保健福祉の現場から

感じるままに

介護施設の差別化と情報公開

2017年11月28日 | Weblog
メディウォッチ「老健の基本報酬、在宅機能に応じたメリハリ強く―介護給付費分科会(2)」(http://www.medwatch.jp/?p=17143)。<以下引用>
<介護老人保健施設(老健)の役割が在宅復帰・在宅療養の支援であることを踏まえて、基本報酬にさらにメリハリを利かせる。また、かかりつけ医との合意に基づく入所者の減薬や、感染症の診断などに必要な医療機関との連携を評価する―。11月22日の社会保障審議会・介護給付費分科会では、老健の介護報酬の見直しに関するこうした方向性も固まりました。そのほか、▼利用者の医療資源病名を介護給付費明細書に記載するルールの対象(現在は療養機能強化型の介護療養型医療施設のみ)を拡大させる▼食堂がない有床診療所でも、短期入所療養介護を提供可能にする―といった見直しについても、おおむね合意しています。在宅復帰を支援するほど経営苦しい“逆転現象”の解消目指す 老健には、病院から退院した要介護者を受け入れ、リハビリテーションなどを提供して在宅復帰させる役割などが期待されています。今年(2017年)6月に公布された改正介護保険法(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律)では、老健が入所させるべき利用者が「在宅復帰・在宅療養支援が必要な要介護者」であることを明確化しており、来年度(2018年度)介護報酬改定でも、こうした機能への評価が注目されています。現時点でも、「在宅復帰率50%超」などの要件を満たす【在宅強化型】の老健の基本報酬は、そうではない【従来型】と比べて高く設定されています。また、【従来型】の施設が「在宅復帰率30%超」などをクリアすれば【在宅復帰・在宅療養支援機能加算】(1日につき27単位)を算定でき、いわば「入所者の在宅復帰を支援する老健ほど、入所者1人当たりの単価が高くなる報酬体系」になっています。一方で、在宅復帰に力を入れる施設ではベッドの稼働率が低下しやすいというデータもあります。全国老人保健施設協会の調査では、【在宅復帰・在宅療養支援機能加算】を算定する施設の収支差率が低く、実際のところ、この加算を取得しない【従来型】の施設よりも「経営が厳しい」と指摘しています。こうした状況を踏まえて厚生労働省は、「在宅復帰・在宅療養支援機能をさらに推進する観点から、必要な報酬体系の見直しを行ってはどうか」と提案しました。具体的には、▼【従来型】のうち「一定の在宅復帰・在宅療養機能を有する施設」を【基本型】と位置付け、基本報酬にメリハリを利かせる ▼【在宅強化型】のうち、「在宅復帰・在宅療養支援をより進めている施設」をさらに評価する―といった方向性を示しています。これは、「在宅復帰・在宅療養の支援に力を入れない施設」の方が経営上有利になる“逆転現象”の解消を目指す案だと言え、委員から明確な反対意見は出ませんでした。「入所後の取り組み」を評価指標に加える一方で、退所後に向けた指導の加算は廃止 さらに厚労省は、(1)在宅復帰・在宅療養支援機能の評価指標に、「入所後の取り組み」や「リハビリテーション専門職の配置」などを加え、よりきめ細かく機能を評価する(2)老健退所時の取り組みを評価している加算を原則廃止し、基本報酬に包括化する―といった見直し案も示しています。(1)の「入所後の取り組み」が何を指すのかはまだ定かでありませんが、11月22日の介護給付費分科会で厚労省は、老健での「リハビリテーションマネジメントの状況」の調査結果を資料として示しています(「サービス開始時のアセスメントの実施」や「リハビリテーションに関する本人・家族の希望確認」、「リハビリテーション計画書の本人・家族への説明」の有無など)。老健には以前、「リハビリテーションマネジメント加算」(1日25単位)が設定され、「入所者ごとのリハビリテーション実施計画の作成」や「入所者の状態の定期的な記録」「必要に応じた当該計画の見直し」などが評価されていましたが、2009年度介護報酬改定で基本報酬に包括化された経緯があります。他方、訪問・通所リハビリテーションには同名の加算が残っており、2015年度介護報酬改定で、「リハビリテーション計画の説明を医師が行うこと」などを高く評価する見直しが行われました(リハビリテーションマネジメント加算(II))。老健でも、同様の取り組みが改めて評価される可能性がありそうです。一方(2)の案で厚労省は、【退所前訪問指導加算】(入所中1回460単位)と【退所後訪問指導加算】(退所後1回460単位)、【退所時指導加算】(入所中1回400単位)を基本報酬に包括化してはどうかと指摘しています。