東京電力株式会社の電気料金の値上げ及び東京電力株式会社と原子力損害賠償支援機構による「総合特別事業計画」の策定に関する緊急要望
今般、燃料費増分を補填するため産業・業務向け(「自由化部門」)の電気料金の値上げが発表された。しかし、値上げの根拠である燃料費等の負担増分6,800億円の詳細や、賠償スキームと合わせた経営合理化の具体的な内容が示されておらず、中長期的な見通しも不透明である。
加えて、「自由化部門」といいながら、電力市場は競争原理が全く機能していないため、需要家が、東京電力株式会社以外の民間事業者へ乗り換えることは事実上困難であり、電気事業における地域独占の弊害による高コスト構造の実態が改めて明らかになった。 また、値上げの方法も、現行単価に一定額を上乗せするのみで極めて便宜的であり、未だ電力需要のピークカットや省エネを促す価格体系になっていない。こうしたことは、首都圏で経済活動を行う企業の経営に大きな影響を及ぼすとともに、とりわけ、経営基盤の脆弱な中小企業等の経営に与える影響は極めて大きいものと考えられる。こうしたことから、今回の値上げは安易に容認できるものではない。
さらに、家庭や低圧事業者の需要家は、規制部門として、東京電力株式会社以外の電気事業者を選択する機会が与えられておらず、仮に、こうした規制部門の需要家に対しても東京電力株式会社による値上げが行われた場合には、それを受け入れるしかない状況にある。ここでも、電気事業における地域独占の弊害と競争原理の必要性が明らかになっている。
一方、現在、原子力損害賠償支援機構と東京電力株式会社は、迅速な賠償の実現と改革の着手を謳う「総合特別事業計画」の策定にむけて検討を進めている状況にあるが、再生可能エネルギーの導入拡大など望ましいエネルギーミックスを実現するためには、それを支える電力制度改革が不可欠である。
九都県市首脳会議は、以上のような状況をふまえ、電気事業制度の改革とともに、経営責任の明確化、設備投資の方向性など東京電力株式会社の経営のあり方に関する中長期的視点からの抜本的な改革の確実な実行を求め、今回の電気料金の値上げと総合特別事業計画策定に関し、下記の7点への対応を強く要望する。
記
1. 「総合特別事業計画」策定の前提となる当面の収支見込、今後の電力需給の状況、電源構成、燃料費等負担増の内容、震災前と現在における役員及び社員の給与・賞与等の実態、経営合理化の具体的内容及びこれらの中長期的な方向性などについての明確な情報の開示と、連結子会社等を含む経営合理化の確実な推進を求める。
2. 健全な競争原理が働くよう、民間資金の活用による老朽火力の早期更新や、託送料やインバランス料金の見直し、系統への接続にかかる情報の透明化と送電部門の中立性強化など、電気事業への民間事業者の参入促進を求める。
3. 電気料金の値上げは、首都圏で経済活動を行う企業の経営に大きな影響を及ぼすことから、とりわけ、中小企業等に対して特段の配慮を求める。
4. 一律定額の上乗せは、エネルギーの効率利用を阻害するおそれがあることなどから、多様かつ柔軟な電気料金メニューの設定を求める。
5. 東日本の電力安全保障のため、電力会社間の連系線(地域間連系線)の増強や、高効率な天然ガス発電や東北・北海道地域での供給ポテンシャルの高い再生可能エネルギーを東日本全体で有効活用できるよう、電力会社毎の系統の運用ではなく、複数の電力会社の系統を包括的に運用する方法への見直しを求める。
6. 需要家側の合理的な省エネ・節電を促すため、需要家へのスマートメーターの設置と得られるデータを需要家側も直接入手し利用できる仕組みを構築するとともに、自由化対象範囲を家庭や低圧事業者にも拡大し、より多様かつ柔軟な電気料金メニューを提供する電気事業者を需要家が“選べる”社会に転換していくことを求める。
7. これまでの経営責任を明確化させるため、東京電力株式会社における現在までの役員等については、その責任の所在を徹底的に明らかにすることを求める。
平成24年2月10日
内閣総理大臣 野 田 佳 彦 様
経済産業大臣 枝 野 幸 男 様
原子力損害賠償支援機構 理事長 杉 山 武 彦 様
東京電力株式会社 取締役社長 西 澤 俊 夫 様
九都県市首脳会議
座長 千葉市長 熊 谷 俊 人
埼玉県知事 上 田 清 司
千葉県知事 森 田 健 作
東京都知事 石 原 慎太郎
神奈川県知事 黒 岩 祐 治
横浜市長 林 文 子
川崎市長 阿 部 孝 夫
さいたま市長 清 水 勇 人
相模原市長 加 山 俊 夫
Web巡回中に神奈川県サイトで 平成24年2月10日 記者発表資料 から気付きましたので、ソースとして頂戴しました。ナガラテレビで見たのですが、選択の自由が無い時に、値上げも企業の権利だと語る東京電力トップの姿が実に哀れで醜いものに感じました。建国記念日に亡国組織に向けて発信された素晴らしい文書を記録します。
新しい国の建国に向けて気持ちを引き締めていかねばなりません。これを発信した方々に向けても同様な趣旨の意見が一般国民から発信される時代だと思っています。
例えば、ここで東京、埼玉、千葉の方々は八ッ場ダム推進派でしょう。反対派の意見は読んだことが無いのかも知れません。
自由な言論が飛び交う社会でも、それに耳目を閉ざして自分の殻に固執するだけの人が権力を発揮できる座にいることほど困ることはありません。さて、どうしたもんでしょか。