20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
毎日更新。児童文学情報・日々の暮らし・超高層からの眺望などニュース満載。

「愛」

2008年02月28日 | Weblog

 作家の友人、i平さんとは、すでに30年以上、共に「児童文学の道」を歩いてきた仲間です。
 10歳近く年の離れた弟のような彼がまだ20歳そこそこで、私が30歳になったかならない頃。
 私たちは「わっせ」という同人誌の仲間でした。
「わっせ」は、わずか5年で解散になってしまいましたが、その後も創生期の「季節風」や、児文協の部会や委員会など、気がつくと私たちはいつも一緒に「児童文学の道」を歩いていました。
 
 そんな長い友人関係の気安さから、彼はいつも皆さんの前でこう言って私をいじめます。
「ほんとに、カトウジュンコはバッカなんだから」と。
 するとすかさず、そばにいらした皆さんがおろおろしながら、こうおっしゃいます。
「i平さんの『カトウジュンコはバカなんだから』には、いつも愛を感じますよね」
「感じませんよ。バカだけだって失礼なのに。それに夫にだって言われたこともないのに、バカのバの字に思いきりアクセントがつくんですよ」
 そう私はいつも口をとがらせ、不当な言い様に抗議します。

 その「バカなんだから」のi平さんから、先日封書が届きました。
 封書を開くと、和紙に筆でかかれた、必要以上に「バカでかい」加藤純子さま、という文字が目に飛びこんできました。
 一瞬、果たし状かと、私は笑いながら身構えました。
 なにしろ、30年来、お互い言いたいことを言い合っている仲間ですから、密かに、怨念でもあるのではと恐れていた・・・なんていうのは、ジョーダンですが。
 私の演じる、彼の山形なまりのもの真似は、児童文学の世界では周知のところです。
「バッカなんだから」と「山形なまりのもの真似」
 これって、お互いさまってことでしょうか・・・。
 けれど彼は、私のすっごく上手な彼のもの真似を尻目に、すました顔でこう切り返します。
「オレはシティボーイだから、そんな、なまってないよ」

 そのシティボーイの送ってくださった封書から出て来たのは、なんと、お見舞いの手紙でした。
「25日が、目の修繕の日だって聞いてたから・・・」
 手術じゃなくて、ここまできても「修繕」と書くところが、彼らしいと、思わず吹き出しました。
 手術前も、「気合いで瞼をあげろ」と無謀なことを言うくらいの人ですから。
 そしてなんと、和紙の手紙と一緒に入っていたのは「コブクロ」のCDでした。
「あれ?」
 思わず私は、術後の、擦ってはいけない目を擦りそうになりました。
「私、i平さんにコブクロが好きだって話したことがあったかしら?」
 いつだったか、芸能ネタに強い作家のMさんに
「私、コブクロが好きなの」
と話したことがあります。すかさず彼女から「好きなのはどっちですか?」と、たずねられました。
「小淵健太郎クン。彼の詩のひたむきさが好き」
 そういったら彼女が「やっぱり!」と言いながら「にたっ」と笑った表情をいまでも覚えています。
「にこ」ではなく、「にたっ」と笑った笑顔の意味を聞かないまま、コブクロ談義はそこで終わりになりました。
 
 i平さん、コブクロが好きだったんだ。
 私はそのとき、はじめて知りました。
 
 新星堂のポップな包装紙に包まれていたCDを見ながら、私はまた、にまにましてしまいました。
  i平さんが自分で新星堂にCDを買いにいくなんてことは、とうてい考えられないことです。だいいち、新星堂がどこにあるのかだって、知らないんじゃないのかな? なにしろおもいっきりシティボーイなんだし。
 息子さんのKクンか、娘さんのRちゃん、ううん、奥さんのBさんにきっと買ってきてもらったんだ。
 そんなことを考えながら、私はCDを聴きました。
 私は彼の家族がすごく好きです。ウチの家族と同じくらいに。
 同じく作家である奥さんのBさんとも、30年来ずっとずっと大切な、大好きな友だちです。

 そんなことを考えていたら、i平さんと私は、コブクロの小淵クンと黒田クンのように、30年以上、強い連帯で結び合っている同志なのかもしれない。ふと、そんな気がしてきました。
 児童文学という荒波を、共に30年という年月くぐり抜けてきた同志なのかもしれない。
 これはやっぱり連帯という「愛」なのかもしれない。
 