これらの加算は、施設職員(医師ら)が入所者・家族に「退所後の療養上の指導」を行うことを評価するものです。厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、そうした指導が老健の「本来業務」で、入所者全員に対して行うものなので、基本報酬に包括化すべきではないかと説明しています(【退所時指導加算】のうち「試行的な退所」の際の指導への評価は、そうした指導が必要ない利用者もいることから継続)。入所中の減薬や、肺炎などの診断に必要な医療機関との連携を評価 さらに厚労省は、(1)入所者への多剤投薬を解消させる取り組み(減薬)を評価する(2)肺炎などの感染症が疑われる入所者の診断に向けた医療機関との連携を評価する―といった方向性も示しています。このうち(1)は、利用者の入所中の処方方針について、老健の医師が、かかりつけ医との間で入所前に合意しておくことが評価の条件となります。かかりつけ医による外来患者の内服薬の調整は現在、診療報酬で評価されています(【薬剤総合評価調整管理料】:月1回250点)。来年度(2018年度)の診療報酬・介護報酬の同時改定で、老健との連携に対する診療報酬の評価が新設されれば、それに対応した介護報酬の評価が老健側にも設定されることになるでしょう。(2)は、入所者に対する肺炎などの治療(投薬や検査など)を評価する【所定疾患施設療養費】(1日につき305単位)の評価体系を改める提案です。厚労省は、「老健で行うことができない専門的な検査」が必要なケースもあることから、そうした場合の医療機関との連携などの「手間」に応じて評価してはどうかと指摘しています。さらに、専門的な診断などのために短期間(1週間以内)入院する利用者を、退所者として扱う現行ルールも見直すとしています。老健の在宅復帰・在宅療養支援機能の指標である「在宅復帰率」が低くなる(在宅復帰できなかった退所者としてカウントされる)ためで、こうした案にも明確な反対意見は出ていません。「科学的介護」確立へ、介護医療院などの医療資源病名を収集  11月22日の介護給付費分科会で厚労省は、介護保険施設の利用者のデータ収集をさらに進めるための見直し案も示しています。具体的には、利用者の医療資源病名(医療資源を最も投入した傷病名)をレセプト(介護給付費明細書)に記載するルールの対象を広げるもので、「療養機能強化型以外の介護療養型医療施設」や、来年度(2018年度)介護報酬改定で新設される「介護医療院」の「I型」(「療養機能強化型の介護療養型医療施設」相当の施設サービス)のレセプトにも、医療資源病名の記載を求めるとしています。レセプトに記載された情報は、介護保険総合データベースに格納され、一定の分析が可能です。例えば、今年(2017年)7月審査分のデータを分析すると、療養機能強化型の介護療養型医療施設の入院患者の医療資源病名(MDC分類)は、「神経系疾患」が7割弱(66.8%)を占めるほか、「循環器系疾患」(6.8%)と「外傷・熱傷・中毒」(6.0%)を合わせて1割超を占めることなどが分かりました。厚労省では現在、「○○という状態の利用者に●●というサービスを提供すると状態を改善させやすい」といったエビデンスの構築(「科学的介護」のための方法論の確立)を目指しており、医療資源病名のデータは今後、それに向けた分析に活用されると考えられます。食堂なくても短期入所療養介護を提供可、ただし報酬は低く設定 11月22日の介護給付費分科会で厚労省は、短期入所療養介護の指定基準を緩和させる案も示しています。短期入所療養介護は、居宅療養中の要介護者を短期間入所させ、医学的管理の下で介護や機能訓練などを提供する居宅サービスです。老健あるいは病院(療養病床あり)、診療所での提供が認められますが、老健の82.9%で実施しているのと比べて、病院(5.6%)や診療所(1.7%)ではほとんど実施されていません。厚労省の提案は、特に有床診療所からの参入を促すもので、具体的には、(1)「療養病床を持つ有床診療所」は、短期入所療養介護の基準をすべて満たすことから、指定の申請などを免除する(「みなし指定」にする)(2)「食堂」がなくても短期入所療養介護を提供できるルールにする―としています。このうち(2)は、「一般病床のみの有床診療所」が基本的に食堂を持たないことを踏まえた対応です。内科や外科が主な診療科の有床診療所に対しては、経営安定化のため、空床を利用して介護サービスを提供する「地域包括ケアモデル」への転換を促す方向性が中央社会保険医療協議会などで確認されており、要件を緩める見直しはその一環だと言えます。ただし厚労省は、食堂がある短期入所療養介護の事業所と比べて、報酬を低く設定してはどうかとも提案しています。>

