責任追及をしたら、困るのは院長です。責任追及をしたら、もはや医療安全は成り立ちません。私はこの医療事故調査制度に期待をしています。日本の医療を変えるきっかけになり得るからです。日医医療安全対策委員会の第2次中間答申に込めた一番の思いは、「外部委員が、事故調査委員会の委員長を務める」ということ。外部の目を入れて、ピアレビューを行う文化、お互いが助け合う文化が生まれれば、医療への信頼が増す。外部委員として他の調査委員会に加われば、非常に勉強になり、意識改革になり、自らを向上させることにもつながります。これは医療安全に対する心の改革であり、戦術論ではなく、戦略論から変わるのです。第二は、「看護師」という言葉が随所に出てくること。委員会にも看護師を入れるよう求めています。診断治療は医師が詳しいですが、それ以外のことについては、看護師の方が患者の経過も含めて詳しいことが多く、医療安全には看護師の目が不可欠だからです。もちろん、一気には変わりません。最初はいろいろな問題が起きることも予想されます。今の制度は、「仮免許」と言えます。徐々にこの制度が定着していけば、5年後、10年後には、信頼される制度になるでしょう。>

医療事故調査はすべての医療機関、助産所に義務付けられる。厚労省「医療事故調査制度」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061201.html)について、助産所、診療所、中小病院ではどれほど周知されているであろうか。日本医師会「医療安全対策委員会 第2次中間答申「医療事故調査制度における医師会の役割についてⅡ~院内事故調査の手順と医師会による支援の実際~」」(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20150902_1.pdf)をみておきたい。遺族が医療事故調査・支援センターに対して,医療事故の調査を依頼することができる(改正医療法6条の17第1項)ことはポイントの一つと感じる。また、厚労省通知(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20150508_01.pdf)p12「遺族への説明については、口頭(説明内容をカルテに記載)又は書面(報告書又は説明用の資料)若しくはその双方の適切な方法により行う。」とあるが、どうなるであろうか。医療事故調査制度は「医療安全のための学習を行うことを目的とした非懲罰性,秘匿性,独立性を確保した制度」とされるが、医療事故調査の結果や遺族への説明が司法的な手続きで利用される懸念は払拭できないであろう。さて、医療法(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/164-4c1.pdf)第6条の九~十二に医療安全の確保が規定され、厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002woxm-att/2r9852000002wp5m.pdf)p172に出ているように、平成19年4月からは無床診療所、歯科診療所も医療安全確保のための措置を講じなければならなくなった(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/0cd4ce2884154a78492572a3000c1073/$FILE/20070319_3shiryou1.pdf)。「医療事故調査制度」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061201.html)には平時からの対応も問われるように感じる。医療法による医療事故調査制度を機に各医療機関のマニュアルは見直されるべきであろう。全国医政関係主管課長会議(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000077064.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000077058.pdf)p44「管下医療機関に対し、管理上重大な事故等が発生した場合は、保健所等へ速やかに連絡を行うよう周知いただくとともに、立入検査等を通じ、必要な指導等を行うようお願いする。」とあり、重大事故の際には保健所にも連絡が入るよう、要請されているが、平成25年8月の総務省「医療安全対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000245532.pdf)を踏まえる必要があるかもしれない。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 気になる風しん抗体 | トップ | 新たな時代の福祉提供ビジョン »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事