 そう思いながら、私は試合に負けたボクサーのような、赤あざで腫れた目をとじました。
 
 「あきれるほど真っ直ぐに 走り抜けた季節を
  探してまだ 僕は生きてる」

 目をつぶって聴いたコブクロの歌は、いつもより胸にしみました
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無事、おわりました

2008年02月27日 | Weblog
 無事、終了いたしました。ご心配をおかけしまして申しわけございませんでした。
 
 術後3日目。ひどい顔をしています。
 例えて言うと、目の回りを殴打されたボクサーとでも申し上げれば、イメージしていただけますでしょうか?
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「ミステリーアンソロジー」

2008年02月23日 | Weblog
 偕成社の「ミステリー・アンソロジー」の6巻~10巻までが出版され、このシリーズも完結となりました。
 
 私の作品は、9巻目『ふしぎメールは事件の予感!』に掲載されています。
 掲載されている私の作品(「名探偵明智くんの事件簿 名探偵明智くん、恋をする」)は、今回でシリーズ3話目となります。たまたま「明智」という名字だったがゆえに、名探偵になりきってしまった明智くんと、自称助手の佐藤くんのコンビが、クラスに勃発した事件を解決していく物語です。

 また、偕成社では、来年発売にむけてアンソロジーの新企画がはじまりました。
 今回の全5巻は、諸事情により、いままでのような公募という形はとらないことになりました。すべて依頼原稿でお願いすることになりました。悪しからずご了承下さいませ。
 関係者の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 私は民俗学的アプローチからの「怪談」にいま、とても興味を持っています。
 闇をつまびらかにする行為というのは、子ども時代に限らず、人間の根のところにある根源的な好奇心なのかもしれません。
 子どもたちがどきどきするようなお話を、楽しみにお待ちしております。


 追記
 今日はこれからパソコンを銀座のMacに持ち込みます。修理に時間がかかる場合には新しいパソコンを買うつもりですが、古いものから新しいものにデーター移動する場合、最低24時間かかるそうです。
 月曜日が手術なので、しばらく外出できないのでなにがなんでも、この土・日でパソコン問題をクリアにしておかなければなりません。
 そんなわけで、今日の午後から明日の午後まではパソコンが手元から消えます。
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『キミも物語が書ける ペンネームは夏目リュウ!』

2008年02月22日 | Weblog
 日本児童文学者協会編で、『キミも物語が書ける ペンネームは夏目リュウ!』(くもん出版)が発売されました。
 夏目リュウの物語を書いていらっしゃるのは、濱野京子さん。
 編集者にうかがったところ、なんと400字で180枚近くある物語のようです。
 ひょんなことから物語を書くことになった主人公の夏目広樹の前に、物語の主人公である「夏目リュウ」が現れます。
 さて、広樹は、どんなふうに物語を作っていくのでしょう。
 読むだけでとてもおもしろい上に、さらにそこにお得な情報が内包されています。こんな手の混んだ本は滅多にありません。

 親しい仲間である濱野京子さんは実に器用な作家です。
 キャラクター作りやストーリー作りの秘訣や折々に必要なアイテムなどが物語を読みながら、「ああ、こうして作るんだ」と楽しんでいるうちにするっと脳裏に入り込んでくる仕掛けになっているんですから。
 おまけに、これといったむずかしい講義が書いてあるわけではないのに、「物語」を作るってこういうことなのと教えてくれるのです。
 そんな盛りだくさんの物語を、すっと垣根を跳び越えるように難なくクリアされた濱野京子さんという作家は、いやはや実に凄腕です。

 物語作りに格闘する主人公の広樹クンの頭が整理されてくると、次のページには「やってみよう!ミニミニ講座」といって物語作りのツボがコラムにして書かれています。
 
 この本は、むずかしい文学講座の本より、実践に役立つ、とてもおもしろくて、お得な一冊かも知れません。
 みなさま、どうぞお読みになってみてください。

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ちょっと遅れて、新年会

2008年02月20日 | Weblog
 昨晩は児文芸のみなさまと、編集者のHさん、そして児文協からはAさんと私、9名で新年会を行いました。
 児文芸のみなさんは、とても細やかにお心遣い下さる方たちばかりで、いつも甘えてばかりいます。
 でも我が協会にも、Aさんという強力なムードメーカーであり、いつもにこにこ、お心配りをしてくださるチャーミングな方がいらっしゃるので、かろうじてバランスがとれているようです。
 
