「近代日本美術の百花」 千葉市美術館

千葉市美術館千葉市中央区中央3-10-8
「リニューアルオープン記念所蔵名品展 近代日本美術の百花」
4/6-5/9



「花」をテーマに、大正・昭和前期の日本画・版画を総覧します。千葉市美術館で開催中の「近代日本美術の百花」へ行ってきました。

昨年度、空調改修工事のために休館していた同美術館の、リニューアル後初となる企画展です。元々コレクションとして定評のある近代の日本画・版画、全250点(出品リスト)が、まさに百花繚乱の如く一堂に会していました。

展示では広義の「花」の意味、そして魅力を8つの章から探っていきます。以下、構成を順に辿りながら、その見どころを簡潔に挙げてみました。

第一章「祝福された四季」



四季花鳥図から季節毎の花々を描いた作品など。ツクシを僅か二本だけ描きながらも、そこに春の情感を漂わせる竹内栖鳳の「春暖」には感服。また「旅みやげ」シリーズなど、川瀬巴水が15点弱ほど出ていたのも嬉しかった。

第二章「わたしの庭」

画家たちのプライベートガーデンに咲く花を描いた作品などを探る。川上澄生の木版4点他。オレンジ色の百日草を描いた山村耕花の「壺と百日草」が印象に深い。

第三章「粧う花々」



美人画を「アートの花」として捉え、浮世絵や新版画の優品を展観する。ちらし表紙にも掲載された樋口五葉の「化粧の女」の他、伊東深水の「新美人二十姿」も一揃い紹介されていた。また雪岱の「蛍」、さらには清方の肉筆画なども見どころの一つ。展示のハイライトはこの章かもしれない。

第四章「舞台の華」



今度は一転して舞台の華、歌舞伎役者などの男性像を展示する。山村耕花の「梨園の華」シリーズ約10点は壮観。

第五章「返り咲く錦絵」



江戸の華である「錦絵」を近代になって復興させた外国人女性画家を紹介する。特にヘレン・ハイド、バーサ・ラム、エリザベス・キースの三名に見応えがあった。

第六章「花の都」

新興のモダン都市をテーマを描く。川上澄生、藤森静雄、恩地孝四郎らによる「新東京百景」シリーズ約15点が、当時の東京の賑わいを伝えていた。他に伊東深水の「夜の池之端」なども展示。

第七章「花模様」



装飾としての花々のモチーフを探る。神坂雪佳の「百々世草」の他、竹久夢二の「婦人絵暦十二ヶ月」など。そしてここで注目すべきは樋口五葉装丁の漱石や鏡花の著作群。また横尾芳月の「和蘭陀土産」の迫力も見事。

第八章「季節はめぐる」



画家たちの心象風景としての花を見ていく。松林桂月の「春宵花影」、また川上澄生の「枯れたひまわり」は何とも物悲しかった。

小品の版画群が所狭しと並んでいます。一点一点追っていくとかなりの時間がかかりました。かなりのボリュームです。

なお本展終了後にはいよいよ静岡から「伊藤若冲アナザーワールド」がやってきます。



既に公式WEBサイトには出品リストも掲載されています。また関連の講演会も要注目です。もちろん二つとも聞きに行く予定です。

記念講演会「伊藤若冲の魅力」
6月5日(土)/14:00より/11階講堂にて/先着150名/聴講無料
【講師】辻 惟雄(MIHO MUSEUM 館長)

講演会「伊藤若冲の多彩な絵画ワールド」
6月20日(日)/14:00より/11階講堂にて/先着150名/聴講無料
【講師】小林 忠(千葉市美術館 館長)

なお若冲展は展示替えがあります。その入館料1000円を考慮すると、これを機会に「友の会」に入っておくのも良いのではないでしょうか。

千葉市美術館「友の会」のご案内

入会金、年間会費をあわせて3000円かかりますが、年間入場フリー(回数制限なし)、また図録10%割引などの特典はお得です。また同館では秋に田中一村の回顧展、そして冬にはニューオーリンズのギッターコレクションによる江戸絵画展なども予定されています。

千葉市美術館 2010年度 展覧会スケジュール

「近代日本美術の百花」は5月9日まで開催されています。
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