田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

改めてTPP問題を考える

2016-08-05 16:16:51 | 講演・講義・フォーラム等
 TPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋連携協定)問題は、米大統領候補の両者が反対声明を出すなど、まだまだ波乱含みである。改めてTPP問題、それによる北海道農業の影響について考える講座を聞く機会を得た。 

        

 かでる講座の8月講座は、8月2日(火)午後、北大大学院農学研究院の東山寛准教授が 「TPPと北海道農業 ~北海道農業の『これまで』と『これから』~」と題されて講義を行った。

 東山氏はまず、北海道農業の現状と特徴について、つまり『これまで』について語った。
 北海道の農業については誰もが認識しているとおり、日本の食糧基地としての存在感が大きい。農地面積は全国の1/4を占め、コメをはじめ、小麦、大豆、雑豆、砂糖、でん粉、牛乳など全て全国一の生産量を誇り、日本の食糧自給率の39%を支えている重要な存在であるとした。

 北海道の大規模農業を可能にしたのは、明治政府が国を挙げて北海道開拓に取り組んだ結果であるが、戦後もやはり国策として根釧台地や篠津原野の大規模開発事業によって農地を開拓してきたということがその要因となり、今日の北海道の農業に至っているという。

             

 さて、問題のTPPであるが、東山氏が農業研究者であることから、やはり農業の窓口から見たTPP問題を語った。
 東山氏はTPPが与える日本(北海道)農業への影響として次の4点を挙げられた。
 ①大幅な関税の削減(撤廃)により、価格が下落し、農業経営の再生産ができなくなるのではないか(政府が対策を打つとしても、そのための財源の確保も難しいのではないか)
 ②国内農業の縮小により、消費者が望んでも国産の農畜産物の入手が難しくなるのではないか。
 ③輸入農畜産物が増えることにより、消費者が抱く輸入食料への安全・安心への懸念が高まるのではないか。
 ④TPPの発効にはまだ時間がかかるかもしれないが、先行きへの不安から、農業の担い手の確保が難しくなるのではないか。

 特に東山氏が懸念したのは、輸入食品の安全性についてと、担い手不足問題についてだった。
 輸入食品には、遺伝子組み換え作物とか、牛・成長ホルモン、ポストハーベスト、放射線照射作物などの危険性が懸念されるとした。
 また、担い手不足問題では、TPP問題がなくとも担い手不足問題が深刻化している日本において、TPPによって決定的なダメージを受けるのではないかと指摘した。

               

 TPP問題は農業の窓口から見ただけでは全体像を把握できない難しさがある。国の経済全体から見たTPPということも当然考えねばならない。
 しかし、「食糧安保」という言葉があるくらい、地球規模の急激な人口増加という現実の中で、「国民の食」を確保するということは大きな政治的な課題でもあると思う。
 今後、TPPがどのように推移していくのか、目の離せない問題の一つである。