 昨晩はOさんご提案の「アイディア俳句遊び」で楽しみました。
 兼題は「Hさん」
 上の句、中の句、下の句をばらばらにして、それをつなぎ合わせていくのです。
 すると、ものすごくおもしろい俳句が生まれてくるから不思議です。
 言葉というのは、ほんとにおもしろいものです。
 みんなでお腹を抱え、笑いあいながら、おいしいお寿司に舌鼓を打ちました。

 幹事をしてくださったMさん、Aさん、ありがとうございました。とっても楽しい一夜でした。

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『風をおいかけて、海へ!』

2008年02月19日 | Weblog
 作家の友人、高森千穂さんが新刊をご上梓されました。
『風をおいかけて。海へ!』(国土社)

 私はひそかに、彼女のことを「児童文学界の西村京太郎」と呼んでいます。
 彼女はデビュー作から、ずっと鉄道の時刻表にまつわる謎をテーマに作品を書き続けていらした作家です。
 それを拝読すると、彼女がいかに鉄道マニアでいらっしゃるかがよくわかります。
 そこを生かして、わくわくするような物語を作り出していらっしゃいます。
 そんなふうに、鉄道は高森千穂さんの作家的テーマの大きな鉱脈のひとつだと思っていました。しかし今回の作品は、そこにマウンテンバイクが加わりました。
 旅がお好きな高森さんは、鉄道を極められ、今度はどうやらマウンテンバイクに鉱脈を見つけられたようです。
  
 高森さんの作品は、いつもご自分の足で、その場所を辿られるリアリティがあります。
 江ノ電と一緒に伴走しながら、たどりついた鎌倉の海。
 読みながら、町の空気や、海の匂いまで、こちらに伝わってきます。
 物語の醍醐味と、旅の醍醐味。そんな両方を楽しませてくれます。

 キャリアウーマンであり、作家である高森さんは、さまざまな鉄道の旅から、今度は自転車の旅の面白さを見つけ出されたようです。
 もしかしたら、このまま世界へと旅が広がっていくのではないかしらと、この物語を読みながら予感したのは、私だけでしょうか?

 みなさま、ぜひお読みになってみてください。

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ごくろうさまでした。

2008年02月17日 | Weblog

 昨晩は、田部智子さんの『パパとミッポの星の3号室』(岩崎書店)の出版お祝いの会でした。
 多数の皆さまにお集まりいただいたすばらしい会でした。
 ご参加下さいました皆さま、ありがとうございました。
 AHOKUSA会の皆さま、ご苦労さまでした。
 
 田部さんへの暖かい励ましと応援。
 ファンタジー研のメンバーのみなさんの出版記念パーティでの恒例になっているクイズ。それぞれとっても盛り上がり、いい会でした。
 
 49階からの夜景も、とてもすてきな夜でした。
 田部さん、皆さま、どうもご苦労さまでした。
 
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夕焼け

2008年02月14日 | Weblog
 ふと外を見たら、ちょうど日が沈む瞬間でした。
 
 夕焼けから、夜のとばりのおりる頃。
 冷たい空気がキーンとさしこみ、空はすみれ色から、漆黒の闇へと移っていきます。
 天空には一番星がまたたき、月も冴え冴えと夜を照らしています。 
 この時間が、一日のうちで、もっとも美しいと感じる瞬間です。
   
 

 
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きょうは、忙しい日

2008年02月13日 | Weblog
 今日は一日、とっても慌ただしく過ごしておりました。
 
 5月25日(日)の児文協、総会・附設研、まだ詳細は宣伝告知できませんが、どうぞお楽しみにしていらしてください。
 某人気評論家がパネラーとして、このためにわざわざお越し下さいます。
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武甲山

2008年02月12日 | Weblog
 今日は母のところへ行ってきました。
 ちょっと熱があったようですが、食欲は旺盛でちゃんと食べてくれました。
 人間が大好きな母は、昔から人を観察して分析するのが得意で、92歳になったいまも、その性癖は健在です。
 お昼ご飯を食べながら、うれしそうに、あちらに座っている患者さん、こちらに座っている患者さんと、みなさんの性格分析・行状分析を楽しそうに、小声で私に話してくれました。
「あの人と、あの人、どっちが気が強そうに見える?」など・・・。
 どうやらそれが、入院生活の楽しみのようです。
 そんなこんなのおしゃべりのせいで、食事が終わるのが、いつもビリです。

 レッドアロー号の中から見える武甲山は、まだ震えるような寒さにつつまれていました。


 
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