介護給付費分科会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126698)の「介護老人保健施設の報酬・基準」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000185793.pdf)、「介護療養型医療施設、介護医療院の 報酬・基準」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000185794.pdf)、中医協総会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo.html?tid=128154)の「療養病棟入院基本料」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000185231.pdf)はセットで理解する必要がある。一口に「老健」「介護療養」「医療療養」といっても各種加算の有無で、提供内容がかなり異なっている。ここにさらに複数類型の「介護医療院」が入ってくる。厚労省の介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」(http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)での施設情報の公表は、医療法に基づく医療機能情報(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html)、病床機能報告(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html)と同様に詳細な情報公開が必要と感じる。また、各介護施設において、各種医療的ケアがどこまで対応できるかの情報公開があった方がよい。「在宅医療・介護連携推進事業」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000102540.pdf)p12「ア)地域の医療・介護の資源の把握」の中身が問われる。
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社会保障分野改革工程表

2017年11月28日 | Weblog
キャリアブレイン「社会保障分野44の改革、工程表見直しへ」(https://www.cbnews.jp/news/entry/20171127181156)。<以下引用>
<「経済・財政再生計画」(財政健全化計画)に沿って社会保障など各分野の改革を円滑に進めるため、政府は改革工程表の見直しを進めている。工程表の見直しは昨年末にも行っており、新たな工程表が決まるのは今年も12月下旬ごろだとみられる。経済・財政再生計画の工程表は、この計画のアクション・プログラムに盛り込まれた政策ごとの実施時期や具体化の時期などを盛り込んだスケジュール。政策が計画通りに実現したかどうかや、実現したなら、それによってどれだけ効果があったのかを評価できるように成果目標(KPI)も盛り込んだ。工程表を見直すのは、1年間の政策の進展と、それまでの議論や政府予算案の編成作業で見えてくる政策の方向性を反映させ、新たな改革メニューを打ち出すため。最新版の「アクション・プログラム2016」がまとまったのは昨年12月21日で、今年度の政府予算案が閣議決定される前日だった。「アクション・プログラム2016」には、▽「かかりつけ医」を普及させるための診療報酬上の対応▽後発医薬品がある特許切れ先発薬への評価の見直し―など医療や介護を含む社会保障関連の44の政策が並んだ。このうち「かかりつけ医」の普及策は、紹介状がない外来患者からの定額負担の徴収を義務付ける対象病院の拡大と、「かかりつけ医」以外を受診した際の新たな定額負担の導入の2段階。まずは定額負担の徴収を義務付ける対象病院の拡大について、社会保障審議会と中央社会保険医療協議会で年末までに話し合う。また、特許切れ先発薬の評価の見直しは、▽後発薬の保険給付額との差額を患者負担にする▽後発薬まで薬価を引き下げる―の2案を軸に、社保審と中医協で対応を話し合っている。政府は当初、今年6月ごろに結論を出すとしていたが、患者やメーカーに負担を求めることへの慎重論が強く、年末に先送りした。来年度には診療報酬や介護報酬の改定などが控え、これらの行方もぎりぎりまで見守る必要がある。このため新たな工程表がまとまるのは今年も12月下旬ごろだとみられる。経済・財政再生計画では、来年度までの3年間を「集中改革期間」に位置付け、政府は来年、中間評価を行う。ただ内閣府によると、どのタイミングでどのような評価を行うのかなど具体的なことは何も決まっていない。「それよりもまずは年末の歳出改革」と担当者。気になるのは、19年度以降の政府予算で社会保障費の自然増がどう扱われるかだ。財務相の諮問機関「財政制度等審議会」の分科会が10月4日に開いた会合後の記者会見で、田近栄治・分科会長代理は、ここへの対応も中間評価を踏まえて改めて検討することになるとの認識を示した。>

「経済・財政再生計画 改革工程表 2016改定版」(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/1221_2/shiryo_03-1-2.pdf)p3のKPI「地域医療構想の2025年における医療機能別 (高度急性期、急性期、回復期、慢性期)の必要病床数に対する都道府県ごとの進捗率 【2020年度時点での十分な進捗率を実現】」が地域医療構想の評価指標とされており、注目である。しかし、政府の「未来投資戦略2017」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai9/siryou2.pdf)の中短期工程表「健康・医療・介護①」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai9/siryou3_3.pdf)のデータ利活用基盤の構築では、2017年度から2019年度にかけて「在宅医療・介護分野における多職種が共有すべき情報項目等の標準化の推進」で「2020年度からの本格稼働」とあったが、既に3年前の厚労省資料(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0416/shiryo_09.pdf)p5で、「ネットワークの標準モデルの確立、普及」「在宅医療・介護を含めた標準規格の策定・普及」「クラウド技術の活用等による費用低廉化」があり、とにかく遅すぎる。また、「経済・財政再生計画 改革工程表」(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia281027/03.pdf)には精神医療関係はないし、財政制度等審議会財政制度分科会(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/index.html)の「社会保障② 年金、生活保護、雇用、障害福祉、医療提供体制)」(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia281027/01.pdf)、資料(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia271009/02.pdf)p9「経済・財政一体改革における社会保障の改革検討項目」の44項目でも、なぜか精神医療関係は出てこない。財政制度分科会(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/index.html)の資料(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia291025/01.pdf)の医療費適正化や生活保護適正化でも精神医療は全く出ていない。財政制度分科会(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/index.html)が精神医療を全く勘案しない理由は果たして何なのであろうか。
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