主役は誰なのか。
「患者のための薬局ビジョン」から始まった医薬分業の見直し騒ぎは、昨日の厚生科学審議会から出された「とりまとめ案」でとどめを刺されたような気がする。
資料を見ても薬局の評価など出てこない。
「現在の医薬分業は、政策誘導をした結果の形式的な分業であって多くの薬剤師・薬局において本来の機能を果たせておらず、医薬分業のメリットを患者も他の職種も実感できていないという指摘や、単純に薬剤の調製などの対物中心の業務を行うだけで業が成り立っており、多くの薬剤師・薬局が患者や他の職種から意義を理解されていないという危機感がないという指摘、さらには、薬剤師のあり方を見直せば医薬分業があるべき姿になるとは限らず、この際院内調剤の評価を見直し、院内処方へ一定の回帰を考えるべきであるという指摘があった」と長い文章で綴られている。
さらに「このことは関係者により重く受け止められるべきである」と、まさにとどめを刺されてしまった。
書かれ方が薬局は金儲けの社会悪のようにさえ感じさせる。
逆に、あまり表立ってはいないが病院薬剤師の評価は高い。
がんなどの薬物療法に関して「臨床現場で専門性が高く、実践的な経験を有する医療機関の薬剤師」となっている。
これはあたかも薬局の報酬を病院薬剤師にシフトさせるようにも感じる。
明らかに日本医師会の作戦勝ちだ。
なぜこうなってしまったのか。
これは偏った私見かもしれないが、自分たちの問題にもかかわらず発言が少な過ぎたのではないかと考えている。
発言と言うより主張と言った方がいいかもしれない。
2015年に出された「患者のための薬局ビジョン」の問題提起は、「健康情報拠点薬局」から始まり、さらに「健康づくり支援薬局」を経て「健康サポート薬局」に落ち着いたが、この時の議論で参加した薬剤師の代表にどの様なビジョンがあったのか。
いささか疑問に思う。
このどさくさに紛れて「かかりつけ薬局」だったはずが「かかりつけ薬剤師」に切り替えられている。
また、2014年の「骨太の方針」に「医薬分業の下での調剤技術料・薬学管理料の妥当性・適正性について検証する」との警鐘があった。
そして2015年から2018年に至るまで続く批判が「患者本位の医薬分業の実現に向けた見直しを行う」である。
これらを受けての厚生科学審議会だった。
その厚生科学審議会の資料には「平成28 年度改定以降の調剤報酬改定において、患者本位の医薬分業となるよう、累次にわたる改定で見直しを進めるとされた」とある。
という事は中医協でも2016年から問題視されていたってことになる。
今回の厚生科学審議会や中医協での審議で、もっと薬剤師の代表は薬局が果たしてきた意義や役割を主張して欲しかった。
そのエビデンスが隠れた存在なら、まさに“見える化”させるように呼びかけて欲しかった。
主役は薬剤師である。
それぞれは患者のことを思いつつ日々の業務を行っている。
「とりまとめ案」の内容は寂しい限りで、この議論に関するメディアには薬剤師の声はわずかで、医師側や患者の代表、大学の教授など部外者の意見ばかりが目立っている。
主役は薬剤師である。
薬局は薬剤師の活躍の場である。
と、今さら怒ってみても始まらない。